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応接室に行くと案の定外崎の彼女がいた。
前回会ったときより疲れているように見えた、化粧はしているがいい加減だし、目元にはくっきりとクマができている。
彼女は俺が来るとすがるような声で聞いてきた。
「あの…あっくんと連絡が取れないんですけど、何か知りませんか?
些細なことでいいんです、何でも良いんで教えてください。」
「すみません、我々も外崎君と連絡取れなくなって探しているんですが、手掛かりのようなものは特にありません。
しかし、何故私の所に?
もっと他に頼れる人も居たでしょうに」
「確かにあっくんの学生時代の友達などにも聞いてみましたが、特に何の実りもありませんでした。
でも会社の人はまだ誰も聞いてないなって、だったらいつもあっくんが話してくれる上司さんに聞こえおって。
あっくん上司さんの話をする時は物凄く真剣に話してくれるんですよ。
あの人は俺がいくら失敗しても見捨てない、それどころか自分の事を後回しにしてまで俺の尻拭いをしてくれるんだって、ほぼ毎日のように聞かせてくれるんです。」
「…そうですか、あいつがそんな事を…」
その後互いに知ってることを話し合いその場を離れた。
外崎があんな風に思ってたなんて…俺はなんてことを。
でも、あいつが仕事が出来ないのが…わるいんだ…
でも俺はまだ9人殺さなきゃいけないんだ。
黒服が言ってたように松井さんを殺す?
いやでも、松井さんはこの部署の要だ居なくなったらみんなが困る。
でも殺さないと俺が死ぬ、一体どうすれば…
職場に戻ると俺のデスクで松井さんが待っていた。
「おい辻、外崎の彼女と話していたか知らんが、さっさと仕事をやれ。
ただでさえ外崎がいなくなって手が足りないんだ。
もっと周りを見て仕事をしろ、自分の仕事が終わったら他人のを手伝え。
あと明日のお前のパソコンに送っといた資料明日までにまとめてプリントしとけ。
わかったな!」
そう言い残すと松井は去っていった、どうせまた見てもない資料へのはんこ押しでもやるんだろう。
「それにしても相変わらずおっかね〜な」
いつの間にか隣に居たのは俺の同期の中村だ。
仕事はやれば出来るのに、出来ないふりをしていつも定時で帰っている、ずる賢い奴だ。
「ほんと酷いよな、あれって最近話題のパワハラじゃあないのか?
ほんと、いつになったら別部署に飛ばされるんだか。
もう皆飽き飽きしているんだよあの人には。
いっそいなくなってくんねーかなぁ」
そうだ、皆迷惑に思ってるんだ。
俺が殺せばみんなが助かる、もし俺が松井さんを殺したとしても悪いのは俺じゃない。
松井さんだ。