日常の変化
俺は今、上司の松井に怒られてる、何故かそれは俺の部下がミスを侵したからだ。
「そもそもな、辻、お前がちゃんと指導をしていないからこんなんになるんだ」
ああ…何でも俺が失敗したわけでもないのに怒られなきゃいけないんだ。
俺は初めから嫌だったんだ、こんな見るからに不真面目そうな奴の教育係なんて。
「なんで入社してから半年も経つのに弊社と御社を間違えるんだ?
こんなの一番初めに教えることだろ!」
教えたよ!
だけどいくら教えても間違え続けるんだよ!
でも…こんなこと言ったらそれこそ大変な目に遭う、ここは素直に謝って機嫌を直してもらうほうがいいだろう。
「すみません、外崎にはしっかりと聞かせておきます」
「俺は謝罪が聞きたいわけじゃない
お前がちゃんと指導が出来るようになってほしんだ。
以後ちゃんと指導をするように」
「はい…」
言いたいことを言い終えると松井は部屋から出ていった。
散々な目にあった、早く仕事に戻らないと納品期限が近いのに終わってないものがまだある。
まったく、教育係になってから自分の仕事がぜんぜん捗らない、今日もまた残業かな…
そろそろ残業時間3桁が見えてきてしまった…
トボトボと席に戻ると渦中の外崎が呑気に話しかけてきた。
「先輩、災難でしたね。
それにしても松井さんもあんなに怒らなくてもいいのに。
ドンマイっす!」
お前のせいだよ!
お前がしっかりしていれば俺は怒られずにすみ、仕事も終わらせられる。
だがそんなに強く言ってしまうとよけいやる気が無くなってしまうかもしれない…
「ああ…そうだね。
外崎君、前に教えた御社と弊社また間違っていたよ、新人うちは間違えて仕事を憶えるようなもんだから、そんなに落ち込む必要ないけど、次から気をつけてね」
これで次からは、ミスが減るといいけど…
まったく持って減る気がしない。
「わっかりました〜
じゃあ、あんまり気に病まずがんばります!」
くっそ、こいつぜんぜんわかってない、絶対同じ間違いをする。
その後仕事を終わらすと既に日をまたいでしまっていた。
今帰って一時間家の布団で寝るか、会社にある硬い椅子を並べて3時間寝るか…どうしようか。
とりあえずカップ麺でも食べるか、まだこの引き出しにあったはずだ。
じゃあ給湯室にお湯を貰いに…
そう思い、椅子から立ち上がり給湯室へ向かおうとすると、足に力が抜けその場に膝をついてしまった。
あれ、おかしいななんだコレ、足に力が…貧血かな?まぁ飯食えばどうにかなるか。
視界の端から暗くなっていく、なんかグワングワンしてきた…
目が覚めると、俺はなにもない部屋にいた。
「ここは…さっきまで会社にいたはずなのに」
「よう、人生お疲れ様」
振り返るとそこには異様に足が長く痩せこけた黒いスーツを着た男がニヤつきながら立っていた。