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第43話 ドジっ子


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今後も「幸運は勇者を好む」をよろしくお願いします。



 わかってたよ、わかってましたよ。こうなってしまうことは。


「えー、ヘルマンさん恋人いるんだー」


「ちょーかっこいいから当たり前だけど、とってもざーんねん」


「わりぃな、もう1本ボトルを追加してくれ」


「ふふ、お金持ちなところもステキ」


 美女2人に美少女1人の合計3人に囲まれて、ヘルマンは楽しく会話中。たびたび身体が触れ合っている。


 一方の俺はこの状態である。


「あ、あの、入れます、お酒入れます」


「うん、ありがとう」


 研修中と言わんばかりの女の子が1人付いている。明らかに慣れていない手つきで、少しずつワインを木のコップに入れていく。


「「あっ」」


 俺たちの声が重なった。狙いを外して、コップが倒れてしまったからだ。服は濡れなかったが、テーブルがびしゃびしゃだ。


「すみません、すみません。い、今拭きます」


 女の子は急いで布を取りに行き、俺は1人で席に残された。ポツンと座っているので、居心地が悪い。


 独り身である俺を気遣って、恋人がいるのにわざわざ娼館に行くことを計画したヘルマン。


 この前の俺との秘密がある罪悪感からか、それを了承してしまったニーナ。


 結果、非常に気まずい思いをしている俺。


 まさに、誰も幸せにならない構図である。どうしてこうなってしまったのか。誰か止めてくれよ。


 金のないフツメンの俺と顔立ちが整っている金持ちのヘルマンが並べば、みんな後者に群がる。


 ヘルマンはニーナ一筋だが、貴族として女性に優しいので紳士的対応をする。それがさらに女性の好感を呼ぶ。


 俺は童貞野郎で女性慣れしておらず、普通以下の対応しかできない。多くの男を見てきた女性からの好感度は中の下以下だろう。


 ドタン。大きな音がなったので見てみると、先ほどの女の子が正面から転んでいた。リアルドジっ子である。


 ドジっ子は画面の中の可愛い女の子やリアルで仲の良い女の子、またはあざとくて計画的な女の子がやるから(男に)許される。


 少なくとも、初めて来た上客の連れに付いた水商売の女の子は、許されない。短気な人なら長時間のクレーム入りだ。


 この店の新人研修はひどい。コンサルを雇わないと遅かれ早かれ潰れるぞ。


 俺は席を立って女の子の前で手を差し出す。


「大丈夫?怪我してない?」


 俺のために布を取りに行ったわけだから、助けるのがマナーだろう。


「ありがとう、ござ、ございます?」


 俺は思わず苦笑い。


敬語がなってない。俺は若造だからいいけど、おじさんにはやっちゃダメだ。君には高等テクニックすぎる。


 この世界には荒っぽい人も多いから、乱暴されるリスクは高いのだ。水商売となれば、公権力の保護も脆弱である。


 立ち姿を見る。子供以外でこれだけ露出度の高い服は久しぶりだ。


 膝上15センチほどの黒いミニスカート。白いノースリーブは胸元が開けている。


 夏だからみんな薄着。でも街の女性たちは肌を隠している。王国では肌を隠すと習った。文化的な要因かな。あるいは世界共通?まあ知らないけど。


 いま気づいたが、彼女は膝に怪我をしている。見ているこちらが痛いと感じてしまう怪我だ。


 実際に痛いみたいで、女の子は涙目だ。いや、接客がうまくいかずに泣いているのかもしれない。どっちものケースもありうるな。


「キュア」


 念の為、治癒魔法をかけてあげた。治せるのに放置するのはなんか嫌だ。苦手な接客をしてくれてるんだから。


 呆然としている女の子をおいて、俺は自分の席に戻った。


 やれやれ、どうなることやら。


 最初にお互いにした自己紹介によると、女の子の名前はペトラ。15歳。茶髪。田舎出身。俺の第1印象では、至って普通の外見をしている。


 この世界では化粧はあまり発展していない。庶民が使える安い化粧品は存在しないので、努力しても顔の攻撃力・防御力を高めることができない。


 さらに、少し話して分かったことは、この子はドジでコミュニケーションが苦手である。なぜこの仕事をしているのだろうか。絶対に向いていない。


 ヘルマンの周りにいる人気の女の子たちとは、言いたくないが雲泥の差だ。


 俺が分析をしていると、拭き終わったペトラが隣に座った。注ぎ直すのか?


 しかし、ペトラは頬を染めて上目遣いになった。両手を膝の上で合わせて、もじもじしている。照れている感じだ。


「あの」


 ニーナとの1件を経験した俺は怖いもの知らずである。普通の女の子には動揺しない。


 ぐっと身を寄せて、俺の耳元でささやいた。


「個室、行きませんか」


 ああ。接客が苦手な彼女の作戦はそういう手筈なのか。どこかでお金を稼がないといけないからな。


 普通の女の子が身を売らないと生きていけない世の中は嫌だなあ。


 そう思ったはずなのに、俺は首を縦に振って係の人に個室に誘導されていた。ちなみに部屋の壁は厚い。


 まあ普通が1番。俺も普通なんだから。実は、さっきの誘いはちょっと可愛かった。一途な雰囲気で、本物の恋愛というか。商売だけど。


 ふっ、とうとうこの時が来たのか。同じ歳くらいの女の子か。


 ペトラのことを思い出していると、身体を清め終わって個室に入ってきた。さっぱりした印象だ。目にも決意を感じる。


 彼女から声をかけてきた。


「司祭様、どうか私の告白を聞いてください」


 なるほど。そうか、なるほどね。


 教会ネタに対応するため、俺は定期的にテバノラ教のことを勉強している。なので、雰囲気からすぐにピンと来た。


 これは愛の告白ではない。罪の告白である。宗教的に意義のある告白は、カトリックの懺悔に近い。


 本来は魔神とやらとの戦いに参加しないなどの重大な罪に赦しを乞うことだが、今は悪そうなことなら何でも良いらしい。


 そして、これまた良い感じのアドバイスを行い、司祭が赦しを与える。告白内容は誰にも一生話さない。それで罪は赦される。


 俺はエセ司祭だから赦しは得られないんだけど、ここで正直に言うわけにはいかない。


「娼館に来るような司祭に相談してはいけないよ」


 我ながら、汚職や犯罪に手を染めてそうだ。貴族や大商人との癒着。あと、単純に同い年くらいの人に相談するなよ。


 俺も煩悩の塊だし。パーティーメンバーに手を出しそうになり、いま、まさにあなたをお金で買おうとしていたし。


「?お付き合いできただけでしょ?お金もなさそうですし」


 事実だな。突然連れてこられたし、金欠だ。別の言い方をすると、押しに弱くてお金に困っているわけだ。怪しめよ。


「ここに来たのも神様の導きってやつですね」


 この子、宗教ガチ勢だ。アレクたちも信心深い面があるけど、ここまでキメてない。


「私だよ?」


 司祭っぽく、1人称は私にしてみる。翻訳スキルがどう働くかはわからないが。


「全然問題ないです。司祭様は何でも知っていて嘘をつかないから」


 それは教会の「公式」見解というか。でも、まさか公然と教会に逆らえない。それほど、教会は強い権威と権力を持っているのだ。


 神々のお導きというのも、「然り然り」と言って受け入れるしかない。思ってない人も多いけど、馬鹿な人以外は長いものに巻かれる。


「わかりました。お聞きしましょう」


 俺は観念してペトラのお願いを受け入れた。娼館の個室まで来て、なんでこんなことに。


 ほっとひと息吐いたペトラは、ベッドに腰掛ける俺の前に座った。手を組んで、赦しを乞うポーズ。


 そして、告白が始まった。




上田洋介 Lv.32

HP:134/134 MP:315/315

ジョブ:雷属性魔法使い

スキル:雷魔法 Lv.4

    治癒魔法 Lv.4

    剣術 Lv.3

    観察術 Lv.4



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