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第30話 別れと旅立ち



 俺は東門でアレクたちを待っている。


 あの討伐から3日。その間にしっかりと休息を取り、周りの人に旅立つことを知らせた。


 出会いと別れは、冒険者の習い。別れを惜しまれつつ、誰もが当然のこととして受け入れてくれた。


「ヨースケ、お待たせ」


「みんな、おはよう」


 ニーナの言葉に返事をする形で、みんなに挨拶をした。他の3人からも挨拶を受ける。


 すでに昨日、俺たちは教会で誓いを立てている。俺はもうティラノサウルスの正式メンバーだ。


「伝えたように、今日から6日間、護衛依頼をこなしながら移動をすることになる」


 アレクの確認に、俺はうなずいた。金を稼ぎつつ移動もできる護衛依頼は、冒険者がよく行う移動方法だ。


「初めてなので、いろいろと教えてくれ」


 パーティーに入ってタメ口になったが、親しき仲にも礼儀あり。新参者の俺は、謙虚に行く必要があるだろう。


「ヨースケさん!」


 俺に話しかけてくれたのは、宿屋の看板娘、エレンちゃんだ。俺に結構懐いてくれたので、別れるのは寂しい。


「また、会えますか?」


 幼女のうるうる上目遣い!洋介にクリティカルヒット!


「もちろん。また来るよ」


 俺はエレンちゃんの頭を撫でてあげた。気持ちよさそうな顔が印象的だ。


 決して、ロリコンではないこと合わせて伝えておきたい。なので、親父さん、その怖い顔をやめてください。お願いします。


「久しぶり」


 次に声をかけてきたのは、ルイーゼだ。なんちゃって護衛依頼をしてからも、街ではたまに見かけていた。


「最近、大人しいらしいな」


 噂によると、すっかりじゃじゃ馬ぶりが収まり、ゲル婆の元で勉強に励んでいるそうだ。人は変わるものだな。


「それは、その、あんたのおかげというか」


 うん?後半が聞こえなかったな。まあ、そんなに大事なことではないだろう。


 俺は適当にルイーゼをいなしていると、ハンスがやってきた。


「お前がいないと、東の門番は暇になりそうだ」


 毎日のように薬草の森に行っていたので、ハンスとは仲良くなった。歳が近いので、1番仲が良いかもしれない。


「次会うときには、結婚してろよ」


 ライナーの隣にいると、モテないというのは黙っておこう。イケメンで女性慣れしている分、ライナーの方が上位交換だし。


 俺との約束にハンスが結婚への決意を強めていると、また話しかけられた。


「まさか、お前がBランクパーティーに入っちまうとはなあ」


 マリオと愉快な仲間たちである。相変わらず、取り巻きたちは脇でマリオをヨイショしている。


「マリオさんこそ、早くBランクに上がってくださいね」


 マリオは、これまでの功績を認められてCランクに昇格した。これからもどんどん力を伸ばしていくだろう。


 談笑の途中、マリオが急に挙動不審になると、ヒルデさんが現れた。


 ギルドの制服ではなく、お嬢様のようなドレス姿だ。こうして見ると、ギルドにいる冒険者とは異質な存在だとわかる。マリオの恋のハードルは高いみたいだ。


「ヨースケ様」


 ヒルデさんはお付きのメイドの日傘から出て、俺の正面に立つ。その目に映る感情を俺は読み解くことができない。


「太陽の神ブラスのご加護が厚い季節、ロッカからベッカリに祈りを変える者、神々の敬虔な僕、魔神の眷属を倒す者、聖なる力を宿す者。その名はヨースケ・ウエダ。彼のものに神々の祝福のあらんことを」


 洗練された動きに周囲の物音は無くなり、俺たちに周りの注意が集まる。最近、こんなことばっかりだ。


 幸か不幸か、この挨拶はメジエールの教会の書類で見たことがある。魔物の討伐に出発する聖職者に対する世俗者の正式な挨拶である。


 俺はヒルデさんの瞳を見つめ、返礼をする。


「この正しき信徒は、いずれ創造神の祝福を得るだろう。乙女の祈りに私からも感謝の印を授ける」


 俺は一拍置いてから、レベル1の治癒魔法を発動する。


「わぁ……」


 誰かの小さな声が妙に響いた。幻想的な白い光にヒルデさんが包まれている。


 実は、効果に違いはないのに、治癒魔法は白い光を伴うことができるのだ。MPを倍使うことになるが。


 サラたちに話を聞いてから実践したら、すぐに行うことができた。教会で見た書類からしても、その権威の象徴的存在であるようだ。


「ヨースケ様、いつかまたお会いしましょう」


 ヒルデさんは俺に背中を向けた。メイドさんも、一礼をしてからそれについていき、離れた場所にあった馬車に乗って、2人は去っていった。


 誰もがこそこそと話をしている状況で、別れの挨拶をできる雰囲気ではない。


 俺はマルクスとサラに視線を向ける。


 2人とはおととい、散々話をした。今更、交わす言葉もない。目線で会話をした後、俺はアレクに近づく。


「もう、大丈夫です」


 その優しい瞳は俺に向けられている。


「じゃあ、行こうか」


 アレクは依頼主の商人に話をする。商人は御者に合図を出し、すぐに出発できる状態になった。


 俺たちは馬車に乗り込み、その時を待つ。


「出発しまーす!」


 馬車が動き出す。久しぶりの乗り物に体がやや驚いている気がする。


「「また−!」」


 慣れた2人の声が聞こえる。俺は荷台の後ろから乗り出す。早くも、門は小さくなり始めていた。


「またー!」


 あっという間に門は見えなくなり、俺は荷台に戻り、座り直す。


「ちゃんとお別れできた?」


 イザベルは優しげに、しかしからかうように俺の顔を覗き込んでくる。


「子供じゃないですから」


「そうね、子供じゃないからね」


 あまり納得されていない気がする。俺がこの世界ではかなりの童顔に見えるからだろうか。


「わかってます?」


 念の為の質問だ。


「お姉さんには、なんでもお見通しよ」


「残念系のくせに」


 俺が小声で喋る。


「何か言った?」


「なんでもありませーん」


 新しい仲間、新しい日常。


 これからどうなるかはわからない。つらいことも楽しいこともあるだろう。


 でも、俺はワクワクしている。それが1番大切だろう。人生は楽しんでこそなのだから。




「休憩だ」


 昼頃、馬車が止まり、大休憩に入った。トイレや馬の水飲みではなく、1時間程度の本当の休憩だ。


 俺たちは馬車から大地に降り立つ。


「疲れた」


「はは、最初はみんなそうさ」


 アレクが俺を慰めてくれる。馬車はそれなりに揺れて、気分が悪い。


「これでも、揺れが少ない方だから」


 今回の護衛対象は、キングたちがいる間に輸送できなかった高級品である。早く傷つけず運ぶために、この馬車は良い性能を持っているそうだ。


「よくてこれって……」


 ニーナの話を聞いた俺の絶望をみんなが笑っている。笑い事じゃないんだぞ。俺は真剣だ。


「海に行けば、そんなの吹き飛ぶぞ」


 ヘルマンが背中を叩きながら言う。


「魚は食べたいんですよねぇ」


 俺たちは護衛依頼を繋いで、海にいく予定なのだ。観光と出世祝いである。


 この世界の海は、地球の海とどう違うのだろうか。塩辛いのか?船の形は?


「楽しみか?」


 アレクの顔を見て俺は自分の気持ちを伝える。


「もちろん」


 俺は信じてる。きっと、銀髪美少女との素敵な出会いが俺を待っていると。


 ふふ。今からニヤニヤが止まらない。


 俺たちの冒険はこれからだ!




まだ終わりません(笑)

感想、ブクマ、評価が作者の励みになります。

これからも拙作をよろしくお願いします。


上田洋介 Lv.14

HP:42/42 MP:117/119

ジョブ:雷属性魔法使い

スキル:雷魔法 Lv.3

    治癒魔法 Lv.4

    剣術 Lv.3

    観察術 Lv.4


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