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第28話 キングたちの討伐



 俺たちは南の森の小道を歩いている。最近通っている道なので、少しは慣れてきた。ただ、強い魔物がうじゃうじゃいるので、怖いものは怖い。


 アレクたちは、今日すでに何回もオークたちを退治している。俺にとっての雑魚はゴブリンからオークたちに印象が変わりつつある。


 だが、実際には、今の俺だと複数体を同時に倒すことはできないだろう。あくまで、このパーティーが強いのである。


「あんたも戦ったら?」


 イザベルが話しかけてきた。この女には、もともとの性格に加えて、同じ魔法使いとして俺に対抗心を持っているところがある。


「いえ、私の実力では足手纏いですから」


 このやりとりも何度も繰り返してきたものだ。こう答える度につまらなそうな顔をするのである。


 一方、俺がしゃしゃり出たならば、それはそれで嫌なのだ。結局、俺の必要性を認めつつ、仲の良いパーティーに異物が入るのが嫌なのだと推測している。


「イザベルも、森では火魔法を使いにくいじゃねえか」


「ヘルマンも木々が邪魔で動けてないわよ」


 この2人が口喧嘩を繰り広げるのもお馴染みの光景だ。単にからかっているだけなので、別に喧嘩しているわけではない。たまに本気になるが。


「正面に来た!」


 索敵担当のニーナがみんなに警告を出した。緩んでいた空気が一気に引き締まり、俺も意識を切り替える。


 指示役のアレクが戦闘を始めた。


「ゴブリンキングだけだ。運がいいぞ!」


 時間をかけて雑魚やリーダーたちを削ってきた成果だろう。キングが部下も連れずに姿を現した。


 部下がいなくてもキングなんだな。


 どうでもいいことを考えながら、俺も剣を構えて戦闘を見守る。


 俺の役割は、怪我に備えて後方で待機することだ。俺が怪我をすると治癒魔法を使えないし、雷魔法のことを話していないからだ。それに、俺の剣術はCランクまでしか通用しない。


 ニーナは動きが俊敏で回避できるので、俺の仕事はイザベルの援護くらいだ。ただ、彼女もDランクまでは余裕で対応できるので出番は少ない。


 つまり、総攻撃にでもならない限り、俺はやることがない。


「暇だなあ」


 正直な思いである。みんなが戦っている間、俺は観察術を駆使して戦い方を勉強しているだけ。


 役に立つのが、身体・スキルレベルを上げる方が手っ取り早いし確実だ。この世界で○○流剣術とかが少ない理由だと密かに考えている。


「ニーナ、周りに他の魔物はいるか?」


「いない!」


 アレクがその返事を聞くと、全体指示を出した。


「総攻撃だ。一気に行くぞ!」


 戦闘を行うことに高揚して、俺もゴブリンキングに切り掛かった。近くで見ると、やはり満身創痍で死にそうだ。


 俺の攻撃は大したダメージにならないが、攻撃しないと経験値が入らないからな。アレクたちの気遣いがありがたい。


「うりゃああー」


 ヘルマンの攻撃の時の声はでかい。威圧感を覚えるが、味方なので頼もしい。


 その声を伴った攻撃でゴブリンキングは大ダメージを負ったようで、体制をかなり崩している。勝負ありだ。


「とどめだ!」


 アレクがサクッと首を切り、キングは絶命した。それなりに続いた戦闘が終了したことで、雰囲気が柔らかくなる。


「やっぱり、最後はアレクね」


「いつも持っていくのはずるい」


 イザベルとニーナの指摘に、アレクは苦笑いだ。確かに、アレクは毎回のように美味しいところを持っていく。


 狙ってできることではないので、主人公補正というやつだろうか。神様がいるらしいこの世界では、本当にあるのかもしれない。


「高いところは取り終わったぞ」


 ヘルマンが目ぼしい素材を取ってくれた。丸ごと持って帰りたいが、こんなに重い魔物を担いで帰ることはできないからだ。


 俺ならアイテムボックスに入れられる。重さも感じない。成果は大きく増えるだろう。


 いつも黙っていることに後ろめたさを感じる。


 今日も俺は作り笑顔でそれを誤魔化し、その場を後にするアレクたちについていった。




 それから俺たちは、数体のオーク・オーガ、その上位種を倒した。キングを倒したからか、ゴブリンとは遭遇しなかった。


 そして、今、オークキングを討伐したところである。


 ここまでの戦闘でも、オークキングとの戦闘でも、アレクたちには危ないところはなかった。俺の存在価値0である。


 本当に俺がいる必要はあるのだろうか。


 4人が互いの健闘を褒め合うなか、俺は自問自答していた。


 この4人は Bランク手前のCランクパーティだ。4人がかりでAランクの魔物を討伐するだけの実力もある。


 この人たちに追いつくのはまだまだ先だろうな。まあ、特に目的のある人生ではない。


 銀髪美少女・美女と結婚できれば、何の問題もない。


 この広い世界、どこかに俺を好きになってくれる女性もいるさ。フラグじゃないよ、ホントだよ。ヨースケ、ウソツカナイ。


 俺は思考を集中させるために木の葉を見つめていた。そして、遠い奥から俺たちを見ている存在に気がついた。


 そいつは俺の視線に気付いたのだろう。観察をやめて、高速で近づいてきた。


 それで、俺はその魔物とそいつの名前を結びつけることができた。


「俺の前からオーガキング接近中!」


 談笑していた声は途切れ、ヘルマンが俺の隣まで素早く前進した。油断がないのは素晴らしい。


「確かお客様のお出ましだな」


「他の敵はいない!」


 ヘルマンの声とニーナの声が重なる。俺は急いで後ろに下がり、声をかける。


「失礼なお客様に、相応のもてなしをいたしましょう。相応の、ね」


 その声に軽く笑ったイザベルが反応した。


「私の特技を披露して差し上げるわ」


 そう言い放つと、茂みから飛び出してきたオーガキングにイザベルは魔法を行使する。


「ファイアーアロー」


 火で作られた魔法の矢がオーガキングに襲いかかる。


 出てきたばかりのヤツは避けることができず、まともに攻撃をくらった。レベル5の火魔法の威力は強力だ。


 それは確かにすごいんだが……。


「おい、落ち葉に引火してるぞ!」


「イザベル、やるなって言ってるだろ!」


 当然、こうなる。魔法で作ったからといって、都合よく消えてくれるわけではない。火で動きづらくなるのは魔物も俺たちも同じなのがせめてもの救いか。


「みんな、私を抑えすぎなのよ。自由にやらせなさい!」


 イザベルの我儘は止められない。これは、パーティーの共通認識だ。この女、やるときはやってしまうのである。


 やれやれという感じだアレクとヘルマンは動きが鈍くなったオーガキングに攻撃する。ニーナはいつも通りの顔だ。冷静さを保っている。


 4人の動きを見る中で、俺は自分の周りを見てみる。炎の煙で俺の姿が4人から見えづらくなっているはずだ。


 その上、俺とオーガキングの動線は確保できている。もしかして、やれるか?


 サンダーボルトを習得して以来、強敵相手に試してみたかったのだ。これを逃すと、Aランクの魔物に出会うことはもうないかもしれない。


 俺はもう1度確認を行い、誰の攻撃にも影響を与えないことを確信してから攻撃した。


「サンダーボルト」


 光の速さで敵に向かっていき、狙い通りに直撃した。


 うん。オーガは少しよろけているが、あまり効果はなかったかもしれない。


 そのとき、考え込んでいた俺と、周囲をジロジロと見ていたオーガキングの目があった。


 笑顔。


 俺は、魔物の表情なんてわからない。でも、今のは笑顔だった。おぞましい笑顔である。


 前方から強い風が急に吹き始めた。


 オーガの走る音がどんどん大きくなってくる。


 俺は、力を抜いて両手で剣を構えた。


「ヨースケ!」


 アレクの声がずいぶん小さく聞こえた。叫んでいるはずだけどな。いや、どうでもいいか。


 口角を上げて俺はつぶやく。


 小さく、しかしはっきりと。


「これで楽しくなってきた」


 そうか、俺は楽しいのか。


 少し前の俺には信じられない感覚だろう。


 でも、この変化が心地よい。


 俺はもう1度、正面のオーガキングに向き合った。


「やあぁぁーー」


 自分の意外な考えは脇に置き、俺は剣で切り掛かったのだった。





上田洋介 Lv.13

HP:39/39 MP:104/113

ジョブ:雷属性魔法使い

スキル:雷魔法 Lv.3

    治癒魔法 Lv.4

    剣術 Lv.3

    観察術 Lv.4


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