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第27話 貴族の冒険者②



 彼らの対する第1印象はいろいろある。まず、1つ言わせてもらおう。


 名前がむっちゃ気になる!


 ティラノサウルス?


 絶対に過去の異世界人の影響である。勇者様の国で最強の生物とでも聞かれて、そう答えたのだろう。この世界で聞くとは思わなかった。


 もう1つ気になるのは、その見た目である。


 全員、金髪碧眼。美男美女。装備品も高性能に見える。身のこなしも育ちの良さが感じられる。


 これらすべてに当てはまる存在に覚えがある。貴族だ。


 できれば関わりたくない連中である。王国の貴族たちの選民思想のせいで俺たちは召喚されてしまったからだ。


「ヨースケ、初めまして」


 男の声を皮切りにして、メンバーの自己紹介が始まった。


 アレクサンダー・フォン・アワーバック・ホルト。

 このパーティーのリーダー。

 アワーバック伯爵家の出身。

 ジョブは騎士で、剣術のスキルはレベル5。

 ミスリル配合の剣を使う。


 俺の印象は、正統派の騎士。物語の主人公になれそうだ。


 ヘルマン・フォン・ヴィルナー・ベック。

 ヴィルナー伯爵家の出身。

 ジョブは盾使いで、盾術と剣術のスキルはレベル4。

 いろいろと仕込みがある魔道具の盾を使う。


 ゴツい体は訓練の証で、暑そうな男である。


 イザベル・フォン・シュレーダー・ウーゼ。

 シュレーダー伯爵家の出身。

 ジョブは火属性魔法使いで、火魔法のスキルはレベル5。

 身を守るために防御性能の高いローブを着ている。


 なんだか勝気なお嬢様感がプンプンする。


 ニーナ・フォン・ケムナ・ミュラー。

 ケムナ伯爵家の出身。

 ジョブは狩人で、弓術と盗賊のスキルはレベル4。

 弓矢を魔力で補充できる魔道具の弓を使う。


 こちらはクールな美女である。


 全員が貴族出身である。4人とも立派なステータスを持ち、装備も充実している。


 副ギルド長の言う通り、実際の力はBランクに相当するだろう。しかしこれ、俺が本当に必要なのか?


「実は、彼らは1度、威力偵察を行っているのです」


 威力偵察か。彼らの実力なら問題なく行える。自分たちで得る情報を重視するのは、高ランク冒険者によくあることらしい。


 ギルドに報告した冒険者、もしくはギルドそのものに問題がある場合があるとのこと。あまり表では言いにくい話だな。


「魔物の種類は想定内だが、思ったより数が多くてね。連戦になりそうなんだ」


「そこでヨースケさんの出番というわけです」


 アレクサンダーの言葉に続けてニーナが説明する。透き通る声は結構好みである。


「私の治癒魔法が必要、ということですか」


 俺のこぼした言葉に、向かいのパーティーメンバーたちがうなづいた。俺の個人情報は容易に流出していたようだ。


 その後に分かったことだが、マリオたちには援助を断られたらしい。冒険者たちのギルドへの不信は強かったのである。


 ここで俺のステータスを確認しておく。


 上田洋介 Lv.7

 HP:24/24 MP:80/80

 ジョブ:雷属性魔法使い

 スキル:雷魔法 Lv.3

     治癒魔法 Lv.4

     剣術 Lv.3

     観察術 Lv.3


 このひまな2週間の訓練により、雷魔法がレベル3になった。1人のときは使うことも多かったので、いつの間にか経験値が貯まっていたみたいだ。


 レベルが3になり、雷が飛んでいく魔法を使えるようになった。俺は、これをサンダーボルトと呼んでいる。


 サンダーボルトはかなり使い勝手が良い魔法で、威力も高い。レベル3が1人前の基準とされるので期待していたから、嬉しい。


 ただ、彼らとの討伐ではこの魔法を使うことはできない。雷魔法を除くと俺のステータスでは、この依頼は不安要素がある。


 1人前の冒険者は、レベル10以上とされている。俺はまだレベル7だ。


「想定する魔物やその数、活動日数などを教えて頂きたいです」


 しかし、アレクサンダーから言われたのは、予想より甘い内容だった。


「今日から1週間は、雑魚狩りとヨースケのレベルアップに努める。詳細はその後だ」


 高ランク冒険者が付きっきりでパワーレベリングをしてくれる。滅多にないチャンスである。


「アレクサンダー卿、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」


 俺は素晴らしい笑顔で彼と握手をしたのだった。




 早くも、依頼された日から1週間が経った。俺はいま、南門で他のメンバーの到着を待っている。


 いよいよ、今日からゴブリンキングとオーガキングの討伐である。武者震いが止まらない。


 これまでに、ゴブリンジェネラルやハイオーガなどのBランクの魔物を多く討伐した。あまりにも次々に倒すので初日は驚きすぎて逆に心配された。


 高ランクの魔物がいなくなって、金欠の冒険者たちは一斉に雑魚狩りを開始。おかげで、ゴブリンなどは通常の数に戻った。


 サラとマルクスもすでに森に繰り出している。2人の機嫌も良くなり、酒場でもテンションが高い。


 そして、俺のステータスは目に見えて向上した。


 上田洋介 Lv.13

 HP:39/39 MP:113/113

 ジョブ:雷属性魔法使い

 スキル:雷魔法 Lv.3

     治癒魔法 Lv.4

     剣術 Lv.3

     観察術 Lv.4


 身体レベルが3上がり、観察術もレベル4になった。自分よりかなり強い魔物を多く倒し、魔物や強い冒険者の動きを観察したからだろう。


 俺が2か月以上かけてあげたレベルより、この1週間で上昇した値の方が高い。


 俺がソロで薬草を採取しながら弱い魔物を倒していたのは、かなり非効率的な行動だったようだ。


「ソロはやめようかな……」


 俺が現状を振り返っていると、賑やかな声が近づいてきた。来たか。


「ヨースケ、待たせたな」


 声をかけてきたのはゴツい盾使い、ヘルマンだ。彼とアレクとはかなり打ち解け、友人と言えるほどの関係になっていた。


 いつ見ても、彼の周囲だけ気温が上がっている気がする。リアル松○修造である。


 貴族なんて酷い奴らばかりだと思っていたけど、こいつらみたいにいい奴もいるということを知った。


 まあ、悪徳貴族の方が多いはずだけど。


「街の人たちの期待もすごく高まってるね」


 クールな狩人、ニーナが冷静に分析する。ポニーテールが風に揺れている。


 アレクたちがオーク、オーガを大量に討伐したことで物流は正常化しつつある。家計の危機が去ったことに恩義を感じているのだ。


 俺もその恩恵を受け、急に街の人たちが俺に優しくなった。手のひら返しであるが、凡人の俺はやはり気分が良い。


「ふん、調子のいいことね」


 やや見下したような言ったのは、火魔法使いのイザベル。


 しかし、俺たちの目は温かい。イザベルが実際には心優しい女性であることを知っているからだ。


 その優しさを素直に表現することができずに、つい言葉が強くなってしまう。イザベルが本心ではそのことに悩んでもいるのは、周知の事実だ。


 周りの目を感じて顔が赤くなったイザベルは、ミディアムウェーブの髪をいじっている。


 最後にリーダーのアレクがまとめる。いつでも騎士のような振る舞いをするのだが、それが自然に見える好青年である。


「キングたちは相手にとって不足なし。早く街のみんなを助けよう!」


 その掛け声に応じて、俺たちは南の森へと出発した。




 今回も厳しい戦いになる。油断しているわけではない。


 自分たちのしてきた努力を知っている。力を知っている。


 自信を持つだけで、未来がとても明るく見えた。


「この人たちと一緒に」


 自然とそう思えるのが、変な気分である。


 それでも、嫌な気はしない。むしろ心地よい。


 その不思議な気持ちの原因は、自分でもよくわからなかった。





上田洋介 Lv.13

HP:39/39 MP:113/113

ジョブ:雷属性魔法使い

スキル:雷魔法 Lv.3

    治癒魔法 Lv.4

    剣術 Lv.3

    観察術 Lv.4


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