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第23話 ゴブリン大発生①




「ヨースケさんも参加されるんですよね?」


 俺がいつも泊まっている「東」の看板娘、エレンちゃんが話しかけてきた。


 朝食を食べる手を止める。


「ゴブリン狩りだろ。当然さ」


「そうですか。くれぐれも、安全には気をつけてください」


 各テーブルでしている挨拶だが、きちんと俺のことを心配していることが雰囲気で伝わってきた。


 自分のことを心配してくれる人がいるのは貴重なことだ。


「冒険者は、安全第一さ」


 俺はあまり心配させないように、落ち着いて言葉を発した。


 いくら大人びていても、エレンちゃんは5歳だかな。大人として当然の対応だ。


 残りの朝食を口に入れ、俺はそのまま冒険者ギルドに向かった。すでに依頼の準備は終了している。


 いま、俺たちが話題にしていたゴブリン狩りは、ギルドを挙げて行う大規模なものだ。


 その原因は、あのスタンピードらしい。


 俺が死にかけたスタンピードは、王国に大きな被害をもたらした後、王国軍と冒険者ギルドの尽力で終結した。


 幸いなことに、直接やつらが帝国側に被害をもたらすことはなかった。


 しかし、隣接する地域で魔物が一斉に行動した余波で、このメルツィヒ近郊にゴブリンが大量にやってきてしまったのだ。


 物流や冒険者への被害を重く見た冒険者ギルドは、大規模討伐を決意。


 メルツィヒにいるすべてのFランク以上の冒険者を徴用し、一気にゴブリンを殲滅する作戦を立案した。


 なんちゃってEランクの俺も、招集対象だ。この世界では大人はだいたいゴブリンぐらいは倒せるから当然だ。


 ゴブリン相手とはいえ、相手は大群。他にどんなモンスターがいるかもわからない。危険な戦いになるだろう。


 ちなみに今の俺のステータスはこんな感じだ。


 上田洋介 Lv.5

 HP:20/20 MP:70/70

 ジョブ:雷属性魔法使い

 スキル:雷魔法 Lv.2

     治癒魔法 Lv.3 

     剣術 Lv.2 

     観察術 Lv.3


 身体レベルが2つ上がって、レベル5になった。HPもMPも少しは見栄えするよう強化された。


 スキルは観察術がレベル3に到達。これで俺も、1人前の観察眼を持っているということだ。


 気になっているのは、上達のスピードだ。


 もし誰もがたった2ヶ月でいくつものスキルをレベル3にできるなら、レベル3で1人前とはいかないだろう。


 やはり、俺が異世界人だから、身体レベルもスキルレベルも上昇しやすくなっていると思う。


 成長度合いも隠さないといけないのは、大変だ。この世界には、今の俺より強い奴はいくらでもいるからだ。


 まあ、1人で活動していれば大丈夫だろう。少し見られたくらいなら、いくらでも誤魔化せるはずだ。


 いろいろ考えているうちにギルドに着いた。今日は、ギルドの前に集合しろと言われている。


 いつもの建物の前には、見知った顔をいくつも見かけた。そのうちの2人が俺に近づいてくる。


「おはよう」


「誰とパーティを組んだの?」


 マルクスに挨拶をしつつ、サラの質問にも答える。


「結局、ソロのままさ。ギルドの指示に従うよ」


 俺の返事に2人は微妙な顔をする。臨時のパーティにはトラブルが起こりがちだ。


 そのうえ、冒険者になって日が浅く、経験が少ない陰キャの俺は、人間関係のことには力不足だ。


 2人もそのことは薄々わかっている、と思う。


「やっぱり、今からでも俺たちのところに……」


「いや、それは遠慮しておくよ」


 俺はマルクスの誘いをキッパリと断る。この前も断り切るのにかなり時間がかかったからだ。


 マルクスとサラは、一緒に部屋を借りている幼馴染たちと臨時パーティを組んでいる。


 これまで何回も臨時パーティを組んできた彼らは、連携もうまい。幼馴染だから、仲も良い。


 そこに俺が入っていくのは、ハードルが高い。実力的にも、コミュ力的にも、である。


「気をつけてね」


「ギルドがいい仕事をしてくれるはずさ」


 2人は俺の意思が固いことを悟り、元いた場所に戻っていく。


 今日は大規模討伐。さすがにソロはまずい。冒険者ギルドも無駄に人が死ぬのは困る。


 そこで、俺のような余り者にはギルドがパーティを組ませる手筈になっている。たぶん、3〜5人のパーティに入ることになる。


 居心地はわるいだろう。しかし、大した知り合いでもないから、今後関わらなければ良いのだ。


 この街だけでも、50人以上の冒険者がいる。十分可能だろう。


 俺が方針を再確認している間に、ギルド側の準備が終わったみたいだ。中年の男性が台の上に登っている。


「神々の祝福を受け、貴族・聖職者・臣民諸君に多大な恩寵を授けし偉大なる者にして……」


 なんとも仰々しい挨拶だ。この大事なときに、いらない情報を大量に流し込んでくる。服装も豪華だし、ギルド長は貴族か豪商の出身かもしれない。


 暇だなあと思いながら聞いていると、ようやくギルド長の挨拶が終わった。一気にみんなが話し始める。


「なに言ってるのか、まったく理解できなかった」


「知らない単語がいっぱいあった」


「お貴族様は、私たちとは言葉も違うんだよね」


 周りの話し声を聞いて俺は気づいた。どうやら勇者召喚の翻訳機能がうまく働いているようだ。使い道はないとは思うが、このスキル、無駄に高性能だな。


 俺はギルドの職員さんの呼びかけに応じて前に出る。臨時パーティを組む相手が決まったのだろう。周囲の視線が俺に集まる。


「この方たちがヨースケさんのパーティメンバーです」


「けっ、やっぱりお前かよ」


 そう言って俺を見てきたのは、Dランク冒険者のマリオだった。


 俺が初めてこの街に来たとき、ギルドの受付嬢のヒルデさんを口説いていた男だ。そこでは、俺が下手に出ることによりその場を丸く収めた。


 その後も話すたびに先輩風を吹かしてくる、かなりうざい男である。そして、そのパーティメンバーも同じような人間だ。


 ギルドの酒場ででかい声で騒いで他の冒険者から遠巻きにされている、柄の悪い奴らでもある。


「まじ、最悪だよな」


「それな」


 俺が最も苦手なタイプの冒険者だ。なんでギルドはこんな奴らと組ませるのか。信じられない。


「あくまで臨時ですので」


 そう言って、ギルド職員は足早にこの場を去る。もしかして、誰も入りたがらないから、余所者の俺を押し込んだのか?


 思い返せば、冒険者ギルドの俺への評価はかなり低い。


 王国出身。


 なぜかパーティを組まずソロで活動。


 治癒魔法を使えるのに教会に属さない訳あり。


 煙たがる理由は多くある。それでいて、この街での有力者のコネや保護は全くない。面倒ごとを押し付けるには、都合が良いのだろう。


 俺は悲観的な予想を口にはせず、いつも通り下手にでる。


「先輩たち。力不足ですが、よろしくお願いします」


 下手に出ていることがわかり、マリオたちもいつも通り上から目線だ。


「俺たちに面倒をかけるなよ、新人」


「まじ、ついてくるだけでいいから」


「薬草狩りには、それもきついんじゃない?」


 こいつらも言いたい放題だな。でも、真面目に反論するのも疲れるから、苦笑いしておこう。


 実は、マリオたちのパーティもこの討伐の主戦力だ。 


 この街の冒険者は60人程度。しかし、兼業や引退間近、俺のような新人を除けば、30人くらいだ。


 普通は、俺のようにどんどんレベルが上がることはないから、新人は役に立たない。


 また、兼業や引退間近の人たちは、この世界基準では立派なおじさん・お爺さんである。


 その30人の中で、Dランクで冒険者歴の長いパーティはあまりいないのだ。


 ちなみに、この街にはCランク以上の冒険者は存在しない。


 ランク相応の依頼に対応するため、あちこちを旅しながら活動しているからだ。


「マリオさん、かっこいいところ見せてくださいよ」


 楽なのはいいことなので、本気でマリオたちに期待している。


 危険な戦闘に参加しなくても良いなら、ぜひこちらからお願いしたいくらいである。


 エレンちゃんに言った、安全第一は嘘ではない。


 俺は完全にフラグを立てながら、マリオパーティに参加して、担当の森へと出発した。


 ゲームみたいに面白いことを祈って。




 そんなことはないのに。


 この世界は、甘くはないのに。


 本当は分かっているのだ。


 理解しているのだ。


 それでも俺は、「現実」から目を背け続ける。


 嘘をつき続ける。


 ……。


 「現実」を避けられない、その時まで。




上田洋介 Lv.5

HP:20/20 MP:70/70

ジョブ:雷属性魔法使い

スキル:雷魔法 Lv.2

    治癒魔法 Lv.3 

    剣術 Lv.2 

    観察術 Lv.3


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