表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/46

第17話 ゴブリン狩り②

 


 俺たちは北の森に入った。2人に言われた通り、あまり薬草の森と変わらない。木々が生い茂っていて太陽光を遮るので、少し暗い。


 地面には草が生えているが、獣道が出来ている。なんだかメジエールの森を思い出す。


 この森は魔物が多い。道中で魔物に気づかれないように静かにしている。今も、俺たちが歩く音がわずかにするだけだ。


 気持ちは忍者。抜き足差し足忍び足って、それは違うか。


 10分ほどして、先頭のサラが止まった。サラは気配を察知するスキルを持っているのだ。この前のゴブリン討伐では、疲れていて精度が落ちていたらしい。


 スキルの発動も本人の状態に左右されるが振れ幅は結構大きいみたいだ。


「スライムだよ。1匹だけ。のろのろ動いてる。どうする?置いてく?」


 スライムか。いつも不思議に思うのは、こんなに弱いのにどこにでも大量に生息していること。他の魔物に倒されないのだろうか。ヤツらの生態は謎が多い。


「肩慣らしに狩っておこうぜ。サラ、周りに他の魔物はいないんだろ」


 サラは頷いた。それなら、横槍が入ることはないことになる。まだ初戦だ。戦うデメリットは小さいな。


「俺も問題ない」


 マルクスが剣を抜いた。


「よし。俺が初攻撃をいただくぜ」


 そういえば、剣でスライムと戦うのは初めてだ。いつも面倒だから雷魔法で倒していた。スライムは魔法攻撃に弱いから、一撃で倒せる。


 今は2人の前だから雷魔法は使えない。剣でやるのは面倒だとマルクさんが言っていたが、実際のところ、どうなんだろう?


 マルクスの攻撃に続いて、俺とサラも剣を使う。スライムはやたら物理防御力が高いから、ふにゃんふにゃんとしている。これでダメージが入っているのか?


「酸が来るよ!」


 サラが一応、という感じで言う。スライムの攻撃手段は酸を吐くことだけだ。しかも、攻撃前に体がプルプルと震えるから、避けるのも簡単。


 もし酸が体や武具にかかっても、レベル3の治癒魔法ならそれなりに治せるだろう。だが、MPを節約するためにもできるだけ避けるのは当然だ。


 酸をかわすと、俺たち3人は剣で変わるがわるダメージを加える。しかし、なかなかスライムが倒せない。もう1分くらいは攻撃している。


 確かにこれは一苦労だ。怪我をする危険はないが、むしろそのせいでただ単調な作業になっている。雷魔法のことを2人に黙っているのが申し訳ない。


 スライムが地面に溶けていく。今のマルクスの打撃が致命傷だったみたいだ。俺とサラが汗を拭う。意外に運動量が多かった。


「肩慣らしにちょうどいいだろ?危険もないし」


 マルクスはなんともないようだ。表情は、気力、体力ともに十分と主張せんばかり。今朝は腹痛で遅刻したが、もう体調が万全というのは嘘ではないようだ。


 一方、サラがマルクスに目線を向けている。どうもマルクスはこういうことをよくやるみたいだ。サラは、しょうがないヤツだな、という表情。この2人の関係は、姉と弟なんだな。


 それから30分ほど。途中でスライムは3回見かけたが、全部スルーだ。金にならない以上、あれを何回もやりたいとは思えなかった。


「なにか来た!」


 サラが小声で素早く言う。スキルに反応が来たということだ。しかもこの様子ではスライムではないな。ゴブリンか、コボルトか。


 来たのはゴブリン2匹。今日の目当てじゃないモブだ。俺たち3人でかかれば問題はない。俺は2人の方を向いた。


「配分はどうする?」


 サラが答える前に、マルクスが反応した。


「俺はまだウズウズしてるんだ。随分長く、静かにやってたからな。俺が右のをやる」


 やっぱりか。コソコソ動くのは、マルクスの性にあってなさそうだ。でも、そういうところがサラには心配だと思う。


 俺がサラの方を見ると、首を縦に振っていた。まさか、もう俺の心を読めるように?


「それじゃあ、私たちが2人で左をやるね。ヨースケ、いいね?」


「ああ、もちろんだ。でも上手い連携はできないぞ」


 俺に慣れない相手と連携して相乗効果を発揮できる剣術の力はない。そもそも、そこまで他人を信頼して仕切れない。


「それはそう。でも、互いに怪我させないようにだけすれば良いと思う」


 俺も肯定した。まあ、サラもそこまで剣が上手いわけじゃないから、その辺りが妥当だ。


 ゴブリンたちは無警戒で、俺たちに気づいている様子はなかった。そして、案の定、奇襲は成功した。


 俺とサラは、左手と足に剣を当てた。戦闘不能まではいかなかったが、かなりのダメージが入ったはずだ。ゴブリンの動きは悪い。倒すのは時間の問題だ。


 マルクスの方に意識を向けると、ゴブリンが飛んで奇襲をかわしていた。どうも、殺気がありすぎて直前で存在を認識されてしまったようだ。


 だって、こっちにもマルクスの気配を感じるくらいだ。サラからも、あちゃーという雰囲気を感じる。


 俺は意識を向け直して、ゴブリンを見る。傷口からは血がダラダラと出ていて痛そうだ。表情は……もとからよくわからないんだった。


 サラと同時に斬りかかると、ゴブリンに2人の剣がモロに入り、あっさりと死んだ。呆気なさすぎる。痛みがそんなにひどかったのだろうか。


 マルクスの方に加勢しようとすると、止められた。


「見てようよ」


 見てるって。確かにマルクスが遅れをとるとは思えないが。


「あいつ、動き足りないんでしょ。1人でやらせとけばいいのよ。ヘマしたら、助けに入れるようにしとけばいいの」


 言われてみれば、そんな気もする。いつも一緒にいるサラが言うんだから、素直に従っておこう。


 しばらく2人で観戦する。戦いは、終始マルクスが優勢だ。


 ゴブリンは俺とサラが観戦しているのを見て、冷静さを欠いている。俺たちが参戦すればすぐに決着がついてしまうからな。なんとか逃げ出そうと必死だ。


 マルクスはそのことを見抜いて、着実にゴブリンを追い詰めている。日頃は単純でせっかちなところも多いマルクスだが、戦闘では堅実派だ。そうじゃないと冒険者は長くやれないということかもしれない。


 追い詰められ、たくさんの傷を負ったゴブリンが破れ被れの攻撃をした。それを難なくいなし、マルクスがとどめを刺した。討伐完了だ。


 マルクスが息を整えながら、こっちに来る。


「なんだよ、2人ともさっさと休憩しちゃって」


 文句を言われた。気持ちはわからないでもない。俺は謝りそうになったが、サラが反論した。


「あれは、休憩じゃないよ。いつでも助けに入れるような体勢だったからね」


 マルクスはどう返せばいいのかわからないようだ。俺たちは一応準備はしていた。しかもマルクスはそれをよく見ていたわけではないから、有効な反論が思いつかないんだろう。


 いや、口のうまさではサラには敵わないと分かっているのかもな。俺の人生経験からも、こういう場面では女性にはあまり逆らわない方がいい。


 俺たちは討伐証明の耳だけ取って、その場を離れた。ゴブリンは全種類、討伐証明が耳だからやりやすい。耳ならゴブリンの醜悪さも軽減されていて、触りやすいともいえる。


 少し離れた場所で交代しながら休んだ後、ゴブリン狩りを再開した。まだまだ体力は残っている。狙いのマジシャンやホブのゴブリンは狩っていないし、そもそもこれでは今日の宿代にもならない。


 スライムとモブゴブリンをやり過ごすこと、数回。毎回、木の裏に隠れたり進路を変えたりするのは面倒で、息を潜めることにも少し疲れた頃だった。時間は、休憩から30分ほど経っていた。


「静かにして。やばいのが来るよ」


 サラの顔はいつになく真剣だった。ごくりと息を呑む。何が来るんだろうか。この森にそんなに強い魔物はいないはず。


 現れたのは5体のゴブリン。しかも、ホブが3体にアーチャー、マジシャンが1体ずつだ。これではホブに足止めされている間に、弓と魔法で一方的に攻撃される。奇襲しても、俺たちには無理だ。


 より一層、静かにしなければならない。それはみんなわかったようで、呼吸音だけがする。あちらからは、気味の悪い声が聞こえる。こちらの音はゴブリンたちには届かないだろう。


「ぐぅー」


 あたりに響いたのはデカい腹の声。マルクスは、明らかに空腹を訴えている。ええと、つまり、この緊張状態でも、体の機能は正常のようだ。


 現実逃避はそこまでにして、俺はゴブリンたちの方を見る。1番近くにいたゴブリンが止まった。気づいたか?逃げるべきか?


 2人に声をかけようとしたとき、止まっていたゴブリンは再び動き始めた。ゴブリンたちは遠くへと離れていく。


 俺たちはそれとは逆方向に動いた。また、あいつらに遭遇したら嫌だからな。


 そしてサラが周りに魔物がいないと言った後、説教が始まった。説教というより、愚痴に近い。


「マルクス、信じられない!」


 怒涛の説教だ。緊張感がない、命がかかっていると理解できないというさっきの話から、能天気すぎる、金遣いが荒いという日常の話まで。不満爆発という感じだ。まるで俺がいないみたいだ。


「すいませんでしたー」


 初めは言い訳をしようとしていたマルクスだったが、途中からは平謝りで、諦め顔だ。まあ、マルクスの腹の音で危うくバレるところだったということは間違いない。


 反省しているようだし、ここら辺で間に入るか。


「サラ、そろそろいいんじゃないか?マルクスも反省している。それより、間食にしよう。もう1度、これを起こさないために」


 マルクスは全力で肯定している。サラも言い過ぎたと思っているのか、すんなり受け入れてくれた。


 俺の昼食はあのおじさんの店の串焼き。他にも串焼きはあるし、あの店は日替わりで同じ串焼きにもレパートリーがある。


 ただ、今日は初めと同じ、焼き野菜とボーンラビットだ。俺はこれが1番うまいと思っている。マルクスたちはサンドウィッチだ。


 俺は背負っているバックから串焼きを取り出す。アイテムボックスからじゃない。2人の前で熱々の串焼きを取り出すのはさすがにおかしいから、今日はバックに入れてきたのだ。


 実は冷めている状態で食べるのは初めてだ。どれどれ。


「相変わらず、うまい」


 いちゃつきながらサンドウィッチを食べているサラとマルクスを視界に収め、彼女持ちへの嫉妬を高めつつ、俺は串焼きを1人で食べ進めていった。




上田洋介 Lv.2

HP:14/14 MP:58/58

ジョブ:雷属性魔法使い

スキル:雷魔法 Lv.2

    治癒魔法 Lv.3

    剣術 Lv.2

    観察術 Lv.2


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ