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一章10話『命の恩人』

お久しぶりです。


「おいおい、さっさとかかってこいよデカブツ。それともビビって手も足も出ねえってか?」

「ググ…………」


 《マスターゴブリン》がサモンを警戒して後退りをする。それもそうだ、つい先刻、大木と一緒に投げられたのだから。純粋な力は圧倒的に上回られていると、本能が告げているのだろう。

しかし、《マスターゴブリン》としてのプライドか、戦闘を避けて逃げるという手段を取りたくないような素振りを続ける。


「おいおい、まさか自分はガキを甚振る癖に、自分が殺られそうなら逃げるってんじゃあねえよな?」

「オレ、ニゲナイ」


 後退りはしながらも《マスターゴブリン》の目は死んでいなかった。確実にその眼球はサモンを捉え、力量を測るように見つめている。


「それにしても、世に人の言葉を喋る魔物がいるとは思わなかった」


 優占種(ドミナンス)はあくまでも種族の頂点に立てるレベルの強さを持つ種類のこと。だが数多の修羅場をくぐり抜けたサモンですら、人間の言語を話すゴブリンと遭遇したのは初めてだった。


「50年くらい生きてきて初めて見たぜ。本来なら生け捕りにして色々調べたいが……そんな事も言ってられないな」


 もちろん興味もある。そこまでの知能を持つ《マスターゴブリン》など、今後お目にかかれるかも怪しい。だが、そんな悠長なことを言ってられるほど悠真の体は頑丈では無い。今も着々と死に近付いているのが明白である。下手をすればハイベルよりも危険な状態なのだ、早く仕留めなければ助かる命も助からない。


「来ねえなら、こっちから……行くぞ!!」

「ウグゥ!?!?」


 ダン!とサモンが地面を踏めしめたその瞬間、本能が全てを察知した《マスターゴブリン》は大きく後ろに飛び下がった。もしそこで飛び下がっていなかったら、恐らく脳天から真っ二つに裂けていただろう。さっきまで《マスターゴブリン》の立っていた場所には大きな斧の跡が残っていた。


「なんだよ、避けんなよ」

「……!!」


 悠真と戦っていた時とは異なり、人の言葉を話す余裕もない《マスターゴブリン》は冷や汗を垂らすも、飛び下がった先にあった木を引き抜き、武器の代わりとして使う。


「知性があるってのも厄介だな」


 サモンが飛び出すのと同時に怪物が木をそのまま振るう。サモンに直撃した──かにみえたが、サモンはまるで片手剣を使うかのように斧を振り回し、そのまま木を輪切りにしながら《マスターゴブリン》目掛けて動く。


「……ツヨイ、ニンゲン」

「お前、息がくせえよ」


 首を刎ねようとサモンが振り回しした斧をいち早く察知し、《マスターゴブリン》はイナバウアーのように反り返りながら躱す。つい感嘆、というよりは戦慄の呟きが漏れる程だ。


 サモンの斧は特段強そうでも高級でもない、ただの樵が使っていそうな変哲もない普通の斧。変なことと言えば、両手斧のような大きさの癖に片手斧のように振り回している事くらいだろうか。

 

 錆びきった悠真の剣ではその身体に傷一つも付かなかった。しかし、悠真の変哲もない剣と似た変哲もない斧なのにも関わらず、《マスターゴブリン》は「食らったら死ぬ」を直感的に感じていた。攻守交替とでも言わんばかりに。


「ほら、隙ができた」

「ウグァ!!!」


 その回避の硬直時間を見逃さなかったサモンは、空振りの斧をそのまま投げ捨てて拳を腹に叩き込む。

 鳩尾に命中した拳はそのまま深緑色の巨体を吹き飛ばし、50メートル程度吹き飛ばしてしまう。まるで、悠真を吹き飛ばした《マスターゴブリン》のように。


「チッ、思ったより硬ぇなコイツ」


 そう悪態をつきながら、自分の握力を確かめるかのように拳を何度か固く握る。だが涼しい表情だけは変わらない。


「仕留めるつもりだったんだがな。今まで見てきた《マスターゴブリン》の中で1番強いなお前」

「ウグァ……ハァ……ハァ……ニンゲン……!!」


 《マスターゴブリン》はサモンと対称的に、屈辱に顔を歪ませながら立ち上がると、凄まじい形相でサモンを睨みつける。殴られた腹は内出血したのか赤黒く変色し、血反吐を吐きながら再び構える。


「ニンゲン……!!オマエタチ…………!!オレタチカラ、シアワセ、ウバウ!!ダカラコロス!!!」

「へえ?」

「オレタチ!!フツウニイキテル!!!ナゼコロサレル!?!?」

「普通、ね」


 《マスターゴブリン》が必死の表情で怒号を上げると、サモンの顔が余裕綽々の表情から笑みが消え、真顔になっていく。


「善いゴブリンってのは人に見つからず、人から何も奪わねえゴブリンだ。お前達の討伐依頼が存在する以上、お前達はもう善いゴブリンじゃねえよ」

「オレタチ!!ナニモシナカッタ!!」

「そんな事はねえだろうが。人を襲った、食料も奪った、それで何もしなかった訳ねえだろうが」


 《マスターゴブリン》の訴えに、サモンは正論で返す。

 実際、あの洞窟の中では人の死体があり、女性は襲われ、食料庫には略奪されたであろう貨物がそのまま野晒しで置かれていた。何もしていなかったとは到底言えない。ただ、彼らにとっては略奪こそが当然の習性であり、そこに罪悪感などないのだ。



「そもそもウィルの受けた依頼はエルルシャの女性失踪の捜索だ。そしてその捜索箇所がお前達の住処だった。それはつまり、お前達が女性を略奪したからこの件が始まったに過ぎない。違うか?」

「オレタチ!フツウダッタ!!ソレガイツモドオリダッタ!!」


 サモンは溜息をつく。仮に《マスターゴブリン》が何を言おうとも、結局は価値観が異なるのだ。意思疎通は叶っても、所詮ゴブリンにとっての女性は孕袋という観念があり、それが当然で育つのだから。

 悪びれもなく答えるゴブリンの頭目に、甚だ苛立たしくなる。


「お前は言語より先に人間の倫理を学ぶべきだったな」

「ウガァアアア!!!」


 会話の決裂と同時に《マスターゴブリン》が大きく拳を繰り出す。サモンはそれを片手でいとも簡単に流し、薙ぎ払い、いなす。

 その勢いで転倒した巨体を全力で蹴り上げ、浮いた胴体に再び拳を突き出すと、再びその巨体が数十メートル吹き飛ばされる。


「……マケナイ!!」


 吹き飛ばされた《マスターゴブリン》は、負けじと飛ばされた先で体を回転させ、壁を使って水泳のターンのように逆方向──サモンの方向へ飛び出す。

 悠真と戦った時とは大きく異なり、まるでパチンコのピンボールのように跳んで蹴りを放つ。そのスピードはサモンでも不意にガードを選択させられる威力だった。


「けど、相手が悪かったな」

「ヌォ!?グァァアア!!!!!」


 腕でガードしたサモンはそのまま蹴りを受け止め、そして足を掴んで地面に叩きつける。奇しくも《マスターゴブリン》が悠真を叩きつけたのと同じような構図で。


 《マスターゴブリン》の図体は3メートルあるかないか程度であり、サモンよりも身体が2回りほど大きい上に筋骨隆々とした体躯をしているため、歩く度に地響きのような音が響くほど重い。


 しかしサモンはまるで赤子に「高い高い」をするかの如く、あるいは片手用の道具を使用するかのように、汗一つかくことなく澄んだ顔で《マスターゴブリン》を投げ飛ばしたり、叩き付けたりしている。

 これで魔術が使えないというのだから、ここまで来るとサモンは人間の優占種(ドミナンス)のように見えてくる。


「……グフゥ……ウグググ」

「おっと」


 巨体が叩き付けられ、そして投げ飛ばされた先には、偶然先程サモンが投げ捨てた斧が木に突き刺さっていた。

 これを見逃さなかった深緑色の巨体はこれを引っこ抜き、そして自分の武器のように構える。


「ウォオオオオオ!!!!!」


 サモンめがけて振り下ろされた斧は、そのままサモンに直撃し土煙を大きく巻き上げた。瞬間、鮮血が地面に撒き散らされる。


 しかし、斬られたのは《マスターゴブリン》だった。


「ウゴァアアアア!!!!!」

「これでハイベルの借りは返したぜ、デカブツ」


 サモンはいつの間にか、そもそもどこに隠し持っていたのか、鞘から銀製の片手剣を抜き、そのままマスターゴブリンが斧を持っていた左手を斬り落としていた。

 断末魔を上げながら悶える怪物に、まるで蔑むような目を向けながら。


「居合って奴だ。俺の舎弟の左腕の例だからありがたく受け取れよ」

「フゥーッ……フゥーッ……」


 先程の尋常じゃない血溜まりの上で臥していたハイベルは、左腕がもげかかっていた。エルルシャには冒険者は多いが、皮1枚繋がっている程度の腕を繋げられる魔術を行使できる医者はいない。応急処置程度なら心当たりがいるし、医者自体は伝手もあるのだが、高度な回復魔術を行使できる人材は貴重で、基本的には王都に集まってしまう。


 つまり、下手をすればハイベルは冒険者としての生命はもう終わってしまうという事だ。左腕だったから利き手では無いものの、金ランク冒険者がほぼ片腕で冒険者業をやっていけるほど甘い世の中では無いという事だ。それにあのような酷い怪我をしている事から後遺症も考えられる。


 考えれば考えるほど、この怪物に対する殺意が増していく。


「ウガァアアア!!!」


 《マスターゴブリン》は余った右腕で地面に向かって叩き付けを行おうとするが、それを見越してサモンは右腕も切り刻む。まるで胡瓜を輪切りにしていくように二の腕あたりまで切り刻むと、緑色の巨躯が大きく仰け反り、声にもならないような断末魔を放つ。


「さて、終わりだな」


 《マスターゴブリン》に1歩ずつ近付いてくるサモンはまさに、死へのカウントダウンだった。

 ただでさえ両腕を切り落とされているのだ。武器を持とうが持たなかろうが、文字通り手が出せない上に打つ手もない。


 滝のように噴き出すドス黒い血液が、《マスターゴブリン》の残り少ない命の残量を着々と削っていく。

 それでも《マスターゴブリン》は脚だけで抗おうと気合いで立ち上がり、サモンに向かって蹴りを放つ。


「ここまで来ると尊敬するぜ、化け物」

「ゴァッ!!」


 それでも淡々と、サモンは飛び蹴りで襲いかかってきた《マスターゴブリン》の脚を薙ぎ払い、ただの拳骨を胴に当てて撃ち落とした。だが、拳骨の反動で地面に打ち付けられた緑色の全身は地面にめり込み、小規模のクレーターを作り上げる。


「こんなになってもまだ抗おうとするその姿勢は、素直に敬意を評する」

「ドウホウ…………カオムケ…………デキナイ……!!」


 どれほど叩きのめされ、腕を切り落とされ、殴られ、地面に打ち付けられても、《マスターゴブリン》の目が死ぬことは無かった。

 それは、同胞に対する意地か、それとも種族を代表する責任感か、常に本能のまま抗い続けている。


「シンダナカマ…………ムクイル…………!!」

「なんだよ、漢してんじゃねえかよ」


 それは死した仲間に報いるために、その残った脚すらも振るわなければ気が済まない、そういう心境に苛まれているのだろう。

 だが、体力を消費し切った《マスターゴブリン》は、血を流しすぎたのだろうか、もう動ける気配もなく、濃い緑色をする肌からは生気がもう殆ど見受けられない。血色を失っているのは目に見えてわかる。


 どれだけ足掻いても、サモンがその全てを軽々と捩じ伏せる。意図してか、はたまた意図せずか、先程手も足も出なかった悠真と《マスターゴブリン》と同じような構図が描かれていた。


「お前の人生……魔物生か?……は知らん。仲間を思う気持ちは尊いが、それがお前を生かす理由にはならない。けど、もしお前が人間で、倫理を学んで悪さもしてなかったのなら、俺達はマブダチになれたのかもな」

「マブダチ…………?」

「あぁもうめんどくせえな!友達って事だよ!!同胞は知ってんのになんでマブダチは知らねえんだよお前は!」


 そういうサモンは少し照れ臭そうに、そして寂しさと名残惜しさが表情に残っていた。


「お前は俺の仲間を殺そうとした。それは死んでも許さねえ。けど、お前の漢気には感動した。最期に一言だけ聞いといてやる。言い残したことはあるか?」

「…………ツギハ、ヒトニ、ナリタイ」

「そうかい。……なれるといいな」


 そう言ってサモンは、残念そうに《マスターゴブリン》の首を刎ねた。


────────────────────────


「─────??」

「────!!」


 初めはただ、生きているだけで十分だった。

 命があるだけで良かった。そこら辺で木の実を取り、魔物を狩り、そして仲間と暮らす。

 それだけで、十分だった。


 人には分からないであろう言語で、以心伝心だった。仲間はみな自分と似たような存在。淋しいが、数人程度でも仲良く、時に喧嘩し、そして一緒に同じ時を生きた。


「──!!────!!」

「いやっ!いやぁっ!!!離してよっ!!!!」


 ある日、仲間がニンゲンのオンナというものを連れてきた。獲物を捕らえる用の筋弛緩毒を塗りつけた矢に偶然当ってしまったらしい。初めは逃がしてやろうと考えた。生きている人間は面倒臭い、恨みを買うのは真っ平御免だからだ。しかし、仲間が『使う』と言い始めた。

 そこからがきっと、地獄の始まりだったのかもしれない。


 そこからのことはあまり覚えていない。気付いたら仲間は増えていて、ニンゲンのオンナの腹は大きく膨らんでいて、そしてニンゲンのオンナは何度も沢山連れ込まれるようになって、それを繰り返されて。

 瞬きをした一瞬で環境が大きく変わってしまったような、そんな感覚。


 そしてまたある日、ニンゲンのオンナが死んだ。そして初めてニンゲンを喰ってから、自分が大きくなったと感じるようになった。死体しか喰ったことは無かったが、それでも身体に力が満ち溢れるような感覚があった。


 時を数えるのも億劫になった頃、3人のニンゲンが巣穴に入ってきた。銀色のキラキラした鎧を身に付けた剣を構えるオトコ、魔法を使って火を放ったオンナ、そして拳を握り締めながら殴りかかってきたオトコだった。


「ウィル!!こいつは流石にやべえ!!ギルドに報告を!!」

「分かっている!ローザ!!早く行け!!俺とアルスで道を空ける!!」

「……でも!!」


 いつからだろうか、ニンゲンという生き物を喰ってからか、フィルターが外れるように、モヤがかっていた人の声が判別できるようになった。


「ニンゲン…………」


 声を発した途端、ニンゲンの顔が蒼白していく様は少しだけ面白かった。しかし、それ以上に目の前で繰り広げられた死闘が気に食わなかった。

 今斬られたのは一緒にご飯を食べた仲間だ。今腹をぶち抜かれたのは昔からよく狩りに行っていた仲間だ。

 仲間が死ぬのは、苦しかった。


「ナカマ…………マモル!!!」

「ローザ!!クソっ!!!」


 魔術を起動しようとしたニンゲンのオンナを狙って、殴りかかろうとしたが、銀色のキラキラしたオトコが前に立って邪魔をしてくる。鬱陶しいのでそのまま全力で腕を振るうと、ニンゲンのオトコは簡単に吹き飛び、壁に赤いシミを作った。


「いやぁああああ!!!!!!」

「ウィル!!?…………てめぇ!!!」


 拳を構える男も鬱陶しかったので、同じように拳で太刀打ちしたが、豆を潰すように簡単に潰れてしまった。

 ニンゲンの小水の匂いが漂うと思った時、オンナが腰を抜かしたのか座り込んで動けなくなっているのを見つけた。


 そこからの記憶はない。そのオンナがどこへ行ったのかも何をしたのかも覚えていない。ただ、ニンゲンは脆いという意識が芽生えた。


「さあこいよ小鬼(カス)共!!!」


 そのしばらく後、金色のピカピカした喧しいオトコが、気持ちの悪いくらいの魔力を放ちながら目の前に現れて、仲間を、子供を全員殺された。

 怒りのあまりかなり暴れてしまったが、銀色のオトコや拳のオトコよりもしぶとかった。腕を千切り、散々痛めつけても立ち向かおうとする執念があった。ニンゲンは脆いが、この執念は強いのかもしれないと感じた。


 そして、なぜ自分は人に殺されなければならないのか、知りたかった。なぜ自分は人じゃないのか、仲間も自分も、似たような種族なのに人に忌避され、殺されなければならないのか。


 ──ただ人として産まれたかった。人として、産まれてみたかった。


────────────────────────

「お前達のやってきたことは許さねえ。けど、お前らの来世が幸せであることくらいは、俺からも祈っておくよ」


 《マスターゴブリン》の亡骸の前でサモンは合掌する。

 悪い奴……ではあったが、価値観の違う世界で生きた異なる種族なのだ、彼等の中では英雄だったのだろう。だからこそ、自分にも多少なりとも罪悪感はあるし、同様に正義感もある。

 

 もし人間だったら、そして悪事を働いていなかったら友達になりたかった、これは紛れもない本心だった。


「思ったより手間取っちまった、兄ちゃんのところに行かねえと」


 元々悠真が瀕死の状態なので迅速に片付けなければならなかったが、言語を話せるほどの知能を持ち、想像以上に行動を先読みされ、そして執念深く最期まで戦い抜く《マスターゴブリン》には思っていたよりも手こずらされた。


 小走りで悠真の元へ戻ると、いつの間にか洞窟から出てきたシェアラが回復魔術【治癒(ヒール)】でその介抱をしていた。

とはいえ、万能薬(エリクサー)は自分しか持っていないので、慌てて意識のない悠真の口元に無理矢理捩じ込む。飲み込まずとも効果は出るので、とりあえずはこれで一安心だろう。


「嬢ちゃんがここに居るってことは、ハイベルはもう大丈夫だったのか?」

「はい、もう自力で歩ける、と言ってましたし、洞窟の入口の脇で保護した女性達と一緒に居ます」

「そうかい。……今回は悪かったな、俺の判断ミスだった」

「いえ!!残るって言ったのは私達ですし、それに……」


 シェアラは死んだように眠る悠真に視線を向ける。腕はボロボロ、顔もグシャグシャ、無事な所などせいぜい脚くらいしかないような悠真は、激闘をものともしなかったかのような、どこか安心したような眠り方をしていた。


「そうだな、謝らなきゃいけねえのは兄ちゃんに、か」


 シェアラは静かに頷いた。

 恐らく、悠真がいなければシェアラは死んでいたか、ハイベルと同じように瀕死になっていたかもしれない。ギルドの人達が来て、もっと被害が拡大して言ったかもしれない。そんなifの世界を辛うじて、まさに文字通り命を懸けて繋ぎ止めていたのは、紛れもなく悠真だった。


 その恩義に関しては、サモンも同じように感じ取っていた。そしてそれと同じくらい、あの《マスターゴブリン》を相手にサシで戦って生き残った白ランクという、まるで奇跡かのような所業を成し遂げた悠真に興味を持つ。


「こんな事言うのもなんだけどよ、兄ちゃん良く生きてたよな」

「本当ですよ、ちょっと前なんか黒狼の幼体相手に尻餅ついてた癖に」

「ハッハッハ!!!」


 サモンが大声で笑うと、シェアラも釣られて思い出し笑いする。あの時は悠真が食われかけて、シェアラが助けて。


「……今度は私が助けられちゃったなぁ」

「命懸けで守ってくれてたんだ、そういう人は大切にしろよ?彼女なんだろ?」

「え、いや全く違いますけど」

「えぇ……?」

「でも、大切なパーティメンバーです。……きっと」

「最近の若い女の子ってなんか冷たくない……?」


 サモンの困惑するような声にシェアラは笑うと、ギルドから派遣された職員が近付いてくるのに気付く。


「サモンさん、負傷者と被害者の保護は完了しました……が、ここにも負傷者が?」

「あぁ。俺が巻き込んじまった。万能薬は飲ませてある。連れてくからとりあえず俺達もそっちへ向かうよ」

「了解致しました。護衛、感謝します。……あとヤッコブさん来てますよ」

「……………………………………………………コロサレル」


 この後、悠真を巻き込んだ事についてヤッコブに激昂され、ボコボコにされたサモンが居た、とギルドに報告があったらしい。

誤字脱字設定のミスその他諸々ございましたら報告お願いします。


ハイベルの仇は意識してやっていましたが、悠真にやった事をやり返していたのは完全に奇跡です。サモンはそもそも悠真とマスゴブの戦いは最後のトドメのとこしか見てません。


知り合いの応急処置ができる人→シェアラと今後出てくる人

知り合いの医者→遺憾ながらヤッコブ


サモンがなんでこんな沢山武器持ってんのかも今後分かると思います。

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