暴動!?
「厨房はこちらになります。足りないものとかがあればこちらから使っても構いませんので」
マルテさんは厨房の調理台の下のスペースに目を向けると、調味料の入った壺や鼠などに食べられないように、籠の中に入れられた野菜たちがあった。
おじさんたちが持ってきた食材や調味料でも十分かもしれない……といいたいところだけど。元日本人としては醤油などの和系の調味料はラインナップが欲しいと思っていた。
味噌や醤油は孤児院の食事でも使われているようで、調理台下に陳列されていて安心した
。
「じゃあ、この辺の調味料を使わせてもらっても?」
「ええ。どうぞ」
「ミリアー……ミアちゃん、今からなにを作るんだい?」
作る物に興味が尽きないのか、好奇心的な視線を向けるおじさんたち。炊き出しといってもお腹いっぱい味わえて量産できるものがいい。
オーソドックスだが、巨大オムレツとご飯と味噌汁を作るというと、興味深そうに頷いた。
和食系はまだまだマイナーなようなので、気になるようだ。
「お米は腹もちがいいですし、スープの水分で膨張するので満腹感が得られるかと思って」
「料理をするのにそこまで考えるんだねぇ……勉強になるよ」
孤児院の男性職員にお願いして馬車からお米の袋やらを運んでもらう。
100人以上の子供の食材を賄うには難しいかもしれないが、工夫をすれば、皆で楽しめるご飯に早変わりだ。
小麦もあったが今回は出番はなさそうだ。これは孤児院の皆の次のご飯にでも回してもらおう。
袖を捲り、マルテさんに貸してもらったエプロンを装備。アンもメリーもやる気だ。
さて……ご飯を……。
「た、大変だ~~~~!!」
遠くから子供の慌てた声が聞こえた。12歳くらいだろうか?孤児院の子供たちの中でもお兄さんっぽい姿だ。
「ヴィルッ!廊下を走るなんてはしたないですよ!それに客人がいるのに、そんなお行儀悪くして……」
「お小言はあとにして!大変なんだ!スラム街の連中が今日の炊き出しを聞きつけて入口前で暴動が起きてるんだ!」
「……まぁ、それは困ったものですね。お帰り頂くにも彼らは納得しないでしょうし。子供相手に荒事を立てるわけにも行きませんし」
「そう言ってる場合かよ!やつら今にも門をぶち破りそうな勢いなんだ!」
慌てたようすに首を傾げ、ミリアーナは隣にいるおばさんに耳打ちをした。
「あの、なにがあったのですか?」
「この孤児院の裏から王都の商業街の路地にかけてはスラム街でね。ここの子供たちと同様、貧しくて食うもんに困ってるのさ。孤児院の子供たちは身寄りがないからここに保護してもらえるけど、スラム街の子供たちは少なくとも親がいたり、面倒を見てくれる人が書類上はいるから、孤児院に保護して貰えない。こうして孤児院に運ばれてくる食料を狙う子も多いってわけだ」
厄介なことが起きたとため息を吐くおばさん。
「無暗に追い払うこともできなければ、施しを与えれば行動も過激化しますものね。食料を与えれば同じ行動を起こせば次も食料を貰える。……それを繰り返せばただでさえ逼迫している孤児院の食料事情も悪くなる一方です」
「困ったもんだねぇ……」
マルテさんたちが職員たちを呼んで暴動を起こそうとするスラム街の子供たちへの対策を講じる。孤児院に受け入れるわけにもいかない、と頭を抱えていた。
「スラム街の子供たちって、食料が運ばれる度に暴動を起こすんですの?」
「……そういえば、普通に食料を仕入れる時は来ませんわね。野人の酒場さんのような善良な市民からの食料の寄付の時に決まってやってきます」
思い立ったことがあったようだ。つまるところ、自分たちも孤児院の子供たちと立場は変わらないのに、毎日食事にありつけ、食料の寄付をしてもらえることに不満を持っているのだろう。
せめて食料の寄付分は分けて欲しい……ということなのだろうか。
これはスラム街の子供たちに聞いてみないとわからない。
「頭ごなしに追い出しても納得しないでしょう。一度スラム街の子供たちの話も聞きましょう。よろしいですか?」
「ええ。そうですわね。では、子供たちを一時的に……」
「いいえ、相手は食料の為に暴力で解決をしようとする輩。数をいれては子供たちに危害が及びかねません。話ができそうな数名の子をなかにいれて事情を聞きましょう」
「ミアさんは聡明ですのね。……わかりました。そのように手配をします」




