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転生嫌われ令嬢の幸せ漢飯(日常)  作者: 赤羽夕夜
深夜の秘密食堂(15歳)編
7/90

⑦見つかってしまいました......

「ミリアーナ、最近食欲がないようですね。どこか体調でも悪いのですか?」

「い......いえ。お母様、ミリアーナは元気ですわ」

「そう?育ち盛りなのだから食べなければだめよ?......食べすぎもどうかと思いますけど」

学園は2週間ほどの冬休みを迎え、2日目。最近夜食会のために食事を制限していることにとうとうお母様のツッコミがはいったことにどきりと胸が鳴る。

食事を制限している理由がやましいことなので、お母様が本当に私の体調の身を案じていることも申し訳なさ。お母様お怒り案件である夜食会を開いていることがバレたらどうしようという不安から手に嫌な汗がにじむ。

「お......おほほほ......気を付けます」

上座に座るお父様は平然とワインの香りを楽しんでいるが、口元はわずかに震えている。

お母様はというと「そう」と淡々と返事をして、メインディッシュである鴨のステーキにナイフを入れた。

......隠し事してごめんなさいお母様。でも私にはこの15年の生の中で夜食会が一番の楽しみなのです!

私は不安の表情をお母様に悟られないように、ステーキのソースをパンにしみこませたものを口に含み、口から出そうな不安ごと咀嚼した。



――夜食会。


「みんな揃ってる?」

「はい、今日の参加者皆揃っております」

厨房の入口をくぐると見張りのジョンが返事を返す。

ジョンが視線を動かした先はドリーを含む使用人が10人とお父様がいた。

「あれ、アンとメリーは?」

「あのふたりなら今夜から実家へ帰省してます」

「そうなのね!......ああ、だったら牡蠣のオイル漬けできているからもっていってもらえっばよかった」

「ミリアーナ様なんですかい......?そのオイル漬けとやらは!」

「ドリー、食いつき方ちょっと怖い......」

「す、すいません」

「それよりも、ミリアーナ。今日はどんなものを作るんだい?」

「よくぞ聞いてくれましたお父様。今日はやっときた冬休み最初の夜食会。......そして、その冬休みの最初の夜食会にふさわしい料理を作ります......!ドリー、お願いしていたものは仕入れました?」

「は、はい!シレーヌ帝国からばっちり仕入れてます」

ドリーは調理台の下にある麻袋を取り出した。その中に入っていいるのは精米されたお米だ。

このお米は隣国であり友好国であるシレーヌ帝国の主食となっている、シレーヌ帝国ではなじみ深い食材。私の生前でもよく食していたものだ。

この国ではパンが主食であり、米は栽培しはじめたばかりでまだそんなに流通がないことから、わざわざ取り寄せてもらったのだ。

今日はこのお米を使った簡単で美味しいものを作ろうかと思う。

手を洗い清潔な布で拭いて米を両手で持ち上げ、固い米粒のパラパラ感を楽しみ、いざ、容器に移そうとした――だが。

「ミリアーナ!そこで何をしているのです!」

「――お、お母様!」

ぱちんとなにかをはじいた音が響いた瞬間、おおきな光の玉が厨房の天井に止まる。薄暗かった厨房が明るく照らされる。

そして、入口を見ると鬼の形相をしたお母様が仁王立ちしていた。

「あなたが警戒しながら部屋を出て行ったので、後をつけてみたら......!こんなところで食材をいじっているなんてはしたない。それにあなたたちも......」

お母様の怒りに使用人一同畏縮する。あのポーカーフェイスのジョンでさえ表情を崩している。

お父様といえば恰好悪く、まるで大きな地震がきたといいたげに調理台の下に隠れた。

......お尻見えているけど。

「その後ろ姿......、まさかあなたまで!そんなところに出ていらっしゃい!」

「シャンデル......。すまない、だがミリアーナを怒らないでくれ。これは私も許可したことなんだ」

お父様は覇気はないがあるがやさしさがこもる声音でお母様を説得する。その中には私を守ってくれている言葉まで加えてくれている。

違う、これはもともと私のせいなのに。

「お母様、お父様は悪くありません。この状況は私が望んで実現したものなのです。だから......」

「ジョン、ドリー、他の使用人たちも今日は自分の自室に戻りなさい。私はミリアーナとヴェスターに話があります」

お母様は使用人たちを部屋に返すと、私たちについてくるように促し、家族会議をするべく広間の方に向かった。



夜食会の存在がバレてしまった以降、お母様から「夜食会禁止命令」が下った。

私は公爵令嬢、そして暫定的ではあるものの未来の王妃候補である。そしてお父様はアーテル家当主。そして使用人たちはなんの地位ももたない平民だ。

そのことから身分が違うもの同士が厨房のような薄暗い場所であまつさえ同じ飯をつつきあっていることが知られれば沽券にかかわる。

秩序を重んじるお母様のことだ。当然の判断といえばそれまでだが、私にとっては少し納得がいかない話だ。

たしかにこの夜食会を公におこなっていて、他の人の目の届くところでしているのなら話がわかる。だが、今回は人目を避けてしていることなのに。

そう説明してもお母様は頭を縦には振ってくれない。

「たしかにあなたはいいかもしれません。では仮にこの夜食会が他の使用人を伝い世間に広まってしまえば?あなただけでなく、使用人はもちろんお父様の品位まで疑われるのですよ」

「......でも」

お母様のいうことも一理ある。けれどこの夜食会はほんとうにお母様の言う通り、品位を疑われる行為なのだろうか。

そんなにお父様やジョン、ドリーやアン、メリーたちと夜食会をするのは悪いことなの......?

「でも、ではありません。この夜食会は今日限りで終わりです。まったく、こんなことしていたから最近食事を控えていたのね」

「待って、お母様!私の話も聞いてください......!」

お母様はこれ以上私の話を聞きたくないと言いた気に眉を吊り上げ、私から背を背けた。

私の制止の声も聞いてくれず、自分の部屋へと戻っていった。

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