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転生嫌われ令嬢の幸せ漢飯(日常)  作者: 赤羽夕夜
婚約破棄編

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久しぶりの釣り

学園祭が終わりしばらくたった冬の始まってすぐのある日。


この日は学園の休日。学園祭準備期間中は趣味に打ち込む時間も休む時間もままならなかったので、本当に久々にゆっくりできる。

最近釣りもしてないし、ラーゼン侯爵にもあってない。というかレタが来てから満足に釣りをしてないなと思うと急激に釣りをしたい欲に駆られる。


思い立ったら即行動。新しい1日が始まってまだ間もない。日が昇りかける早朝に目を覚ました私は釣り道具の準備と外行きのドレスに着替え始める。私のベッドの枕元に寝ていたレタは物音で目を覚まし「何をしている」と寝ぼけたトーンを発しで起き上がる。


「久々に釣りをしようかな~って。ここのところ忙しかったし」

「魚を釣りに行くのか!我もいく!」


魚が好物なレタは飛び上がるように起きる。身を数度ブルブルと震わせると軽快な動きでベッドを飛び降りた。私は呼び鈴で当直の使用人を呼ぶと、今日の当直の使用人が静かな動作で扉の向こうから姿を現した。


「急なんだけど、これから釣りに行こうと思うの。お父様たちはまだ寝ているだろうから伝言を頼みます。後は護衛と馬車、バケツの用意を」

「かしこまりました」

「もしクリフォード様が起きられたら適当に誤魔化しといてちょうだい」


いそいそと外に出る準備をして馬車で王国有数の釣りスポットのコニーの湖に向かう。レタは「魚が連れたらまずは我に食べさせろ」と食い意地を張り、舌なめずりをした。



「釣れないな~……」

早朝から屋敷をでてコニーの湖の湖畔に座って釣り糸を垂らして2時間。水面に浮かぶルアーはぴくりとも動かない。ここまで獲物がかからないのは久々だ。


レタは私の脇でとぐろを巻いて寝ている。木陰で隠れて護衛をしている者からは微かにあくびをする声が聞こえた。ささやかだが、木々や草木がさわさわと揺れる音しか聞こえないので、どうしてもそういった声は聞こえてくるのだ。


久しぶりだし、そろそろ潮時かな。諦めて釣り糸を手繰り寄せようとしいた時。

「おや、ミリアーナちゃんじゃない。久しぶりじゃのう」

「ラーゼン侯爵、お久しぶりです。侯爵も釣りに?」


私の肩を叩き、声をかけてくれたのは釣り仲間であり、ヨシュア様のおじい様でもあるラーゼン侯爵だった。ラーゼン侯爵は「そうなんじゃ。奇遇じゃのう」と言って顎鬚を触る仕草を見せた。


「そういえば、先週の学園祭いかせてもらったぞ。まぁミリアーナちゃんは実行委員とかで忙しくて会えんかったがの」

「それは……大変失礼しました。うちの出し物は楽しんでくれましたか?」

「もちろんじゃ!あのクレープ……甘いのもしょっぱいのもなかなか上品な味わいでうまかったぞ。下町の料理とは思えんくらいじゃったわい。……あのクレープ、また作ってくれんかのぅ?」

「もちろんですわ。機会があれば今度は別バージョンのクレープを作りましょう」

【その時は我も呼べよ?】


レタは顔を重たげに上げて私を一瞥する。レタの言葉に同意として頷くと満足そうにまた眠りにつく。ラーゼン侯爵は……。

「それがヨシュアが言っていた神獣か。神獣自体人に懐かないと聞くんじゃが……これはまた不思議じゃな」

「確かに人が得意そうな性格ではないとは思いますね。気にせず人前にも一緒についていきますけれど……」

「ほほほ、それだけミリアーナちゃんのことが好きなんじゃな」

【うるさいぞ、老い耄れ。契約として身辺を守らなければいけないからついて行くだけだ】

「嘘つきなさい。行きたくないときは家でぐーたらしてるじゃない」

【魔力を貯めるために休息をとっているのだ!王国内は治安がいいし過剰に護衛する必要がないだけだ】

「面白いのぅ」


レタとの言い合いをほほえましそうに見守る侯爵。なんかおじいちゃんに見守られているようでこそばゆいな。レタはふて寝をして、私は釣り針に新しい餌を付けてもう一度湖に糸を投げ入れる。


ラーゼン侯爵も同じように釣り糸を湖に投げた。



「こんなところにいたのか。使用人に聞いてきてみれば、おや?あなたは……」

「これはシレーヌ帝国の若君じゃないか。おはようじゃな」

「ラーゼン侯爵殿。久しぶりだな。……ミリアーナと一緒に釣りか。調子はどうだ?」

「みての通りじゃ。今日はあんまり釣れんくての~」


川辺にきて体感時間的に3時間くらい経過した頃。やっと起きたのだろう。クリフォード様は護衛を2人引き連れてやってきた。


使用人たちは誤魔化しておいてくれたのだろうが、私の行動は把握済みだったのだろう。

ラーゼン侯爵に挨拶を済ませると、クリフォード様は「釣れたには釣れたではないか」と私の3匹の魚が入っているバケツを一瞥した。


「でも、今日は釣れない方ですね。いつもなら粘ってもこの倍は釣れるのに」

久しぶりの釣りなのに、この結果はなんだか悔しい。せっかく新鮮な魚であれこれ作りたかった……。


肩を落としていると、クリフォード様は肩に手を置いて……。

「そういう日もあるのだろう。……せっかくの休みなのだ。そろそろ切り上げて屋敷でゆっくりしないか?」

「……そうですね。今日は魚もいなさそうですし。……仕方ありません」

「ミリアーナちゃん帰るかい?たしかに、これ以上粘っても釣れんしなぁ。儂も帰るか……よっこいしょ」

「ラーゼン侯爵、よければもらってください」

ラーゼン侯爵も釣り道具を片付けて立ち上がる。私はバケツに入っている魚をそっくりそのまま侯爵へ渡す。手ぶらで帰るのも寂しいだろうし、ラーゼン侯爵に食べてもらった方がいいだろう。


「いいのかい?これはミリアーナちゃんの獲物なんじゃぞ?」

「いつも話相手になっていただいている、ささやかなお礼です。それにうちは人数が多いので、今回釣った魚の数では、頭数足りないですし」

【おい、ミリアーナ!他人に渡すなら我によこ……へぶッ】


レタが食い意地を張って余計なことを言いそうなので、鼻を押さえないように、口元だけを押さえる。むぐぐッ、と声が漏れているが気にしない。


「そうじゃ!だったら、今から儂の屋敷に来んか?身の多い魚じゃし、この魚を使ってなにか作ってくれ」

「え......?まぁ、たしかに、魚の個数にこだわらなければここにいる人たちの分くらいのものは作れそうですけど……。私は構いませんが、お邪魔じゃありませんか?」

「ミリアーナちゃんは儂の娘……いや、孫のようなものじゃから全然邪魔じゃないよ。それにこういう口実がないと儂の屋敷に全然遊びにきてくれんじゃろ?クリフォード様も、レタもいかがかの?」

「まぁ……。ふふ、ラーゼン侯爵ったら。私はぜひお招きに預かりたいです」

「噂に名高いラーゼン侯爵の直々の誘いだ。断るわけないだろう」

【他人の屋敷に行くのは気が向かんが……、ま、魚が食えるならいってやろう】


皆の意見が一致して、私たちはラーゼン侯爵の屋敷に向かう。連れて来た護衛の1人にお父様たちへの伝言を頼んでおいた。


そして、伝言を頼んだ後、ラーゼン侯爵の屋敷に向かい、釣った魚でフィッシュパイを振舞う。


久しぶりにリフレッシュできた時間だったし、ラーゼン侯爵とより仲良くなれたので充実した朝を送れたのはここ最近の出来事でいい思い出となった。

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