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転生嫌われ令嬢の幸せ漢飯(日常)  作者: 赤羽夕夜
深夜の秘密食堂(15歳)編
5/90

⑤あったかいもの、いただきます。

――深夜の集い。

アーテル家一部で通例行事になりつつある、深夜に行われる秘密の集い。

日程は不定期ではあるが、おおよそ週3日は行われており、主な参加者私、お父様、執事のジョンの3人だ。

そんなこんなで15歳の冬。記憶を取り戻して4か月過ぎた頃、新たに共犯者は増えに増えて、この3人以外にも夜勤の使用人も巻き込み、「夜食会」となずけられたこの集いの参加者は全体的に15人ほどに及んでいた。


そんなある日の話。



「うーさむい。やっぱ冬の風は身に染みるわね......」

乾燥した寒い風が肌に当たり、制服のスカートの中にまで風が入り込む。

太ももは寒さでひりひりと痛む学園の帰り道。こんな寒さの中歩くのもおっくうになるし、馬車が止めてある場所までの足取りも重くなる。

あー、こんな寒い日こそ温かいものが食べたい。

家で出される料理はどれも繊細な味付け、豪華で丁寧な出来、いかにも高級料理って感じなものが多い。

美味しいのだが、だいたい同じような料理なので飽きて来たし、なにより冷たいものが多いので温度で得られる満足感がないのだ。

とくにこんな寒い日にはよりその不満足感があらわになってしまう。


――よし、こんな日こそあれをしよう。

今日はお父様もジョンも休暇日だ。呼べば2人とも参加してくれるだろう。

そうと決まれば馬車に乗り込み家に急いで帰宅した。



今日はあの料理が食べたい気分だったので事前にジョンとシェフのドリーに伝えて私の分の晩御飯は普段より少なくしてもらった。

実はドリーも2か月前から夜食会の参加者なのだ。

共犯者である彼に協力してもらい、申し訳なく思いながらもわくわく、どきどき深夜の時間まで肌の手入れやストレッチをして過ごす。



「――ジョン、人払いは済んでいるか」

「もちろんです。奥様対策もぬかりなく」

「そうか、シャンデルもあれはあれで頭が固いところがあるからな......。こんなことがバレた日には......」

「「「「恐ろしいですね」」」」

この場にいる私含めお父様、ジョン、ドリー、そしてメイドのアンとメリーは一同にうなずいた。

ちなみにアンとメリーは双子で私とも年が近く、身の回りの世話をしてくれている。

この中年が多いパーティーの中で年が近い女の子がいるのは私的にも嬉しく思う。

「――よし、今のうちにはじめようじゃないか。我らの夜食会を」



今日作るのはオリーブオイルとにんにくをおいしく食べれる煮込み料理、アヒージョだ。

本当は鍋でもよかったが生憎鍋に仕える調味料(味噌や醤油)がこの家の厨房になかった。これらの調味料はノエル王国の友好国、シレーヌ帝国でよく使われている調味料っぽいので今度お父様にいって仕入れてもらうことにする。

今日作らない料理の話題はこの辺にして、さっそく下処理を終えたえび、タコ、あさりと手頃な大きさに切ったブロッコリー、マッシュルーム、ウインナー、にんにくを用意してもらう。

まずは熱していないフライパンににんにくを入れてから弱火で徐々にフライパンの熱を上げていく。適当なタイミングで唐辛子とオリーブオイルをいれて香りを映していく。

香りを映して火を強くしたら、海鮮、ウインナー、白ワイン、野菜の順にいれて焼き色がつくまで炒める。

アルコールが飛んだら、オリーブオイルを入れて弱火にしてから塩を適量入れ煮込めば完成。


ミリアーナ特製アヒージョの完成だ。

お好みでバケットを油に浸して食べてね★

......と心の中でナレーションをしてみる。


ぐつぐつと煮えているうちに食べないとおいしくないので、調理台にフライパンを置き、全員分の取り皿にアヒージョを入れる。

みんなにいきわたったので、さっそく実食。

「――っ!あっつい......けどうまいですね、これ」

「油ってきいてちょっと抵抗ありましたけど、にんにくの香り、しょっぱさやうまみが凝縮されてます!それにパンにつけたら油まで食べれるって反則じゃないですか?この料理」

「美味しいけど、明日、口臭大丈夫かしら......これ」

「大丈夫ですよ、牛乳を飲めばある程度の口臭は抑えられますから」

「......ジョン、その情報は本当か?」

「それ本当ですぜ、旦那様。儂で実験済みです」

「おお!さすが我が屋敷の一流シェフ。それなら食後に牛乳を用意しよう」

思えばお父様やジョンはともかく、使用人たちとこんなに近い距離でしかも、同じ鍋のご飯をつっつきあうなんて、前世の記憶がよみがえるまでは想像すらしなかった。

公爵と市民という身分的には壁がある私たちだけど、それは世間で決められたものであって、根本は同じ人間で対等であるべき人達だ。

この世界での常識は昔の私の世界の中でも古い考えではある。

だからこそ、せめて業務外ではこうやって身分関係なく意見を言い合え、笑い合える場があってもいいと思える。

世間的にはどうみられるかわからないが人目がないこの時間だけは、ずっと続けばいいな。

緑色に光る油の中に浸ったウインナーを口に含むと肉の甘味と唐辛子の刺激的な辛さ、塩のよい味付けが口の中に広がる。


「ん......、やっぱり大人数で食べる夜食はおいしいですね」

つい漏らしてしまった声に5人の視線が私に集中し、同意するといいたげにうなずいた。


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