2日目夜、再び合流
※神視点
「マリア、どうして一人なのだ?ミリアーナはどうした」
「アシュリー様!お会いしたかったです、……それが」
アシュリーと合流できたマリアは3人の姿を見ると一直線にアシュリーに駆け寄る。
マリア一人の姿にクリフォード、ヨシュアはミリアーナの心配を。アシュリーはどこにいったかと尋ねると、マリアはミリアーナが崖から落ちた経緯を簡単に説明した。
「崖に落ちただと?おまえはどこか怪我はないか?」
ヨシュアは心配そうにマリアの肩を抱き寄せた。
マリアは頬を緩ませ、安堵の一息をついて答える。
「はい、私には傷ひとつありません」
その様子に納得のいかないクリフォード。
何故、クラスメイトが崖から落ちたというのに、こうもあっさりと冷静に対応するのかが謎だった。
怪訝に眉をひそめながらも、クリフォードは緊急札の件を訪ねた。
「緊急用の札はどうした?それで連絡は取ったのか?」
「いえ、それが通信札はミリアーナ様が持っていらっしゃいますので、連絡手段がなくて。どうしたらいいかわからなかったので、とりあえず移動しようと」
困ったような物言いにやはりどこか引っかかる二人をよそに、マリアの心配のみをしているアシュリーは軽快な調子で答える。
「なら合流できて幸運だな。それに、緊急用の札を持っているのなら無事だろう。あとは教師陣がなんとかしてくれるだろうから、おまえは俺の班と一緒に行動しよう」
「おい……正気か?おまえ」
「なんだ、クリフォード」
この辺は麓からも相当の高さがあり、崖があれば人一人落ちて死んでもおかしくない高さだというのに、その危機感のなさとミリアーナに対する「薄情」な態度にクリフォードは呆気にとられるしかなかった。
いくらミリアーナのことを嫌っているからといっても、人一人が死んでもおかしくないトラブルが今現状で起きているのに。
生死の淵をさまよっているかもしれない、もしかしたら死んでいるかもしれない婚約者であるオマエの回答(優しさ)は今無傷でそこにいる女にしか向けられないのかと。
「ミリアーナはおまえの婚約者なのだぞ?何故命の危険があるかもしれない状況でそうも平然としていられる?目の前の女の心配をできる?崖から落ちたというのに、おまえは彼女の怪我の心配のひとつもしないのか……?」
クリフォードは内心、焦燥と苛立ちが入り交じり、感情のこもった眼差しを二人に向けた。
「マリアがこんなに冷静だということは命には別条はないのだろう?な、マリア」
「おまえはその女の態度ひとつでしか物事を判断できないのか?崖から落ちたって、この辺の崖は高さもあって落ちたら命を落としても不思議じゃないんだぞ!?」
「いえ、私ミリアーナ様が落ちたところしか見ていなくて、でも生きているとは思います!ミリアーナ様、しっかりしていますもの!」
平和ボケで済まされる程度の危機感と判断能力、そして自分本位な回答にクリフォードはただ落胆して脱力するしかなかった。
ミリアーナはいつだって自分のために、誰かのためになろうと必死なのに、この二人は今もなお自分のことばかりの心配をして、そのやさしさを少しでもミリアーナに向けられないことに諦めを覚えた。
クリフォードは少なからずとも、ミリアーナに気がある。
面白い女……と言えば、片付くかもしれないが、クリフォードが自分から女性に興味を持つことは初めてで、さまざまな経験をさせてくれた彼女は今やかけがえのない友人になりつつあった。
そしてそれ以上のことも、ここにいる婚約者さえいなければ密かに望んでいるというのに......。
今すぐ探しに行きたい無謀な感情を抑え、ヨシュアに声をかけた。
「ヨシュア……緊急用の札を出せ」
「はい……!」
ミリアーナの心配をしていたヨシュアもクリフォードの意見に同意してうなずく。
ヨシュアは管理していた緊急用の札を出した。
「ちょっと待て、俺たちは明日ゴールについてから探せばよいだろう!ミリアーナが緊急用の札を持っているのなら本人が使っているはずだ。俺たちまで探す必要はない」
「どちらにしろミリアーナが緊急用の札を使っているなら、マリアの単位はつかないだろう。それに人の生死が関わっているのに授業もなにもないし、俺たちもリタイアして探しに行く。もう役立たずは黙っててくれ」
ヨシュアと声をかけると、ヨシュアは緊急用の札に魔力を込めて教師たちとの通信を開いた。




