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転生嫌われ令嬢の幸せ漢飯(日常)  作者: 赤羽夕夜
野外合宿編

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38/90

野外合宿1日目(夕)そして合流

「は~っ......。おなかいっぱい」

時刻は昼過ぎ。

休憩を初めてから1時間が過ぎた頃。十分すぎる時間、休憩したので、重い腰を上げて荷物の片づけに入る。

マリアといえば自分の胃袋を腹の上から満足そうに撫でながら、動く気配を見せない。

「マリアさん、そろそろ出発しますよ」

「ええ、まだ休んでいてもいいじゃないですか。私、眠たくなってきました......」

「そうはいきません。今日中にこの地図にある川の方までいかなければ水も確保できずに夜を迎え、身動きが取れなくなってしまいます」

「水はまだこの水筒の中にあるでしょう?」

マリアは自分の水筒をちゃぽんちゃぽんと軽く振って見せる。たしかにまだ入っているようだが、今は外気の気温が上がり始める初夏。そんな水筒の水だけでは持つかわからない。それに万が一森の中で迷ってしまい、水を確保できない状態になってしまったら、その水が命をつなぐものになる。

「そんな水筒程度じゃ明日の朝まで持つかどうかわかりません。それに今は汗もかきやすい時期なので、水の確保は必要になってきます。それに、川に行って川沿いに歩いていけば今後道に迷いにくくなりますし」

動こうとしないマリアを説得するために動いて川沿いに行くことによるメリットを説明する。マリアは理解していなさそうに眉を下げたが、最終的に「あなたのお願いは聞いて差し上げたのに、私のお願いは聞いてくださらないの?ずるい人ね」といえばしぶしぶ首を縦に振ってこの場から離れる準備を始めた。


「あなたの弁当の残飯はここに置いていきましょう。弁当の残りは野生の動物が食べてくれるでしょうから」

「......はーい」

反発がこもったやる気のなさそうな声につい胸がむかついてしまう。

駄目だ。ここで温度感を上げたらマリアの思うツボ。平常心。穏やかな心で接しなければ......。


「行きましょう。川に着いたら今日はそこで寝床を作りましょう」



空が赤みがかり、空まで伸び切ってそうな背が高い木々の中に陽が身を隠した頃。

やっとの思いで目的地である川についた。

静かに流れる水の音、さわさわと風に揺れる草木の音、そして細かい水の粒子がミストのように涼しさを演出してくれるので私の疲れた心と体を癒す。

もうあたりは暗くなりつつある。急いで火を起こして寝床を作ってしまわねばいけない。

火種となる枝を集めてそれを石で囲った円の中に放り込む。

「マリアさん、手伝ってください」

「ちょ......ちょっと待ってください。ずっと歩きづめで疲れて......」

リュックにもたれかかり座り込むマリア。本当に自分のこと以外なにもしないなと心の中で愚痴を垂れながら魔法で火を起こす。

こういうとき魔法があるって便利だな。原始的な方法で火を起こさずに済むし、労力も使わなくていい。さすが異世界。

そして、火を起こしたら次は寝床作り......といいたいところだがテントってどうやって作ればいいのかわからないので、枯葉を集めてそのうえに布を敷いてクッション代りにして寝ることにした。

幸い雨が降る様子もない。火を絶やさないようにしていればなんとかなるか......。


寝床の準備、火を起こしたら今日の晩御飯だ。

目の前は川なので、魚が取れる。今日はその魚でなにか作ろう。

釣りをするべく、とってきた枝で釣り竿を作りながらマリアの様子を横目で伺うと、小包の中から一枚のクッキーを取り出していた。

「……マリアさん。それはなんですか」

「クッキーです!食べられそうなものがないので今日はこれを食べようかと……」


昼前にいったことが伝わってなかったのか?いや、そんなはずはない……と思いたい。それか注意されたことをすぐに忘れてしまう脳みそをしているのだろうか。

だがもはやマリアの行動を制止をかけるほどの気力も残っていない。私もお腹がすきすぎているのだ。クッキーを食べようとするマリアに言った。

「今から魚を釣って調理しますので、それまで待てませんか?」

「ミリアーナ様ってこういう生活に慣れているのですか!......すごいです!私、小さい頃からずっと習い事ばかりでしたから……。ミリアーナ様の好意は嬉しいのですが、でも、ごめんなさい。私魚嫌いなんです」

習い事なんて私も小さいころからしていたわ。しかもどこか人を馬鹿にしたような言動を含んだ言葉に胃にさらにストレスで鼓動の速さが増した。

駄目だ。飲み込まないと。いくらマリアがお荷物だからといって、なにかしてしまえば余計自分の立場が悪くなる。


人と接することを得意とするマリアと、いかんせん口下手な私。いざトラブルに巻き込まれたときにすべて私に火の粉がかかりかねないのだ。

「ならば勝手になさい」

もうこの人と言葉を交わすのが無理だと感じたので、食料調達をすべくマリアに背を向けた。


釣りを始めて30分くらい経ったころだろうか。川沿いの南方向から複数の足音が聞こえてきた。それは明らかに人間の足音で、こんな時間に人がくるのかと警戒心を抱かざるをえない。

身を隠す場所を探して釣りをやめようとしたが、南の方向によく目を凝らし、耳を済ませれば聞いたことのある声がこだましていた。

「ほら、俺の案内通りにつくことができたぞ」

「予定時間よりだいぶ遅れて、だがな。……おまえに道案内を任せたのが間違いだったから明日はヨシュアに頼ませる」

「……今日はこの辺で休みましょう。俺、なにか使えるものを探してきます......あ」

火から出る煙と私、そしてマリアの姿に気づいたヨシュア様が声を漏らした。続いてクリフォード様が気づいて手を振ってくれて、最後にアシュリーがマリアに向けて声を張った。


「マリア!よかった無事だったのか」

「アシュリー様っ!」

マリアに駆け寄るアシュリーと、親しそうに返事を返すマリア。まるで恋人が再開したような親密そうな再開だ。

二人はまっすぐ私の方へ歩いてきた。

「半日振りだな。調子はどうだ」

「良い様に見えますか?」

「愚問だったな」

腰を掛けていた岩場にクリフォード様も足を川の方に投げ出して座る。

針は一向に魚を捕えない。釣れたのは小魚が2匹。

一人で釣りをしているから、こんなものだろう。

ぽちゃんと魚が対岸の方跳ねた。


「俺たちも今日はもう休む。おまえ飯はまだだろう?手伝うから一緒に食べよう」

「構いませんが……アシュリー様がどう思われるか」

「見ろ、乗り気だ」

クリフォード様はくいっと顎を横に動かしてその方向を見るように促した。

そこには婚約者同士のような親密に抱き合う二人がいた。

「アシュリー様、ミリアーナ様が食料を調達してくれていますので、よろしければご一緒にどうですか?」

「いいのか......?マリアがそういうなら俺は構わないぞ」

おい、お前なにもしていないのになに勝手にさそっちゃってんの?そんな本音がぽろりとこぼれそうになるのを口元を抑えることで阻止する。

なにもしないやつがさも当然のように食糧を分け与えようとするのはいかがなものなのか。

それに言い方も引っかかる。まるで自分にすべて決定権があるかのような身勝手な物言い。彼女は私のことを下に見ているのだろうか。

不満と不安がさらに募るが、結果的にはクリフォード様の提案と似ている内容なので、今回はそれで怒りを飲み込もう。


「わかりました。女手ひとつで調達できる食料も限られますのでお手伝いお願いします」

「ああ。じゃあ俺はなにか食べられそうな野草などを摘んでこよう」

クリフォード様が野草を採集しようと立ち上がると、話を傍らで聞いていたヨシュア様は釣り竿を作りながら言った。

「じゃあ、私はミリアーナ様と魚を釣っておきましょう。大丈夫です。おじい様から釣りの極意を学んでいるので大船に乗った気でいてください」

と対岸の魚が多そうな場所に移動して、各々が食料調達を開始した。

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