野外合宿1日目(昼)
「はぁ…...、はぁっ、ミリアーナ様、少し休みませんか?」
昼前、スタート地点から約1時間ちょっと歩いた頃。
予想の範囲内のトラブルが発生した。
決めたペースに合わせてゴール地点を目指して歩いていた私とマリアだが、突然地面に座りこみ懇願した瞳を私に向けた。
「............まだ疲れるほど歩いていませんよ」
マリアは重いリュックを背負っていることと、元々体力がないのが災いしたのか。疲労により空気中の酸素を取り込むような大きな呼吸を繰り返していた。
この分だと予定していた進行の半分も進めていない。ここで休んでしまったら決められた時間でゴール地点に到着するのも厳しくなるだろう。
女子は男子と条件同じく、班で行動するが、男子より力や体力が少ない分、頑張れば踏破できるようにルートが組まれている。
つまり、男子より女子用のルートの方が安全でゴールまでの距離も比較的短い。
安全なルートといってもこの辺にはまだ水辺もなければ休むのに適した場所もない。
歩けるときに歩いて距離を稼がなければいけないのに、その距離も稼げていない。
休憩するなどもってのほかだ。......と私は思う。
「まだ二人で決めた休憩ポイントまでたどり着いていません。それに予定していた距離の半分ほどしか歩けていないのです。......それでも休みたいの?」
現在の状況だけ伝えて再度休むかどうかの意志をマリアに聞いてみる。
この合宿の目的は精神を鍛えることだ。そしてその一環で自給自足をしながら合宿最終日までにゴールを目指す目的がある。
ここで休めばその予定は狂ってしまうかもしれない。......いや、絶対する。
あと少しでも頑張って歩いてほしい。けどそんな意図などマリアには伝わらなかった。
「はい!......は~。もうヘトヘト。喉も乾いたし、お腹も空いちゃった~」
ついじとっとした目つきでマリアを見てしまう。返事もしていないのだがマリアは歩いていた獣道を少し先に進んだ、少し開けた草木が比較的茂ってなく、土の地面が露呈した場所に荷物を置いて、そこにあった大きい岩の上に座った。
「......楽観的なんだから」
マリアから視線をそらしてあたりを2周半見回して手元の地図を見る。
やはり、今いるところから川はもう少し先の場所にある。
出来れば今日中にこの川にたどり着いて水を補給したいところなのだが、果たして夜になるまでに川にたどり着けるのか。
私とマリアの班なので不安しかなかった。
「マリアさん、川はもう少し先なので、配分を考慮して水分の摂取をしましょう。それとお昼も近いですし、ここで昼食も取りましょう。ただし、おなか一杯たべてしまうと過度な運動ができなくなりますから気を付けて。私は食べられそうなきのみを探します......って」
マリアは私に対する返事を言葉を口にしながらリュックの中から配られた水筒と弁当を取り出す。
それまでは1万歩譲って理解したとしてその弁当箱がまるで運動会を見学にきたおかあさんが持ってくるような大きい重箱だったことに驚いた。
「でっか......。じゃなくてあなたこれ一人で食べるのですか?」
「いえ、ミリアーナ様もご一緒なので、人数分作りました」
正しくは料理人に作らせただろうが、問題はそこではない。この合宿は基本現地調達だ。なのに弁当を食べてしまえば合宿の趣旨から外れてしまうだろう。
食べ物に罪はないのはわかっているが、どうも同じ弁当を一緒に突っつき合う気にはなれない。
「合宿中のご飯はすべて現地調達ですので、私は遠慮させていただきます」
「ええ!もったいない!せっかく作ったのにぃ......」
それにここでマリアと一緒に弁当を食べて、万が一持ってきたことがバレてしまえば私の評価に関わる。栄光あるアーテル家の令嬢として生まれ変わったからには、学園の決まり事を破ってしまうのは気が引ける。
それに万が一バレたときに、弁当をもってきたマリアと一緒に食べた事実よりも、一緒に食べない方が言い訳もたつ。
マリアが不満で口をとがらせながら弁当を広げているうちに自分の荷物の中から学園で配布された魔女の森に生えている植物の図鑑を取り出し、食べられそうなものを探しに出た。




