野外合宿開始(男子視点)
同時刻
――シレーヌ帝国、クリフォード王子は鬱蒼と茂る草、枯れ落ちた枝を踏みつけながら自分の班のまとめ役を自主的に引き受けたアシュリーの後に続いた。
班の仲間であり、学園生活を共にする一人、ヨシュア・ラーゼンもクリフォードの広い背中の後についてくる形で獣道をかき分ける。
「おい、アシュリーこっちで本当で道は合っているのか」
行軍でもなかなか歩かされないような荒れた道ばかり進まされるクリフォードは、この場では1枚しかない班に配布された地図を確認したい気持ちと、それを頑なに見せないアシュリーの態度にストレスが溜まりつつあった。
アシュリーは地図を大切そうに握りしめながら、自信満々に答える。
「もちろんだ。この俺が地図を持っているのにルートを間違えるはずがないだろう」
「方向もわかりにくい森の中、しかも野外で生活をしたこともないような人間がどこからそんな自信が生まれるんだか......」
「なにか言ったか」
「別になんでもない」
つい悪態をついてしまった口元を抑え、適当な誤魔化しの言葉をアシュリーに投げかけた。気づいていないアシュリーはまた視線を地図に戻し、悪態の言葉が聞こえていたヨシュアは心配のため息を吐いた。
「クリフォード様、お気持ちはわかりますが無用な体力の消費を避けるためにもいらぬ言葉は噤むべきかと」
「気持ちはわかる......か。おまえも存外アシュリーにいい思いを抱いていないようだな」
「......お戯れを」
言葉自体は否定しないヨシュアは背中に背負ったバックを背負いなおす。暑さで蒸れた背中の気持ち悪さ、いらぬ言葉をかけてしまったクリフォードへの居心地の悪さで口元をきゅっとしめた。
「おまえの立場であれば国を担う王族の悪口のひとつも零せんか。......わかってはいるが情けないものだな」
「お言葉はごもっともです。歯痒い思いをしております」
「何に対してか?」
「......少しペースを上げましょう。王子の歩く速度が速く、おいて行かれています」
ヨシュアは触れられたくないことなのか、話を逸らすように指先をアシュリーの方に向けた。その指先を追うように視線を動かしたクリフォードはまた深いため息を吐く。
「......はぁ。おい!アシュリー!俺たちはお前の荷物も持っているんだ。もう少し周りを見てペースを合わせろ」




