フィオーレ学園での1日②
「ほぅ。おまえたちの出会いが釣り場とは似合わないというか、ミリアーナらしいと表現するべきなのだろうか」
「ヨシュア様、そのことは内密にと......」
「あ、すみません。ミリアーナ様と親しそうだったので趣味のことはご存じなのかと思いました」
学園の生徒が多く使う食堂。その隅の方が開いていたので、3人がけの席に座る。
うちの学園の食堂はメニューを頼みさえすれば配膳係の人がこちらにもってきてくれる。
ヨシュア様がメニューを頼みにいってくれて、遅れて私とクリフォード様の間、丸テーブルに囲うように腰を下ろす。
食事を待っている間、話の流れでヨシュア様と私の出会いの話になった。
「趣味が釣りか。味の好みといい雄臭い趣味嗜好だな」
雄臭いって私は動物かなにかか。言葉選びのセンスが独特すぎるクリフォード様をちらりと見ながら食前の紅茶を啜る。
「令嬢らしくない」といいたげな言葉に焦ってしまう。
「ああ、こうなるのがわかってたから隠してたのに......」
「ああ、馬鹿にしているようにみえたのなら謝ろう。寧ろ俺的には好感もてるぞ?下手に取り繕って淑女然と振舞われるより関わりやすいしな」
「~~ッ!」
「あの、お二人とも落ち着いてください。あ、ほら。料理が冷めてしまいますよ」
真っ白なテーブルクロスが敷かれたテーブルの上には、海老のテリーヌやシーザーサラダなど王国が誇るシェフたちが腕によりをかけてつくった美味な料理の品々が並ぶ。
「うまそうだな。後の話は食事中にしていただくか」
「そうですね、では私、サラダを取り分けますね」
食前の挨拶をそこそこに、鼻孔を擽る料理の香ばしい香りを堪能にしながら料理に手を伸ばす。
「――ん、うまいな」
「このソテーなど芳醇なバターの香りがして食欲もそそられます」
「こちらの魚もおいしいですよ身が引き締まってて新鮮なもので調理した証拠ですね」
野菜のサラダはしゃきしゃきといい音が響き、魚をソテーしたものはみっちりとした肉厚の魚のうまみが引き立っていておいしい。
学校の食堂といえば料理が冷めてて、薄味、健康第一に考えた料理のラインナップであんまりいい印象がない。
けどこの食堂の料理は洋食に偏っているがどれも当たり外れがなくおいしい。強いて言えばメニューが一定ではあるが万人する味付けがまたいい。
クリフォード様は舌鼓を打ち、味をかみしめてうなずく。
「俺の国ではなかなかでない味だな。シンプルだがしっかりと塩味があって素材の味も活かしている。我が国でも取り入れたいほどだ」
「シレーヌでは味噌や醤油といった大豆を使った調味料が豊富なんでしたよね。あれらも魚料理に合うのでぜひ使ってみたいです」
「なら父にいってアーテルの家に送ってもらおう」
「本当ですか?ならいい魚も欲しいですわね。ヨシュア様、こんどラーゼン様をお誘いして海辺の方に釣りに行きましょう」
「いいですね、おじいさまに話をしておきましょう。海辺となると少し遠出にはなりますが…...」
「シレーヌ近郊の海街ならどうだ?シレーヌの領地だが釣りの名所となる場所もあったはずだ」
シレーヌ近郊の海街というとドリトのことだろうか。あそこはイカやカニなどの甲殻類がよく取れるし、浅瀬の方では身がアジに似た美味しい魚が取れるとラーゼン公爵から聞いたことがある。
一度行ってみたいなと思っていた場所だが、他国だし友好国といえども貴族の身ではいろいろ入国が面倒でいける機会がなかった。
「大丈夫なのですか?入国の際の書類など色々面倒でしょうし……」
「俺が話を通しておこう。なに、息抜きに母国に帰るだけだ。友人と一緒で非公式のものであればだれも文句はいわんだろう。任せておけ」
「わかりました。手間じゃなければ楽しみにしておりますね」
王子の差配ひとつで変わる入国審査って少し不用心すぎやしないかと思ったが、王子がそういうのだから余計なことはいわないでおこう。
いやぁ、思わぬところでこれから楽しみな予定がはいった。海街なんて趣味で行くのは初めてだし、貴族ってばれないような服装とか用意しなきゃなー。
話しが弾んだ頃、予鈴が鳴り急いで食器を片す従業員を後目に私たちは次の授業に向かった。




