フィオーレ学園での1日①
「――皆さん、静粛に。今日は皆さんに新たに学業を学ぶ仲間の紹介をします。シレーヌさん、こちらへ」
休みが明けて。私が通うフィオーレ学園に新しく、というか一時的に留学生としてクリフォード様が編入してきた。
クリフォード様はシレーヌの学園のだろうか少々変わった制服に身を包んで、シンプルに「よろしく」と挨拶をひとつ交わす。
クラス中の女子生徒の黄色い声につい私は耳をふさいでしまう。
たしかに美形だが、漫画やアニメみたいに色めきだつことなのだろうか......。
「ミリアーナさんはたしか滞在中はシレーヌさんのお世話をされているのよね?気心もしれているだろうし、学園の案内は頼めるかしら」
「クリフォード様さえよろしければ」
女生徒の羨望の眼差しが向けられる。羨望の眼差しの中にはわずかではあるが敵意もこもっている。
わざわざ大きな声でいう必要はあったのだろうか......。と突っ込みたくなるが我慢だ。
クリフォード様は我が家では見せない外向けのビジネススマイルを浮かべて「よろしくな、ミリアーナ」というと当然のように空席だった私の隣に座る。
学園の教室の席は自由席で嫌煙されがちな私の横はいつも空席だ。だけど他にも空席があるのにわざわざここに座るかなと少し疑問に感じた。
★
「ミリアーナ様。おはようございます」
「あら、ヨシュア様。おはようござます。昼前に登校だなんて珍しい」
「ええ、おじい様の家業で少し......。そちらの方は?」
「こちらは…...」
「クリフォード・シレーヌだ。アーテル家で厄介になっているしがない留学生だ。よろしく」
授業が一時中断で少ししてから。朝から登校していなかったヨシュア様が顔を出した。時期侯爵家の当主で家業も手伝う彼。だが、学業優先なので、遅刻こそすれど昼休憩の時間に登校するのは珍しかった。
ヨシュア様に挨拶を交わした後、ヨシュア様の好奇的な視線がクリフォード様に向いた。
「ああ、あなたが。ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。ヨシュア・ラーゼンと申します。王子様に先に名乗らせてしまった無礼重ねてお詫び申し上げます」
「ここは公式の場でもなし、別に気にしない。それよりミリアーナにもこんな友人がいたとはな」
「私ごときがミリアーナ様とご友人など......」
「謙遜するな。栄えあるノエル王国の財政管理の一端を担う侯爵家の次期当主と宰相の令嬢が友人とは釣り合う関係ではないか」
「ありがとうございます。クリフォード様にそういっていただけると幸いでございます」
握手を交わすヨシュア様は鞄を空席に置いて、走ってきたのか少し荒い息を整える。
するときゅるるるとお腹が鳴る音がヨシュア様から聞こえたのでついくすりと声を漏らしてしまう。
「――す、すみません、朝からなにも食べてなくて」
「ふふふ。私たちこれからお昼なのですが、ご一緒しませんか?......よろしいでしょうかクリフォード様」
「かまわない。俺もヨシュア殿の話も聞いてみたいしな」
「よろしいのですか?......ご迷惑でなければぜひご一緒させてください」
そうと決まるとヨシュア様は次の授業の準備だけ手早く終え、クリフォード様の案内がてら、昼食をとるべくヨシュア様と一緒に学園の食堂に向かうことにした。




