【幕間】同級生①
「――あら、あなたは確か……」
「ご機嫌麗しく存じます。ミリアーナ様。ヨシュア・ラーゼンです。覚えていらっしゃいますか?」
覚えてるもなにも春休みが終わる数日前に出会ったばかりじゃないか。私そんな鳥みたいな記憶力していない、と反論はしたいものの。公爵令嬢としいてその返しはどうかとは思うので普通の反応で返す。
「もちろん覚えていますわ。ごきげんようヨシュア様」
「そうですよね。……ほんとうに、あなたあのミリアーナ様なのですか?」
「どういうことでしょう?」
「あの時のように生き生きとした表情をしていなかったので、ほんとうに公爵令嬢なのかなと。今の暗い表情も素敵なのですが……」
「そうでしょうか?……そう見えたのはたぶん私が勉強が苦手だからですね。苦手なものに身を置くのって少し気分が暗くなったりしませんか?」
そんなに今の感情を表情にだしていたのだろうか。他人から感じ取れるほどの顔色からそうなのだろうと自己完結する。今度から気を付けよう。
ヨシュア様は話を続ける。
「それはもったいない。勉強をすることは自己の能力を上げることにもつながります。我らのようにいずれ頭を使う職につくのならばなおさら勉強を苦手になるより好きになったほうが便利でしょう」
「ヨシュア様は勉強がお好きなのですか?」
「はい。それはもう今では自身を持ち胸を張って言えます」
その心意気はとても素晴らしいものだと思った。何事も苦手意識を最初から持っていては身に入りにくいし、好意的な意識を持っていたほうがずっと素敵だ。
ヨシュア様の意気に感心する。
「……これから授業ですか?」
ヨシュア様の視線が私が持っている教科書に集中する。
「はい。次は魔法基礎の授業です。ヨシュア様も授業ですか?」
そういえば、ラーゼン侯爵から彼と同じ学年だと聞いたのだが、少なくともクラスでは見たことがない。ということは隣のクラスなのだろう。隣のクラスは確か......経営学か?
「いえ、俺は家の都合で皆より先に帰宅する予定です。家で少し厄介ごとが起きまして」
「そうなのですね。次期ラーゼン家の当主としての務め大変ですね。もし私でなにか力になれることがあればいってくださいね」
「ありがとうございます。その際にはぜひお願いします。……それとまたうちにも遊びに来てください。おじいさま、ミリアーナ様釣りをするのを楽しみにしておられるので」
「まぁ!本当ですか。ぜひお願いします。ご迷惑でなければ近いうちに必ず……」
了承の意でうなずくとヨシュア様は挨拶の言葉を口にして急いで走り去る。私はヨシュア様の急ぐ背中を見送った。




