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転生嫌われ令嬢の幸せ漢飯(日常)  作者: 赤羽夕夜
深夜の秘密食堂(15歳)編

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13/90

⑬無事......

――夜会が終わった次の日の夜のこと。

私はお母様とお父様の寝室に呼び出された。薄暗い廊下、魔法の淡い光が灯る中、ジョンの先導で寝室の扉を開けてもらう。そこにはすでにお母様がネグリジェを着てベッドに座っていた。

まさかこの年になって一緒に寝る......。まさかお母様がそんなことをするわけでもなく。ただ単純に時刻が深夜を回っていたので、私を呼び出したなにかしらの用件を伝えた後、そのまま寝るつもりなのだろう。

お母様は淡々と「ご苦労様、下がってよろしい」とジョンにかけると、ジョンは一礼をして去る。

私といえばお母様に促されるまま、サイドテーブルの横に置いてあった椅子に座った。

「......まずは、昨日の件はご苦労様。そしてありがとう。あなたが機転を利かせてくれなければあのまま夜会は失敗に終わっていたことでしょう」

「とんでもないです、お母様に感謝されるほどのことではありません......。それに料理の件、あの場で失敗する可能性があった。なのにお母様は自分の感情を抑えて私を信じてくれたではありませんか」

「......あのとき、あの人に止められていなければ私はすぐに貴方の行動を止めに入っていました。しきたりと王道を歩むばかりで目の前の有事に臨機応変に対応しきれなかったのだから」

「お母様は間違っておりません。私がお母様の立場であればそうしますもの」

今回のことは私が見ているだけでなにもできないことの歯痒さから衝動的におこなったことだ。一歩間違えば私の行いが夜会を悪い方向へ台無しにしてしまうところだった。

だからリスクを回避しようとして精一杯働き、苦悩したお母様がリスクを考えず博打を打った私に対してお礼など言わないでほしいのが本音だった。

そういいたいのは山々だった。しかしお母様の性格から一度決めて発言したことはなかなか意思を曲げないのは知っているので、次の言葉が出るまで声を発することなく、代わりに紅茶を罪悪感と一緒に胃の中に流し込んだ。

「――ミリアーナ」

「はい」

淡い光がお母様の歴戦の印が刻まれた肌を照らす。よく手入れされている肌で白磁のような白さと滑らかさに視線が動いた。口元はぴくりと上に持ち上がり、眉間のしわも幾分か和らいでいるように感じた。

「今回の差配見事でしたし、あなたの機転と使用人の連携のおかげで今回は成功しました。夜毎ジョンをはじめとした使用人、ヴェスターも交えて行っていた食事会があなたを変えたのですか?」

「............?」

何故そこで夜食会の話がでてくるのか不明だったが、話には続きがありそうなので耳を引き続き傾けた。

「昔のあなたは何を覚えさせてもなんでもでき、私たちの言うことに反論もせず淑やかに淡々と物事をこなす子でした。私たちはその姿は好ましものだと思う反面、どこか退屈そうに日々を過ごしてなにかひとつのものに興味を抱かない姿を見て少し心配していたのです。......これから先大人になってから自分にブレーキをかける状態で生きていては素敵なレディに育たちません」

......記憶が戻るまで、習い事はすべて難なくこなしてきたし、婚約者のことだって、学園のことだって弱音を吐いてはいけないとずっと黙ってきた。

お母様にそんな心配をかけていたのかと思うと申し訳なく思えてきた。

表情で察したのか、慈母のような柔らかい眼差しがこちらへ向けられる。ここ数年気を張ったお母様の表情しか見てこなかったが故に柔らかい表情に驚いてしまうし、同時に緊張していた心もほどけていく。

重ねられた手は皮が厚く、華奢ではあるが母親特有のたくましさがあった。

「だからあなたが良き方向へ進んだのであればあの深夜の秘密事も悪きものではないと思えたのです。たしかに貴族の思考としては上品のかけらもないものではあります。......けど言い方を変えるのであれば今までの常識にとらわれず自由に多くの人の感性に触れ合える場なのだと。あなたが良き方向へこれからも変わり続けるのであれば......私はあの集会を認めざるえません」

集会、夜食会のことか。夜食会は生前の記憶が戻ったことからはじまったもの。私が食べたいものを作り、お父様やジョンに見つかって。使用人も巻き込んで規模も広がって......。

第三者からすれば内向的に物事をおこなうミリアーナの姿をみれば180度変わったといっても言い過ぎではないかもしれない。

しかし本人から言わせてもらえば、私はいままで通りのミリアーナで、ただ記憶を思い出しただけ。やりたいことがあったから実行したまでだ。

それだけで今までのミリアーナに比べ、良い方向へ変わったというのであればいいこと......なのだろうか。わからない。

けれど今言えることはお母様公認のもとで夜食会を開いてよいということだった。

「――じゃあいままで通り、夜食会をしてもよいのですか......?」

お母様はうなずく。

「ただし、深夜の食事は体調にも悪いので週に3回まで。後片付けはきちんとする。次の日の業務や学業に支障がない程度でおこなう。それが守れるのであれば許可しましょう」

胸が熱くなる。今まで退屈だった人生の中でみつけた楽しみ。その楽しみを通して築き上げた大切な関係の数々。

そのほとんどが使用人ではあるが、一度は否定されて、再度肯定してくれた集会。

それがなくなることがなくなったという事実に安心からか一粒、涙がこぼれた。

「――はい。ありがとうございます!絶対に約束しますお母様。そして、また近いうちにお母様もぜひ夜食会に参加してくださいね......!」


――かくして夜会も成功をおさめ、夜食会も一時期どうなるかと思ったがお母様の許しの元で今度は堂々と行えるようになった。

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