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転生嫌われ令嬢の幸せ漢飯(日常)  作者: 赤羽夕夜
深夜の秘密食堂(15歳)編

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11/90

⑪秘密の策【前編】

夜会も中盤に差し掛かり、料理も招待客の胃袋へ収まり、種類も徐々に減ってきたころ。通常であれば補充されるはずの料理の品々に変わりはなく、依然と減り続けるままだ。

その様子を事情を知る者、つまり、私や使用人が判断するに、やはりドリーの変わりとなる料理人を手配できなかったということだ。そして作り手がいないのであれば料理は補充されるはずがない。

主催のお母様はここから離れる術もないし、料理人が手配できない時点で補充する手段もない。


ベストなのは招待客が料理に手を付けず、余興を楽しんでもらうことだが、そうはいかないのが現実。このまま料理がなくなり、料理の追加を頼む人がいれば料理を提供することはできないし提供できない場合、準備不足、十分なもてなしができない中で夜会を開催した計画性のない貴族として多くの人に知られてしまうことだろう。

それだけはなんとか避けたい。

お母様は歴史や品格を重んじる古風な人柄故に、アーテル家にそういうレッテルを張ってしまった本人として死んでも悔いることだろう。

厳しい人ではあるが、私をここまで育ててくれた大切な母親だ。母親にそんな苦い思いをして生きてほしくない。

回避できる手段があるならどんな手段でもやるべきだ。......失敗する可能性は大いにある。

しかし、このまま指を加えて状況を眺めるより、失敗を恐れずチャレンジをした方がいいと私の本能が告げている。

もし仮に失敗したとしても、私が勝手にしたこととしいて処理をしてもらえばいい。

甘い考えかもしれないがお母様の失態より子供の失態の方が丸く収まるだろう。


焦燥と緊張、夜会を成功させたい気持ちを抱きながらエリザベスをはじめ顔見知りの貴族への挨拶を済ませ、そろそろ次の行動に移るべくいったん会場を後にする。

他の貴族へのもてなしお母様やお父様、使用人たちで事足りるだろう。私の役割はあとはピアノを弾くだけで、この夜会の終盤が出番なのでこの後は実質予定がない。

私は一度厨房に戻り、メリーとドリーの弟子たちに準備させた調理器具と材料、そしてお酒をワゴンに乗せて会場へ運びこませる。



その光景を興味深そうに見ていた招待客。そして驚きの表情を隠せないお母様の姿が後目に見えた。

――ひとつ咳払いをして喉の調子を整える。

「――皆さま方、お久しぶりの方も初めましての方もご機嫌麗しく存じます。アーテル家長女のミリアーナアーテルと申します。今宵は皆さまを楽しませるための余興の方を準備してまいりましたの」

目配せをメリーすると無言でうなずく。弟子たちも機敏な動きで簡易的な机を会場の中央に設置する。その時間体感的には2分ほど。

その間、準備が終わるまで中間トークを続ける。

「皆さま、日ごろ、なにかしらの食事を口にする機会はあるとは思いますが、その口にしている料理、どうやって作られているか気になりはしませんか?」

「ミリアーナ、一体何をしているのです......!」

「お母様、私思ったのです。時代は進んでいくのに我が家の夜会の形式は旧式で代り映えはしない。それでは毎年我が家の夜会に来て下さるお客様方は飽きてしまう......と」

「ミリアーナ様、我らは今の夜会でも十分に楽しんでおりますぞ」

「ええ。それはわかっております。しかし、我が家は代々ノエル王国の宰相を務める家系。いつも時代の先端を見ている立場であるからこそ、我が家の夜会も進化するべきだと。......そこで」

机の上に材料と弟子たちに作ってもらったガスコンロ替わりの即席魔術具。あとは鉄板やフライ返しといった調理器具とフォーク、取り皿を設置する。きらびやかな夜会の会場と対照的な道具の数々に来場している招待客の多くの視線が集中した。

「皆さま、夜会の余興として料理体験をしてみませんか?」

「ほう......。それは今までの、いえ我らが開く夜会とは一味も二味も違った趣向ですな」

人だかりの最前列にいた老人は丁寧に伸ばした白いあごひげを触り、材料を眺める。

この人はたしか、ラーゼン侯爵。この国の国庫の管理を担当している家のひとつだ。計算高く、食わせ者、何を考えているか読めない人だが仕事の腕は確かで彼が担当している経理は一銭の計算ミスはなかったという。彼の目の届く範囲では貴族の犯罪でよく起こりえる横領は一切ないといわれている。

ラーゼン侯爵はふぅんと一息漏らしお母様に問う。

「料理が補充されないのはこういったことだったのですな?」

「......はい。私がお母様に無理をいって最低限に」

お母様はなにがおこったのか理解が追い付かないのか依然と固まったまま。私はチャンスとばかりにお母様の変わり答える。

ラーゼンは不服としない表情だが、それ以上なにかを突っ込むことはなかった。

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