学校課題を口実に
そんな毎日を繰り返し、学校生活にもなれ、宮津さんとの仲も親交が深まってきた。
そんなある日。担任からこんな案内があった。
「みんなも知っての通り、この学校は人によって取っている科目や進み具合が違う。だから点数制のテストは行わないが、選択科目に合わせた課題を個人で決めて、提出してもらうことになっている。その提出は一週間後だ。それぞれ最善を尽くすように。」
―――例えば国語であれば小論文。化学であれば実験結果などのレポート。体育であれば実技。音楽でいえば楽器演奏や歌唱。選んだ科目から個々の最善をみせる。独自的な個人評価制度である。―――
「今回は、担当教師にみせるのみだが、秋に7日間かけて開催される大規模な大祭では、個々の能力をおおやけに披露してもらうことになっている。個々の能力と言ったが必ずしも一人でやれという訳ではない、複数人のグループでやってもらっても構わない。原則的に1組5分以内と決まっているのでそこだけ注意してくれ。」
案内のあと、僕は宮津さんに相談するために声をかけた。
「宮津さん、ちょっといいかな?」
「ん、どうしたの?」
小首を傾げながら、聞いてきた。
「さっき先生が言ってた選択科目の課題なんだけど、良かったら秋の大祭のことも含めて相談したいんだ。ほら、僕たち、ほとんど科目一緒だし二人でやったほうがいいかなって。」
宮津さんと仲良くなってから、自分でもハッキリ分かるくらい積極的になっている、あきらかに影響を受けている証拠だ。
「そうだね、じゃあ一緒にやろうか。私も助かるし。どこでやろうか?」
「ん~、どうしようか・・・。ファミレスとかでやると迷惑かかるだろうし・・・。図書室とか?もしくは、僕の家とか。」
「高嶺君の家かぁ、両親は気にしない人なの?」
「うん、僕の両親夜遅くまで帰って来ないから、気にしなくていいよ。」
「それって、二人きりって事だよね?高嶺君、変な事しないでね?」
冗談まじりにそんな事言ってきた。
「え~。僕って信用ない!?だ、大丈夫だよ。そういうことはちゃんと恋人とかそういう仲じゃないとね!」
「そういう仲ならしちゃうんだ?」
宮津さんがニヤニヤしながら更に突っ込んでくる。
「え、いやいや。高校卒業して結婚とかしないとダメだよね!」
僕はもう必死に自分の発言の落ち度を正そうとしていた。
「アハハハ。高嶺君、焦りすぎ。冗談だよ。」
とてもおかしそうに、宮津さんは声をだして笑った。
「う、うん。そうだよね・・・。」
僕はようやく、焦りから開放された。
「それで、場所は僕の家でいいのかな?」
「うん、いいよ。いつからやる?」
「ん~。今日からやっちゃおうか。一週間なんてあっという間だし、大祭でなにやるか方向性ぐらいは決めていきたいね。」
「分かった。じゃあ、今日からお邪魔させてもらうね。」
「帰りに声かけるから、一緒に帰ろう。」
実は、僕の家に誘ったのはこれが狙いというのもある。ちょっとずるいかなと思うが、宮津さんなら快く受けてくれる。
そして放課後。
主人公は意外と狡猾です(笑)
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