図書委員のお仕事
少し長めです。
「じゃあ委員会いこうか。」
宮津さんから誘われる。
(あぁ・・・僕から言おうと思ったのに・・・。)
「うん、たしか3階だったね。」
僕たちは図書委員会。図書室は3階だ。
紙の本、つまり、冊子式ももちろんあるが、電子タブレットで「本の内容だけ」借りる事も出来るので貸し出し中になっていることは少ないらしい。これもかなり異例な事だろう、すごい学校だ。
「1年生には、簡単な雑務からやってもらってます、本棚の整理、電子貸し出しの受付などです。」
3年の会長から説明がある、原則委員会は生徒が取り仕切ることになっている。監督担任は一応いるが、名目でしかない。生徒同士でのトラブルや緊急時のみ動く。
―――中には、こういう対応を「無責任だ。」と思う人もいるだろう。しかし、逆に考えてみてほしい。僕たちは自立にむけて成長していく時期なのだ。先生の指示で動くだけでは、敷かれたレールの上を走っているだけだ。これは「依存」と言えるだろう。それでいいのだろうか?価値観は人それぞれだが、ほんの一面だけみて判断するのは賢明ではない、と考えている。―――
閑話休題
「質問のある方いますか?」
委員会の概要の説明が一通り終わり会長が聞いた。
「すいません、電子貸し出しとは具体的にどのようにするのでしょうか?」
独自のシステムのため、委員会でやる以上は確認しておく必要があるだろう。まだその説明は受けていない。
「そうですね、実際にやりながら説明します。みなさんも必要と思います。画面を共有しますので手元のタブレットに注目願います。まず、この図書室の本にはすべて学校専用の貸し出しバーコードがついてます。これを貸し出すときに、借りる側が読み込みます。では、試しに高嶺君がこの本を借りるとして、バーコードを読み込んでみてください。」
僕は言われた通りに、本に付いているバーコードを読み込む。すると
『題名○○○○ この本を借りますか?YES/NO?』と画面に表示された。
YESを選択してみた。『貸し出し有効期限は〇月〇までです。期限を過ぎると自動的に削除されます。』と表示された。
「このように、YESを選択して、貸し出しになるとタブレット画面に有効期限が表示されます。期限をすぎると自動的に削除されます。」
会長が口頭で画面に表示されたままを説明する。今の操作画面は全員のタブレットに表示されている。誰か一人が見ている画面を共有して見る事が出来るシステムだ。
もちろん、これには通信する同士で許可し合う必要があるため勝手に相手の画面を見たりすることは出来ない。
「このシステムにより、未返却を防ぐ目的があります。それと複数の人が同じ本を見れるといったメリットもあります。なるべく利用する生徒には電子貸し出しを利用してもらうようにしてください。今のように、初めて利用する人には貸し出し手続きの仕方を案内する必要があるので、覚えておいてください。」
会長はとても説明が分かりやすかったし親切だ。これなら安心して委員会が出来る。
仕事内容も複雑ではないし3年間図書委員でも良いかもしれない。
「よく理解出来ました。ありがとうございました。」
僕は会長に礼を伝え、席に戻り座る。
その後質問もなく、今日は終わりだ。帰ろう。帰り際に宮津さんから声をかけられた。
「高嶺君、また明日ね。」
「うん、また明日。」
なんともない別れの挨拶だったが、それでも昨日までは無かったやりとり。
嬉しかった。我ながら単純だなと思った。