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君と僕  作者: 春乃苑香
9/10

冬枯れ時失せた霞みの庭に揺れる一輪の哀れなそうび(=薔薇)の棘に見惚る


第九話は、森サイドです。


秋が終わり、冬のやってきた庭は寂しい。

でも、人間は一日に数分でも外の空気を吸わないと

酸化がすすんで寿命が縮んでしまうから、ヒトにとって庭は必要なのだろう。



枯れた庭を見回すと、なぜか一輪だけ、薔薇が弱弱しく咲いていた。


じっと見つめていると、カメラを持ってきた山田の声が背後からする。

「君みたいだ。」

これが僕だって?僕は振り返って山田を睨む。

山田が笑う。

「棘で身を守りながらも、綺麗に咲くことは諦めない。僕なら、棘で身を守るなんて面倒だから、最初からこんな目立つ花は咲かせないもの。森君は誇り高き一輪の薔薇だよ。」


山田は優しい。

優しい山田がどんなに褒めようと

たった一輪で咲いているその薔薇が僕には哀れに思えた。



でも、君が褒めてくれるなら。

君が応援してくれるなら、僕は誇り高く咲いてみようかな。

それがどんなに寂しいことでも。どんなに哀れであっても。

少しだけ、そう思えた。



「背景、ちょっと寂しいかな。あ、でも、こうすると、うん。森君、ちょっと右によって。そうそう。薔薇がちょうど入るようにしたいんだ。」



そして、出来上がった写真は山田と僕と薔薇のスリーショットだった。


デジカメの小さい画面の中。

やっぱり哀れな薔薇を見て、僕は思った。

さっきのあれは、やっぱり訂正しよう。

僕は“山田の庭に咲く”一輪の薔薇でありたい。

たとえ、それが冬枯れの庭であっても。

山田に見惚れてもらいたい。


山田の隣でなきゃ、僕には意味も価値もない。






外の空気を吸わないと身体が酸化する云々は、森君の思い込みで、なんら科学的根拠に基づいてはおりませんので、悪しからず。

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