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君と僕  作者: 春乃苑香
2/10

夢の果てを越えた現の夢の果てにある境目のない現をこそ夢見る


第二話は森サイドです。


実験室ってすごくいい。


真っ白な白衣もいいし、金属とかガラスとか無機質な感じも、とてもいい。

僕は実験室にいたかった。

だから院まで行ったし、がんばって就活もしたつもり。


でも、4月になって僕がいるのはオフィスだった。



実験室じゃなきゃ、どこも意味ないのに。




現実世界で、僕はもう十分にひどい目にあってる。


それなのに、夢でも僕は怖い思いをする。

あの上司がべたべた僕の身体に触ってくるんだ。


にたにた笑う脂っぽい顔も、すぐにうわずる怒鳴り声も、あの上司の全てが嫌いだった。


夢だと分かっていても、気持ち悪い。

あんまり気持ち悪いから、言ってやった。


「いい加減にしろっ!この馬鹿!」


みごと上司を撃退!ざまあみろ。

僕も結構、やるんだぞ。


すると、場面が変わって、山田が自分の家の玄関で笑ってる。


これはまだ大学生の頃の話だ。


サークルの奴らがつれだって、合宿という名目で山田ん家にどやどや押しかけた。

僕も後ろから付いていく。

だって、山田の家に興味があったから。


僕を見つけた山田はちょっと意外そうな顔をするけど、すぐに笑って迎えてくれる。

「あ、森君。来たんだ。入れよ。」



  楽しかった。

  夢の果てで、僕は幸せだった。



実験室はすごくいい。だけど、君の家もすごくいいと思った。




朝。目覚ましがジリジリいうと、山田が手をのばして、それを止める。それから山田は五分ほど、必ず二度寝する。その五分間、うつろな意識の中で、僕は山田の体温を隣に感じながら、さっきの夢のつづきを見る。夢か現か、そこには境目がない。そして、そんな現実こそ、僕が欲しいと夢見るものなんだ。



君には黙っていよう。

君のところへ行きたくて、家賃を滞納してたこと。


まさか、本当に追い出されるなんて思いはしなかったけれど。


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