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本物とニセモノ


 

  本や漫画、アニメは素晴らしい。日常生活では体験することの出来ない様々なことを視覚や聴覚を使うことによって体験させてくれる。私の命は一つしかない。それもいつ灯火が消えるかどうか分からない。しかし、これらがあれば何百人いや何千人、人によっては何百万人以上の人生を歩める。


  この事に私が気が付いたのはつい最近のことだった。


  私は「花川(はなかわ) 瑞稀(みき)十六歳、高校一年生。特にこれと言って取り柄は無く、趣味はただただ本や漫画、アニメを読んだり見たりすること。」なんて事実は人には言えず小学校と中学校では、インターネットで流行をチェクしみんなの会話の中心になったり、時には学級委員に積極的に立候補したり、みんなの前に立つ様なポジションをとっていた。そしていつの日か自分で作った偽物の私で本来の自分自身を隠しながら生活するようになっていた。

  自分で作った偽物のミキで生活することはとても居心地が良かった。ただ居心地がいい反面、周囲に神経を張り巡らせなければならなかった。なぜなら、本当の瑞稀が外に流出することを偽物が恐れたからだ。これはミキが勝手に本能的に行っていたことだった為、最初は全く意識することが無かった。中学校に上がったくらいの頃、家でもミキで生活するようになった。それまで家では瑞稀で生活していた。そのきっかけは中学受験に失敗したことによる瑞稀の存在の必要性が自分の中で消えてしまったからだった。なぜ消えてしまったのか、答えは簡単なものだった。中学校受験に失敗した私は地元の公立中学に入学することになってしまった。そこには本来の瑞稀を知らず、偽物のミキしか知らない小学校の仲間の大半が通うことになっていたので、さらに少なくとも三年間はミキで居続ける必要が出てきたからだった。この時私はこのまま居心地もいいことだし、瑞稀を捨てて生きようと決めたのだった。

  しかし、瑞稀を完全に捨てることは出来なかった。今思えば十二、三歳の小学校七年生が何を言ってるんだと思う。いくら表面上は偽物のミキでいたとしても、本や漫画を読むこと、アニメを見たときの楽しさを忘れられなかった。なんの取り柄もない瑞稀が感情というもの一つで、地位も名誉もある偽物のミキに勝ったのだ。そんな中、私は気が付かぬ間に絶対に叶うことの無い恋に落ちていた。



  この日は珍しく友人に勧められた漫画を読んでいた。漫画の内容を簡単に説明すると、昔全国大会に出場したことのある高校の現在弱小の運動部が再び全国大会を目指し仲間と切磋琢磨して行く様子が描かれている王道漫画だった。しかし私は王道ながらに、主人公やチームメイトだけでなく、出てくる人物一人一人全員にスポットライトが当てられ話が進んでゆくあまり目にしない漫画の書き方にすっかりハマってしまっていた。

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