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雨の日に……

雨の日にぶつかりに行く

作者: 宵楢萎茶菓

 さて、あの子のことをお兄ちゃんに任せてきたのはいいけど、あの子、来てくれるかな?

 うう、嫌われていたらどうしよう……


 ん、いけないいけない! 外の雨に引っ張られてマイナス思考に落ちやすくなってる。

 あたしはいつでもポジティブシンキングなのだけが取り柄だってお兄ちゃん言ってたから、こんなんじゃだめだ!

 ……ってあれ? 何気貶されてる?






 帰ってきたらお兄ちゃんフルボッコにしよう。











 にしても遅いなぁ。

 もうお夕飯の準備できたのに。それに雷時々チカチカしてるし……お兄ちゃんって妙なところで意地っ張りだから、見つけられなくて「見つけるまで帰れない!!」とか思ってたりして。

 でもさすがに雷だよ? そろそろ帰ってくるよね……


 って……あ! あれ、お兄ちゃんじゃない!? それにあのフードの子もいる。しかもえ、台所(ここ)から見える家っていうと……裏のお屋敷!? なんでそんなところに? お兄ちゃんやあの子以外も入ってったけど……




 せっかくあの子が近くにいるってわかったんだ、思い切って行ってみよう!

 迷惑がられたなら謝ればいいし、何か助けられるなら助けたい!












 雨でごまかしたいくらい、辛くて、泣きたいことがあるのなら、




 偽善って言われてもいいの。お節介って思われてもいいの。






 力になりたい!






 幸い、お夕飯の支度はできてるし、思い立ったが吉日!


 あたしは火元の確認と、戸締まりだけしっかりして、傘を一つ手に駆け出した。


















 カッ


















 何、あれ……?




 普段なら雷にびっくりするあたしだけど、今回はそうはならなかった。

 その光が映し出した[女の子が女の子の首を絞めている]という絵面の方がよほど驚きに値する。






 何、あの状況。


 あ、あの子が首を絞めていた女の子を突き飛ばした。解放された子の方を抱き上げる。
















 なんだ、カッコいいじゃん。






 涙を雨で隠そうとしていたどこか臆病そうな雰囲気は微塵もなく、代わりにあったのは、






























 隠そうともしない、悲しみの涙。



















 ずきん。






 その姿に、あたしの胸が音を立てて痛む。


 いやだ、あたしったら。









 あの子がちょっと、好きになりかけてたんだ。


 だから、あの涙の宛先の女の子がちょっと……羨ましくて。

 どうしようもなく、胸が痛いよ。




 待って、あたしの恋心。

 この思いよりも優先すべきことがある。

 せめて、叶わないとわかった恋なら、あの子の恋を叶えてあげなきゃ。


 ぴくりとも動かないあの女の子を、助けてあげなくちゃ!!






 あたしは急いで家というよりお屋敷と呼んだ方がいいだろう大きさのそこに入っていった。




 救急車を呼ぼうとしたあたしに気づいて、お兄ちゃんが止めた。

 その口から放たれた事実は、なんとも突飛で……悲しすぎる事実だった。





















 救急車は呼ばなくていい。あの子、人間じゃないんだ。



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