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プロローグ0
《それ》がいつから存在するのか、誰がどのような目的で創ったのかは、この世界の人間にも未だ解明出来ていないらしい。だが《それ》は確かに存在し、人類に富をもたらし、人々の暮らしを支え、そして挑む者の命を呑み込む。
世界各地に無数に存在するという、巨大地下洞窟。通称《ダンジョン》。
そのどれもが、幾層にも別れた迷宮区から構成され、明らかに自然形成によるものではない綺麗な円柱状をしている。小規模なものですら直径200メートル、深度300メートルを下らないという。
しかし挑戦者の侵入を阻むは、入り組んだ内部構造のみならず――数多の罠と、そこに巣食う異形のモンスターたち。
人々はその事を理解した上で尚、それでも命を賭して潜り続ける。そこに魔物がいる限り、迷宮が終わらぬ限り、人がダンジョンへの挑戦をやめる事は無いだろう。
ここは剣と魔法が息衝く世界。
元いた世界との区別化を図る意味で、俺たちはこの世界の事をこう呼んでいる。
《アナザーワールド》と。