第05話 まだ回想中だったりして
すいません。想定外に回想シーンがまだまだ続いてしまいます……。
そのあと……初日はこまごまとしたイベントが多発した。
クラスの皆は、完全に遠巻きから様子見、というやつだ。ま、それも仕方ない。
HRの一件の時だって、全員が私に詰め寄ってきた訳じゃない。良くも悪くも。最初に頭を下げた直後の反応だって様々で、立ち上がった山本くん以外にも怒りに震える人は何人もいたし。
向坂先生の最後の言葉にも、反応は様々だった。たぶん、半数の15人前後は半信半疑で様子見。7~8人は怒りを内に秘めているのか、呆れ果ててるのか、無関心なのか、完全にポーカーフェース。残りは、狼狽えている様子。そんな感じじゃなかったかと思う。
私を張り倒した張本人の三枝さんは、廊下ですれ違ったときに「ごめんなさい」とすまなさそうに謝ってくれた。
そんな感じだから、却って授業中の方が落ち着くくらいだ。残念腐女子の「しずか」は、これでも一応は都内の某W大政経学部の経済学科卒なのだ。10年以上経ってるとは言え、授業内容自体が難解ということはない。
「しずか」が「せりか」に授業内容をわかりやすく解説したり、「せりか」は生まれて初めて授業の内容が理解できて興味津々の様子だった。
──勉強って意外と楽しいものなのですね。
そんな感想を漏らしていた。
かつて瀬梨華の取り巻きで、一番仲がよく、いつも一緒につるんでた三人娘とも、2時間目終わりの休み時間に少し話をした。さすがに話をしない訳にはいかなかった。
突然、とにかくショックで今は何も考えられないと三人は口を揃えた。私は、「今まで色々と悪いことに加担させて申し訳ない」「三人それぞれの考えや信条を否定するつもりはないし尊重したい」「長い間、私と仲良くしてきてくれて本当に感謝している」と言ったような事を伝えた。
この三人と私は幼稚舎の頃からの仲良しだ。私が幾ら悪逆非道の癇癪持ちであっても、常時暴君で彼女たちに厳しく当たり散らしてきたわけじゃない。彼女たちとの九年間には、楽しい思い出や、幸せな一時がたくさんある。それで瀬梨華がどれだけ救われてきたことか。
お互いに考え方や振る舞いに問題はあったにせよ、彼女たちには本当に感謝しているのだ。
彼女たちは、「しばらくの間、考えさせてほしい。決して瀬梨華様のことが嫌いになったとか、そんなことはありえません」と言っていた。もちろん、私は頷いた。
そのあと、お昼には……残念なことに、私のお弁当がゴミ箱に捨てられていた。
チャイムが鳴って、手を洗って戻ってくるとお弁当がなくなってた。ゴミ箱の中をチラ見したときに、私のお弁当を包んでる風呂敷が見えたのだ。私は、黙って図書室に行って時間を潰した。
アメ車並みの大食漢の「しずか」に比べれば、今の私は国産ハイブリッド軽かスーパーカブ並みの燃費といっていいくらいの少食だ。一食くらいお昼を抜いても、どうってことない。
犯人探しをするつもりはない。今日の掃除当番で私は教室のゴミを焼却炉のゴミ捨て場に運ぶ係だから、そのときに弁当箱や風呂敷は回収できるはず。犯人もそれをわかっててやったんだと思う。
それよりも……漆塗りで10cm四方の3段重の松花堂弁当なんて中学生に持たせるもんなの?? 以前の記憶を見返しても、かなり悪目立ちしてる気がする。ウチのクラスには普通の家庭の人も何人かいるし、それなりの家の子でも、凝ってはいても「普通」の範疇のお弁当のを持ってきている。
そして、放課後だ。たぶん、初めて掃除当番の仕事をちゃんとやった。お弁当箱と風呂敷は無事回収できたけど……中身は本当に勿体無い。くそぅ、食べ物を粗末にする奴は許せん。精肉店の娘だったんだぞ。
……何か、これは対策を考えねば。
ゴミ捨てに行くときも、昼に図書室に行くときも、やたらとチラチラと大勢の生徒や教師に伺うような目線を送られる。そして、ヒソヒソと話す聞き取れない声。
ウワサは千里を走る──と言うが……あれ?言わない?? ともかく。おそらくは、私の事は噂話としてあちこち出回っているんだろうな。背びれ尾びれが付いて。
たとえば……日本有数の財閥令嬢のイヤな奴が吊し上げられて、半泣きでペコペコ謝らされた挙句にクラス委員に平手打ちされた!!とか言えば……そりゃ、校内タブロイド紙なんてものがあれば本日のトップニュースだろう。ウワサの証拠に頬にべったりと湿布貼ってるんだし。東スポ風の紙面が想像できてしまう。
実際、学内SNSとかでは話題になってるだろう。水面下では……やめよう、今は考えたくない。
まあ、これも致し方ないところだ。ウチの家に怯えた教師とかが私を職員室に呼び出したりしないように祈るばかりだ。
部活は……どこにも入ってないから、そのまま帰宅ということになるのだが。相良という厄介な難関が残っていることを私は忘れていた。ちなみに、お兄様は部活で帰りは別。
昇降口を出て生徒関係者用のロータリーに向かうと、ウチの黒塗りの高級外車がいい位置に既に停まっているのが見える。相良が運転席から降りてきて、後部座席のドアの前に行こうとして……相良の顔に愕然としたものが広がる。
「お嬢様!?大丈夫ですか!?その顔は何事ですかっ!?」
物凄い勢いでこちらに駆け寄ってくると、少し屈んで私の顔を心底心配そうに覗き込む。私が……これは、何と言ったら良いものか……と考えこんでいると……
「拝見させてください。失礼します」
と、いって、そーっと割れ物を扱うように、でも素早く湿布を留めてるテープをはがし、患部を確認する。
「……打撲ですか……外傷はないようですね」
相良は、ひとまず安堵の吐息を漏らしながら言葉を続ける。
「すぐ冷やした最初の対処がよかったのでしょう。それにちゃんと大きめの湿布で処置したお陰で殆ど腫れてません。今晩中には赤味もひくでしょう」
そういえば……相良は元自衛隊だから、応急処置の心得とかもあるんだろうな。まるで重傷患者のような扱いで後部座席に乗せられた。備え付けの救急ボックスから新しい湿布を出して、取り替えてもらった。
車が走り出し、しばらくして相良が口を開いた。
「お嬢様……一体何があったのか、正直に話していただけますよね?」
相良……その口調……コワイよ……。
……ううっ、このまま家に帰れちゃうのかなーなんて思ってた自分が甘かった。
できれば、親に頼らず自分で解決したい。
……とはいえ、ここで嘘を言うのも違う気がする。開き直った気分で、今朝のHRの出来事を話すことにした。
ひとしきり事情説明をする。最初はかなりビックリしたようだ。そして、中盤に差し掛かり……
「ウチのお嬢様に……なんて事を……」とかいって、ギリッと歯ぎしりの音が聞こえてきそうなくらい怒り震える。慌てて彼を宥めつつ、なんとか説明を終えた。
勿論、できれば、自分で解決したいということも言い添えた。
「……ふむ。改めて確認しますが、お嬢様は自己解決をお望みなのですね?」
私は何度も首を縦に振った。相良は色々考えこんだ後に結論を言った。
「やはり、二階堂総執事にも正直に報告しましょう。旦那様や奥様の知るところにはなりますが……お嬢様のご希望通りになるように、総執事が説得にあたります。お嬢様が真面目に問題解決にご自分の力で解決に臨みたいと仰るなら、私も総執事も、その気持ちを無碍に扱うような決して事はしません。」
ちょうど赤信号で停まったからか、そう言いながら清廉な笑顔で、こちらに振り返った。
「大事なお嬢様が、思慮深い振る舞いを身につける折角の機会。旦那様も奥様も、それを奪ってしまう過保護で器量の狭い方たちではございません。きっと、暖かくお見守りしてくださいますよ」
くぅ……そんな爽やかすぎる笑顔でこっちを見るなぁっ!!コロス気か!?そうなのかっ?
嬉しいやら照れくさいやらで、目のやり場に困った私は俯くいて視線を外すことしかできない。
「……でも、無理無茶無謀は決してなさいませんように。相良の身命にかけてのお願いです」
ええー、そんな大袈裟な??いあ、まあ……最悪、どうしようもない位困ったら……そりゃ、相談するつもりだけど……。
「大事なお嬢様に取り返しのつかないことが起きてしまったら、この腹を掻っ捌いてお詫びせねばなりません」
と、物凄く真剣な顔で返事を強要されたので、半ば怯えながら、慌ててコクコクと頷いた。
……そんな事になったら本当に切腹しそうな勢いだったので、無理はしないようにしようと心に決めた。相良は江戸時代の忠義の家臣なのか??
そんな話し合いもありつつ、車はお屋敷に到着。
玄関ロビーで出迎えてくれたお母様が顔の湿布を見ると、酷く取り乱して転げるように駆けよってきた。オロオロと縋り付いて私に事の次第を問いただし始めた。正直、こんな狼狽えたお母様を見るのは初めてだ。
すでに手短に報告がいっているのか、二階堂様がすっと現れお母様に話しかける。
「奥様、お嬢様のお怪我については相良から報告を受けております。病院にかかる程度ではないとのことなので、奥様にはご安心頂ますよう」
二階堂様の渋い声に私の脳内は一気にヒートアップしてハートマークの嵐が吹き荒れる。うぉおお!老執事祭りだぁ!!
「そう……わかりました。瀬梨華さん、大丈夫なのね?大きな湿布を貼ってるから、驚いて取り乱してしまったわ」
私が「大丈夫です」と頷くと、お母様にギュっと抱きしめられて頬を擦られる。うは、ナニこの豊満天国は!?お母様の“たゆんたゆん”はしっかり張りもあって【ぷりんぷりん】だった。
ひゃっほーい!二階堂様とお母様は、ここで私を悶え殺す気なのか!?
う……なんか「せりか」に思い切り後頭部を蹴られたような感覚が。
──なんか触り方がイヤラシイんですもの!
「旦那様がお帰りになりましたら、詳細をご報告いたします。お嬢様はお疲れでしょうから、夕食までご自室でお休みになられるとよろしいのでは?」
お母様は頷きながら、私を解放する。ああ……おっぱいの楽園が遠のいていくぅ……。
家族でダイニングに揃って、夕飯を食べて……
夕食前に両親は二階堂様から報告を受けたのであろう……頬の湿布のことは話題にのぼらなかった。
お父様がいつになく、チラッチラッとコンマゼロ何秒という極めて短い瞬間だけこちらを見る……それを繰り返すという、随分と器用なことしていたので、たぶんすごく心配してくれてるんだ、と思う。……たぶん。
自室で休んでいた時に練り上げた作戦を実行するタイミングが訪れた。
各自が席を立ち……お父様が、書斎に向かおうとしているので、ゆっくりと同じ方向に歩く。
ほどよく二人だけになったので、5~6m先を歩くお父様に声をかける。
「……お父様」
たぶん、こんな風に話しかけるのは初めてかもしれない。
ピクっと肩が揺れて立ち止まる。ゆっくりと踵を返して、半身で私と向き合う。
……普通の人なら、ギクッとして立ち止まり、ブルブルと緊張しながらこっちを向いたって、感じなのかなあ??
「……何だ?」
お父様の重々しい声が響く。すっと何歩か近寄り、背の高いお父様の顔を見上げる。
やっぱ、すげえカッコイイ……どうしよう……って、そうじゃなくて!!
「お願いがあります……もう少し庶民的なお弁当を、学校に……持って行きたい…のです」
ぐわっとお父様の雰囲気が変わる。思わず後退りそうしそうになる。……いや見た目は全く変化はないけど……オーラというか、空気感というか、なんかそんな感じのものが。うーん、別に怒ってるような感じじゃない……なんだろう?
「だ……だめだ」
「どうして、ですか?……クラスであまり……目立ちたくないのです……今のお弁当……立派すぎて」
「……それだけは、いかん」
岩を擦り潰すような声。……ふうぇ??こんな風に拒否られたの……初めてだぞ??
っていうか、娘のお弁当なんて美味しくて栄養バランスが整っていて愛情たっぷりなら十分じゃないか。お父様がどうしてあのミニ松花堂弁当に拘るのかわからん!
悔しさと悲しさと心許なさ的なモノを込めてお父様を上目遣いに睨む。
──プロデュース バイ TKって何ですか?……うるさい!
「……お願いだ。わかってくれ」
──!?
ど、どどどどどうした!?お父様!?
そんなお父様のセリフ……生まれて初めて聞いたよ!?明日は天変地異でも起こるのか!?
「どう……しても、ですか?」
「どうしても、だ」
お父様は私に背を向けると廊下の奥の書斎に入っていく。
はぁ……ため息をついて、自室に戻ろうとすると……廊下の角から、こそっと半身を覗かせチョイチョイと手招きをしてる如何にも怪しい不審人物がいた。
……お母様、なんだけど。一体、ナニしてるんだ??
早足で近寄ると、お母様は人類の半分くらいを一気に抹殺してしまうくらいの破壊力ある慈愛に充ちた満面の笑みをニッコリ浮かべて、私を脇のリビングに連れ込んだ。
「お、お母様?」
「ごめんなさいね……途中から話が聞こえてきてしまって」
くすくす笑いながらお母様はソファに腰掛けて横をぽんぽんと軽く叩いて、そこに座るように促す。
私は怪訝そうな顔をしつつも、お母様の横に腰掛ける。
「お父様は言葉が少なすぎるの。だから、そこは許してあげて?」
……それは薄々感じてはいた今日このごろだ。お兄様や他の人には、それこそ普通にダンディーでクールな口調で話してるし……お母様に対しても、若干減るけど、会話が成り立たないってほどでもない。
何で私に対しては、あんなに言葉が少ないんだ??……昔の瀬梨華は、お父様は私が嫌いなんだ!と思い込んでいた。そりゃあ、そうだ。さっきの会話のやりとりでさえ、画期的で革新的なほど言葉が多かったくらいなんだもん。
「瀬梨華さんは、どうして急にお弁当箱変えたいって思ったの?」
箱?いあ、箱限定ではなく……全体的に、なんですけども……。
「……豪華で立派なお弁当は、嬉しい……です。でも……ちょっと、豪華すぎで」
「クラスの中で目立ってしまう?」
「ええ、見せびらかすつもりも、ありませんが……アレは……」
私が頷きながら、困った顔をすると……お母様は可愛く小首を傾げ、少し考えこむ。
「うーん……言ってしまって、良いのかしら??……あの、お弁当箱はね、お父様が何ヶ月も京都の職人さんの工房に通い詰めて作ったモノなの」
……………………はぁ?
えっと…………??
えええ──────っ!!???
「貴方の中学の入学のお祝いにね」
……ちょっと、何がなんだかわかりません。ええーと??理解するのに少し時間をくだしあ!ぷりーず!
…………。
鉄壁のポーカーフェースにしては、かなり派手に目を白黒させて「あー!」とか「うー!」とか言って、狼狽えてたんじゃないかと思う。
相当、気長にお母様は丸々五分間は、ニコニコしながら待ってくれていたと思います。
「えーと……もしかして?娘にプレゼントで贈ったモノを……娘が使ってくれないのは、イヤだと……??」
「そっ」
お母様は、あっけらかんと笑ってる。
……お父様……そんな人だったのか……。「せりか」……口をパクパクさせて驚いてるなあ……まぁ、そうだよね……。
「あの人、物凄く器用でしょ?出来が良すぎて手造り感がちょっと少ないのよね」
……ちょっと少ない、じゃねえですよ!!あれは!!てっきり、どっかの人間国宝かなんかの職人さんが作った重箱かと思っていましたよ!!!そんなとこに無駄にハイスペックを発揮しなくていいのに!!ってゆうか!その規格外の器用さは、もっと娘との会話で発揮しようよ!!
知らないトコで、何やってやがるんだ!?ちゃんとしろよ、父!!
はぁ……。さっきより重い溜め息が漏れる。どっと疲れちゃったよ……私。
でも、夕飯前に練り上げた『お弁当リニューアル作戦』は、いきなり頓挫してしまったので……戦術の見直しに迫られている。戦略的な変更は極力避けたい。
「何かの行事の時に……お父様のを使うのは、いいと思ます……でも、普段使いには、ちょっと……」
「……ええ、確かに。アレはない、って」
アハハ、と軽く笑う母。いや、もう母でいい。
だったら止めろよおおっ!!
ふわり、と頭を撫でられる。
「貴方には見せないけれど、貴方が毎日アレを使っているのを玄関で確認して、物凄く喜んでるのは、知っていましたか?」
全然、喜んでるように見えねえよ!?ぶすっと仏頂面でガン無視だったよ??
「むぅ……自分で……普通のお弁当作ろうと……思っただけどなぁ……」
思わず、愚痴っぽく作戦の全容をこぼしてしまう。
ぴたり、とお母様の手がとまる。
「瀬梨華さん、お料理作りたいの?」
「……だめ、ですか?」
「ううん。ただ、こういう家柄では……お料理は使用人が作るもの、って考えるところも多いわ。……だから、そういう家のお友達とかに、今の話はしないほうがいいって思うの」
……ふむ。それは確かに。
「でも、私の実家では、私のお母様──瀬梨華さんのお祖母様ね──は、ときどき、お菓子やお弁当とか……軽食とか作ってくれたりしたのよ。すごく、嬉しかったわ」
お母様の実家は……イギリスの生粋の貴族だ。ウェールズのお城に住んでいる。二回しか会ったことはないけど、貴族様にしては結構気さくなお祖母様だ。そして、お祖父様は日本人で鍛冶職人。なので、お母様はハーフ。孫の私はクォーター。
……しかし、どういう経緯で、結婚に至ったんだろう??竜堂家のナゾだ。
機会があったら、お母様の実家にも行ってみたい。
──どうせ江戸っ子気質の頑固職人なお祖父様を生で堪能したいとか思ってるんでしょ??
う、うるさい!違う、違うんだ!
やめろ「せりか」!
そんな穢いモノを見るような目で睨むな!
「ほら、日本には『おふくろの味』という文化があるでしょ。だから、瀬梨華さんが料理を習うのは、とても良いことだと思うの」
文化……というのかどうか、私の中の埼玉出身29歳の生粋の日本人でも、分からないが。……お母様、たまに日本に対して微妙にズレてることがあるよなぁ。
「私は応援したいって思うのよ……でも、手造りのお弁当でしょ?……私は全然お料理できないから……」
お母様は、瀬梨華さんに何も教えてあげられないの……と、しょんぼり俯いてしまう。くうっ……そんなお母様もメチャ可愛いデス!
実をいうと、「しずか」の実家の大谷精肉店の惣菜コーナーで調理も高校卒業するまで手伝っていたんだよね。社会人になってから、自分の昼食用に毎日お弁当は作ってた。もし、親が病気で倒れたとか、そういう事態もふまえて調理師免許も取ったりしてたのだ。
……自分磨きちゃう!婚活の為じゃないんだってばああっ!!
だから、まぁ……作る環境と材料があれば、ちゃちゃっと作れるんじゃないかと思うんだよね。
問題なのは、いままで料理の“り”の字も知らない中学一年生が、とつぜん普通にお弁当作れちゃったら……少しヘン。
「大丈夫です。今日、学校の図書室から……『はじめてのお弁当』という本を、借りてきたので……それを見て、やってみようかなって」
ふふふ、この竜堂瀬梨華=シャーロット、転んでもタダでは起きてやりませんことよ。
そう!今日のお昼御飯は食べられなかったけど、そのかわりに図書室から幾つかお弁当の料理本をしっかり借りてきていたのだっ!
すると、お母様が急にハイテンションに……
「わぁお、瀬梨華さんが、そんなにヤル気を出してたなんて!」
なんか、すごく感激されて……確かに今までの瀬梨華だと、ありえない話だもんな……どうも、何か恐縮です。
──ええっ!?お料理、楽しみにしてますのにぃ。
今でこそ、そんな「せりか」だけど……お母様が言った通り、瀬梨華も『料理なんて下僕のすること』と公言して憚らなかった。
「しずか」が楽しく料理をする記憶、美味しいって言われた時の喜びの記憶、それらを共有してるのだ。「せりか」にしてみても、うわあ、何かスゴい楽しそう!!と思ってしまうのは、当たり前。
「よしっ!決めたわ。瀬梨華さんに料理を教えることはできないけど、そのかわりお父様の説得は任せて!」
お母様は、すっくと立ち上がると両手を胸元でグッと握りしめる。気合の炎がオーラのように燃えがってみえる。……ただ、お母様の気合の炎は、何かデフォルメちっくで可愛い感じに見える気がする。
「フフフ……この母に良い策があります」
お、お母様!?少し……キャラが違ってますよ?
読んでくださってありがとうございます。
蛇足的に補足しますと、物語の時制は……
唐突に主人公、昏倒する。
→3日間寝こむ
→さらに3日後の朝
→学校の校門の前で回想シーン突入
→回想中:登校初日(←Now!)
もしかして、わかりにくいですか??……わかりにくいですよね。
本当は、もっとササッと1話か0.5話分くらいで回想終わると思ってたんです……終わらなかった!orz
うう、普通に登校初日から
正順で話を書けばよかった(゜うェ´゜)
こんな行き当たりバッタリですが
引き続きがんばりますので、よろしくお願いします。