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第3話 黒革の手帳

武器商人ライデッカーの情報収集するためにトルコへ行く。ライデッカーの協力者に無法者モーロックの情報が浮上してその手下がドバイで死刑執行人リサに囚われていることを知ってドバイに向かう

「気づくのが遅れて申し訳ない」

シーボルトは頭を下げた。

「遅すぎでしょ!!もっと三十年前に来ていたら第三次世界大戦もなかったし、東京オリンピックだって

やっていた。三十億人もの人々が死ななくてもよかった!!」

氷見は目を吊り上げた。

「そうだよな。俺もバカげた契約しないでまっとうに刑期を終えていた」

エレミアが声を荒げる。

「ミュータント化した動物が凶暴化して退治にひと苦労しているハンターを見てみろ。奴らをもっと前に逮捕

していたら生態系は変わらなかった」

「しょせんお役人よね」

リックとジェルは怒りをぶつける。

「ではどうしろと言う!!我々も日々忙しいのだよ。やっと探し出してたどり着いた」

怒りをぶつけるシーボルト。

「ケンカはやめんか!!」

一喝するヨセフ。

振り向くシーボルト達

「ここは協力して戦うべきです。今なら間に合うと思います」

バージルは口を開いた。

「私達はそのためにいる」

ドールが言う。

「ワシはは六十五歳のジジイだが、おまえさん達は若い。現状を受け入れるしかないのだよ。起きた事は

戻せない。タイムマシンがからむ映画を見たことがあるか?ターミネーターでは「審判の日」は避けられ

なかった。なら現状をどうするか考えなければいけない。エレミア。ジジイの節介で悪いがその体を

受け入れるしかない」

重い口を開くヨセフ。

うなだれ船員の座るイスに座るエレミア。

「バージル、ドール。巻き込んで申し訳ないと思っている」

ヨセフは頭を下げた。

黙ったままのバージルとドール。

「時空管理局が追っているのがこの者達だ」

話を切り替えシーボルト。彼はスクリーンに何名かの名前を出した。

「ワシはこいつを知っている」

あっと声を上げるヨセフ。

「え?」

「サムエルと永野だ」

ヨセフは指をさした。

「知り合い?」

氷見とジェルが聞いた。

「ハーバード大学やオックスフォード大学の教授で学会でも一緒になった。ワシは会った事がないが、

この人はダイバーエージェンス播磨工業の創始者で社長のフランクリン」

ヨセフが中年の男性を指さす。

「最近会いましたか?」

バージルが聞いた。

「この二五年会ってない。音沙汰もないからてっきりあの戦争で死んだと思っていた」

ヨセフが首を振る。

「彼らは生きている。この二〇、三〇年、容姿は変わっていない。二人は迷宮機関の幹部で、フランクリンは

二十九世紀からやってきた異星人だ。フランクリンには二人の側近と司令官がいる。ハンナ、クシエル、

ピサロの三人だ」

シーボルトは画像を出した。

映像にさまざまな人種の人物が出てくる。日本人やモンゴル人、デンマーク、ブラジル系の人種もいる。

「バカな。永野とサムエルは若いままだ」

驚きの声を上げるヨセフ。

「ハルベリーみたいに改造しているとか?」

割り込むリック。

「否定はしない。ダイバーエージェンス播磨工業は存続しているうえに迷宮機関がある。そこにタイムスリップ

装置がある施設は別にある。我々も所在がつかめていない」

顔をくもらせるシーボルト。

「いきなり彼らに迫るのは無理ね。協力者から攻めていかないと虎は狩れない」

それを言ったのは氷見である。

「それはそうだ」

納得するジェルとリック。

「これだけの人物がいて武器を売りさばく売人や販売部門からいかないと弁護士がでてきてややこしくなるわ。

証拠を固めないと」

氷見が言う。

「エリオットやオスカー会長に相談した方がよくない?」

リックが割り込む。              

「他のロボットや機械を私は遠隔操作できます。つまり、米軍のイージス艦、駆逐艦でも簡単にシステムに

入れます」

バージルが笑みを浮かべる。

「それってターミネーターのT-Xと同じじゃん」

ジェルが驚く。

「迷宮機関にいろんな機能を加えられたので機械を操るのは簡単です」

言い切るバージル。

「それは心強い。タイムマシン装置を破壊してフランクリンをなんとか捕まえるんだ。時空管理局も

探しているんだ」

うなづくシーボルト。

「じゃあ決まりね」

氷見がうなづく。

「そのドアを抜ければ元の空間に戻れる」

シーボルトは言った。

 

 とあるビルの一室。その部屋には円板があり天井と壁に電磁場を生み出す四角形タイルがはめこ

まれている。天井の円盤からつながった二本の支柱がクルクル回っている。浅黒い肌の男は満足げに笑う。

 支柱の動きと電磁場から稲妻が放出され閃光とともに青白い光球が出現。その光球から現われる女。女は

無言で台から降りる。

 「サムエル博士。ライデッカー技師に装備を受け取るように言われました」

 女は口を開いた。

 「そこの台車に服がある。ライデッカーは市の階にいる」

 サムエルと呼ばれた黒人男性は機器の調整を操作しながら振り向く。

 女はそばにある台車にある服を着た。女は顔色一つ変えずに下の階へ降りていく。部屋でいろんな機器を組み

立てる浅黒い肌の男。

 「ライデッカー技師ですか?」

 女は聞いた。

 「なかなかいい女だ。君の許可証だ。名前はメイ。パスポートがこれだ。やることはわかっているようなので

改めて言わない」

 ライデッカーはパスポートと社会保障番号が書かれた保険証と携帯を渡した。

 メイと書かれた保険証、パスポート、携帯電話をもらうとさっさと出て行く。

 メイは車に乗ると人差し指を出した。その指はプラグに変形。車のカーナビに差し込む。

 カーナビに顔写真が何枚も表示される。第一目標に氷見十六夜、リック・シュルツ、ジェル・トムパッカーンと

ヨセフで、もっとも重要な目標はバージル、ドール、エレミアと表示される。第二目標がオスカー、イリーナ、

武藤、エリオット、ホランドである。

 「第一目標と最重要目標はトルコか」

 メイは車から降りた。



イスタンブール市内

「・・・未来人の言うとおりね。元の空間に戻った」

氷見はつぶやいた。

時空船のドアを出るとそこはコーヒー屋の外だった。

とてもすごい技術だ。時間と空間をつなげられるのだから。三十一世紀から来たならそれは簡単なの

かもしれない。

「バージル。探知できなかったの?」

ジェルが聞いた。

「向こうの方がはるかにテクノロジーは上ですね。船外がどうなっているのか探知は不可能でした」

バージルは答えた。

「三十一世紀はすごいテクノロジーが目白押しなんだろうな」

リックはつぶやく。

「ワシも驚きの連続だよ。船内にいる間は携帯は圏外になっていた」

ヨセフが口をはさむ。

「バージル。他に知り合いのサイボーグとか金属生命体はいるの?」

氷見が聞いた。

「終戦後、国連軍に監視下に置かれる前に他の仲間は自由にして逃がしました。今でもどこかに

隠れています」

バージルはどこか遠い目をする。

「でも塚本の依頼を受けたらあなたとドールが仲間になった。そしてハルベリーの依頼ではエレミアが。

今になって集まってきている。敵だって見ているはずね」

氷見が気になることを言う。

自分達は迷宮機関と関わっている。ゆえに迷宮側も警戒している

「オスカー会長はどこにいる?」

リックが聞いた。

「会長達は市内の国連事務所」

ジェルがタブレット操作しながら言う。

「依頼が来るのは時間の問題ね」

あっさり言う氷見。

「え?」

「ライデッカーは武器商人で迷宮機関と関わりがある。彼はよくアフリカに武器を売りに行く。エジプトから先

がつかめていない」

氷見が携帯で写真を出した。

「アフリカは塚本やハルベリー以上に危険よ。アフリカ地域はもっとも復興が遅れている。海に面している

国や都市は復興して基地があるけど内陸部は完全な暗黒地帯よ。もともと政情不安でクーデターが多い

地域もあった。そして核ミサイルと化学兵器の汚染で放射能病や奇形、障害者の発症率が八割、

ミュータント化した動物が野放し、無法者、盗賊、海賊のオンパレード。ライデッカーはそこで闇市場に

横流しにしている。それにアフリカへ行くパスポートはどの国も出していない。無法者、ミュータント化しした

動物を遮断するための高さ三十メートルの砂漠の壁が国境地帯にあって自由に行き来できない」

ジェルはタブレット操作しながら説明した。

「本当に暗黒大陸ね」

氷見がつぶやく。

これでは内陸部がどうなっているのかわからない。

「事務所に戻って考えようか」

ヨセフは言った。



イスタンブール港

メイは港からイスタンブール市内に入った。

彼女はタブレット端末を出した。地図にハンター事務所が表示される。画像に氷見達の写真が添付される。

メイは早足で歩き出した。


食堂でコーヒーを飲むリック、ジェル、ヨセフ。

氷見はお茶を飲んでいた。

バージルは窓の外をのぞいた。

「どうした?」

ヨセフが聞いた。

「迷宮機関のアンドロイドです」

バージルが答えた。

氷見の脳裏になにかよぎった。それは女暗殺者がやってくる映像だ。

「そいつを迎え撃つわ・・・」

氷見は最後まで言えなかった。バルカン砲の銃声が鳴り響き、彼らは身を伏せた。

窓から入ってくる女。

身構える氷見達。

「誰あんた?」

氷見は聞いた。

「メイだ。お前たちを抹殺する」

メイと名乗った女は片腕をプラズマバルカン砲に変形した。せつな、リックの短剣が何度も切り裂き、ジェル

の光球が貫き、氷見の影色の触手が巻きつき射抜く。しかし彼女は何もなかったように立ち、傷口は

すぐに治っていく。

メイとバージルが同時に動いてメイの方が吹き飛び、壁ごと下の道路に落ちた。

続いてドールのパンチ。メイが下の道路ごと三〇センチ陥没した。

エレミアは掌底の発射口から青白い光線が放出。メイが凍った。

事務所から飛び出す氷見達。

氷の塊にヒビが入り割れてメイが動いた。

バージルはその腕をつかみ背負い投げ。その頭をつかんで道路に何度もたたきつける。メイは足払いを

かけて転ばせ、片腕を短剣に変えて突き刺した。

「ぐふっ!!」

バージルは口から青色の潤滑油をしたたり落ち、その腕で彼女の腕をつかむ。

「私の主体コアは空母にある。おまえの主体コアはどこだ?」

バージルはにらんだ。

「おまえのプラグラムを破壊・・・」

メイは最後まで言えなかった。エレミアの腕の短剣で背中を貫かれ、ドールに頭部を突き刺されたからである。

メイは表情を変えずに体の向きを変えてエレミアとドールの胸を突き刺し、心臓をつかんだ。

「ぐああああ!!」

心臓を万力で締め付けられるような痛みに二人は身をよじる。

リックが動いた。通りすがりに爆弾をくっつけた。

メイは背中から金属の触手を出した。せつな閃光とともに爆発。

エレミアとドールを離した。

メイが向かいの壁に激突する。

バージルとドール、エレミアが同時に動く。メイが両腕から短剣を出して動いた。何度も交差してメイがたたき

つけられ、ドールとエレミアは隣りの家に突っ込む。

バージルの速射パンチをかわすメイ。

メイの鋭いキックを受け流しバージルのパンチを放つ。

メイは地面にバウンドして車に突っ込む。

氷見は切れた電線をつかみとっさにメイの首すじに突き出した。

バリバリ!!

瞬時に百万ボルトもの電流が流れた。頭部の部品や体の部品が飛び黒煙が出て倒れた。

バージルは足で踏みつけた。メイの首の背骨が壊れ部品が飛び出す。彼はメイの頭部を力ませに引きちぎる。

メイの体はもがいた。

「その状態では通信もできないようだ。おまえも死なないように改造された」

頭部だけとなったメイの顔を見ながら言うバージル。

「計画にない・・・」

くやしがるメイ。

トルコ軍の車両が接近してくる。トルコ軍のジープにエリオットが乗っている。

拘束ロープでメイの体をしばるドール。

「迷宮機関のアンドロイドを捕まえました。主体コアのある乗り物がどこかにあるハズです。その捜索を

手伝ってくれませんか?」

バージルは言った。


二時間後。トルコ空軍基地。

「ロボットの解体を見せられるとはね」

氷見、リックは声をそろえた。

国連軍も駐留する基地の格納庫でバージルは冷静に片腕をレーザーメスに変えて首元から腹部から

切開してドールが傷口を開く。

エリオット、オスカー、イリーナ、武藤、ホランドは黙ったまま見ている。

メイの頭部は台に固定されて口にガムテープが貼られている。

「メイの主体コアがある船は小型潜水艦だった。小型っても全長は一〇〇メートルでどこから見てもロシアの

潜水艦らしいよ」

ジェルが写真を見せた。

「あのアンドロイドはどうなるの?」

氷見が聞いた。

「コアと心臓、エネルギー発生装置は俺とバージル、ドールで吸収する。あの小型潜水艦の武器、主体コアも

俺達で仲良く山分けになる。停止したロボットやアンドロイドはそうやって俺達は吸収してきた」

エレミアは説明した。

「合理的なやり方だな。そうすれば復活しないからな」

納得するヨセフ。

「メイの頭脳にあったのは重要人物の抹殺だ。第一目標、最重要目標は氷見、リック、ジェル、ヨセフ、バージル、

ドール、エレミアと私とオスカー、イリーナ、ホランドと国連本部の総長。第二目標が総司令官、スクードの

メンバーだ」

エリオットは資料を見せた。

「でも想定外の事が起こって失敗した」

エレミアが言う。

「まさか君が電線で感電してショートさせるとは思っていなかった」

エリオットは腕を組んだ。

「運がよかっただけと思います。オスカー会長。ライデッカーに依頼書はきていませんか?」

話を切り替える氷見。

「ライデッカーは迷宮機関のメンバーだ。ただアフリカ諸国、インド、中東諸国から賞金がかけられている。

こいつと一緒にね」

オスカーは二枚の手配書を見せた。

「モーロック?」

ジェルとリックが声をそろえた。

「アフリカにある国でソラリス国があった。インド洋に面していて紅海を通過する船舶にとっては要所である

と同時に海賊、盗賊、無法者が跋扈している海域だ。モーロックはソラリス国を乗っ取り自分の王国を築いた」

ホランドが説明した。

「ソラリス国は三十年前から無政府状態で海賊、盗賊が跋扈していた。核ミサイルは落ちなかったが化学兵器

が蒔かれた。終戦後は放置されてモーロックが自分の王国を築く。内陸に砦を築いてそこにいるみたい」

ジェルはタブレット端末を操作する。

「国連本部もハンター協会もこの依頼はすすめていない。私もこの依頼は進めない」

オスカーは難しい顔をする。

「なんで?」

氷見が聞いた。

「アフリカの現状を知っているかね?三十年前とはまったくちがう。モーロック以外に無法者が縄張り争いを

している。もっと内陸部へ行けば死の湖、死の沼といった汚染地域がありゾンビもいる。無政府になったうえに

無法者が群雄割拠している状態なんだ。どこの国の大使館もアフリカへのパスポートは出していない。やっと

復興しているのはエジプト、スーダン、南アフリカといった海側だけ。国境は高さ三十メートルの壁で隔

てられている。通称「砂漠の壁」がある」

エリオットは地図を出した。

「本当に海側だけなんだ」

絶句する氷見、リック、ジェル。

「ライデッカーとモーロックは迷宮機関のメンバーと協力者という関係だ。ソラリス国は海側にあるぞ」

ヨセフが指摘する。

ソラリス国は正式な名前をソラリス民主共和国という。位置的にはアフリカの角と呼ばれた。一九九一年に

それまでの政権が失脚して憲法が停止になり内戦が始まり、無政府状態になる。それが第三次大戦では

化学兵器が何度も使用され多数の犠牲者が出た。終戦後はモーロックがやってきて自分の王国を勝手に

作り始めた。

「モーロックは横流しされた哨戒船やホバークラフト艇、装甲車、戦車を持っている。その武力で他国や他の

都市を略奪する。かならず襲うときは専用のバンドメンバーを連れていてへヴィメタル音楽を大音響でなら

しながら襲撃する。あだ名は「狂気のモーロック」「マッドモーロック」だ」

ホランドは資料を出した。

「国連軍もソラリス国に上陸したが陸上からレールガンで攻撃してくる。非常に強力な武器を持っている

から手が出せない」

オスカーは腕を組んだ。

「それをバージル、ドール、エレミアに行けというのは都合がよすぎませんか?」

けげんそうな顔の氷見。

「今回はヨセフ博士は同行ができない」

ホランドが顔をくもらせる。

「でも誰かが行かないといけない。エジプトがもっとも復興しているからそこで情報を収集しませんか。

止めても私は行きますが」

当然のように言う氷見。

「情報収集は許可する」

オスカーはため息をついてパスポートを渡した。

「それと君達にお客さんが来ている」

ホランドが口をはさむ。

「お客さん?」

聞き返す氷見。

「バージル、ドール、エレミアもだ。基地の応接間だ」

エリオットが言った。

氷見達は互いに顔を見合わせると格納庫から基地の官舎に入った。いくつかの部屋を通り過ぎて

応接間に入る。

そこに三人の自衛隊将校がいた。

「私は防衛省諜報部の高須と宮崎、田辺」

背の高い将校が自己紹介する。

「君らの事は聞いている。そのアンドロイドとサイボーグをチームに入れているとか」

宮崎が資料を見ながら言う。

「なんですか?」

けげんそうな顔の氷見。

「我々自衛隊はこの船の行方を捜している」

田辺は写真と資料を出した。

「護衛艦「あかぎ」?」

氷見が首をかしげた。

「空母?」

リックとジェルが声をそろえる。

「ヘリ空母です」

バージルが答えた。

「もう一隻空母がいたんだ」

声をそろえる氷見、リック、ジェル。

「大戦中に「あかぎ」は空母エスペランサーからの信号で我々を裏切り離脱した。主体コアにこの

日本人とパキスタン人のハーフのサイボーグがいた」

写真を見せる宮崎。

「何が言いたい?}

エレミアが声を低める。

「君のチームにアンドロイドとサイボーグがメンバーに入っている。それに裏切るように信号を出した

空母エスペランサーは目の前にいる。もう一度信号を出せば「あかぎ」だけでなく他の仲間だって出てくる」

高須は机をたたいた。

「なんか勘違いされていませんか?」

声を低める氷見。

「その空母と潜水艦と戦闘機は国連軍の船や戦闘機を次々撃墜、撃沈。ロボット軍団が出てきて我々は

多数の犠牲者を出した。それはロシアや中国、オーストラリア、アメリカも同じ。各国政府はそいつらを逮捕

して解体することをのぞんでいる」

高須は詰め寄る。

「それは出来ないと思います」

ドールが口をはさむ。

「彼らは金属生命体よ。簡単に解体なんてできないわ」

氷見は腕を組んだ。

ようするに自分達に「あかぎ」や他の仲間を連れてきて逮捕したいようだ。しかし彼らは迷宮機関と戦う

貴重な戦力だ。

「空母エスペランサー。「あかぎ」はどこだ?他の仲間もだ」

ドスの利いた声の高須。

「終戦後。私は仲間を自由にした。彼らは隠れている。あなた方には見つからない」

はっきり言うバージル。

「見つけ出してどうされるんですか?彼らを閉じこめるんですか?」

リックが声を強める。

「彼らの能力は電波妨害や他の機械のシステムに入ることは簡単で突破されます」

ジェルが言い寄る。

歯切りする高須、宮崎、田辺

「今、国連本部とハンター協会は迷宮機関を追っている。追い詰めるには彼らの力が必要なの。

あなた方にできますか?」

 鋭い質問をする氷見。

 無言になる三人の将校。

 「空母エスペランサー。ドール、エレミア。各国政府はお前達がスクードやハンター協会を離れた時点

で逮捕できる権限を持っている。それは「あかぎ」や他の仲間もだ」

 高須は口を開いた。

 「それはできないと思うわ」

 氷見が声を低める。

 「なぜかね?」

 キッとにらむ高須。

 「彼らは貴重な戦力よ。また必要になるわ」

 氷見はにらみ答えた。


 基地の格納庫に戻ってくる氷見達。

 「エリオット。あの三人の客はなんですか」

 氷見は聞いた。

 「船と人を探しに日本から来たと言っていた。私達はそれ以上の事は聞いてない」

 エリオットが振り向く。

 「彼らはバージルの仲間を血眼になって探しているようだった。気持ちはわかる」

 リックがため息をつく。

 「ロシア、中国も世界各国がバージル達を捕まえたがっているわね。迷宮機関のいらだちが隠れ

ているのかも」 

 ジェルが気づいた事を言う。

 「それは我々も同じようなことを思っている。塚本のアジトを急襲したのは君らのチームでその中で

空飛ぶ空母がいる。各国政府もびっくりしていた。てっきり解体されたものだと思っていた物が幽霊のよう

に現われた」

 ホランドがメイの解体をするバージル、ドール、エレミアを見ながら言う。

 「それはそうよね。どの国もあの戦争は悪夢だった。始めは人間同士なのに途中からロボットとの戦い

になった」

 氷見が視線をうつした。

 どの国もまさかロボットとの戦争になるなんて思っていなかった。迷宮機関はゲームを楽しむようにバージル達

を戦場に送り込んだ。人類の危機に気づいた各国の軍は国連軍を編成して戦った。終戦の二年前にバージル達

が迷宮機関を裏切って国連軍にくわわってロボット軍団を倒した。終戦から二〇年経っていても世界は深く

傷ついている。

 「モーロックや迷宮機関に深く侵入するには彼らが必要よ。そしてモーロックに近づくにはそいつの下で

働いていた連中の情報が必要よ」

 ジェルが困った顔をする。

 「死刑執行人ギルドに行きなさい」

 黙っていたイリーナが口を開く。

 「え?」

 「死刑執行人ギルドで一番凄腕の執行人を紹介するわ」

 イリーナはタブレット端末を出した。

 画面をのぞきこむ氷見、ジェル、リック。

 死刑執行人ギルドはハンター協会と同じように世界中に支部を持ち、本部はバンクーバーにある。執行人も

上位レベルも入れば下級もいる。一匹狼的なトップクラスは一握りしかいない。彼らのほとんどは依頼があれば

死刑を執行するだけ。執行人だけじゃ食べていけないからハンター稼業もやる。いわゆる「二束のわらじ」を

履いているのはけっこういるのだ。

 「パニッシャーのケビンは不在。リサならドバイで死刑執行のパフォーマンスショーをしている。彼女は

一匹狼的にハンター稼業もする。たぶん闇の仲介人やブローカーも捕まえていると思うわ。行ってみたら?」

 イリーナは笑みを浮かべる。

 「わかったわ」

 氷見は名簿を受け取る。

 「バージル達は置いていけ。中東各国はロボットは介護ロボットしか置いていないし、バージル達を

知っている者が多い」

 オスカーが口を開く。

 「死刑執行人ギルドのアブダビ中東支部にも言っておくわ」

 イリーナが言う。

 「この基地からオスプレイが出るからそれで行け」

 オスカーが言った。


 三時間後。UAEドバイ

 アブダビ首長国はアラブ首長国連邦を構成する首長国。アラビア湾に突き出たT字型の半島部を中心

とした地形で、アラブ首長国連邦の中でも最大の面積、人口、収入を持つ。特に面積六・七万平方キロは

連邦全体の八・三万平方キロの大半に及び、広大な国土に埋蔵された豊富な石油資源によって連邦の

政治、経済を支える事実上のリーダー国である。

アラブ首長国連邦のGDPの十五%を産し、アブダビ証券取引所やアラブ首長国連邦中央銀行、アブダビ

投資庁、大手通信会社のエティサラート、国営石油会社、アブダビ海上操業会社などもここにある。

 ドバイはアラブ首長国連邦を構成する首長国のひとつ。また、ドバイ首長国の首都としてアラビア半島の

ペルシア湾の沿岸に位置する都市である。

中東屈指の世界都市並びに金融センターであり、二十一世紀に入ってから多くの超高層ビルや巨大モール、

ビッグプロジェクトが建設されるなど、世界的な観光都市となっている。アブダビも核攻撃は主に砂漠地帯に

落ちて破壊は免れた幸運な都市にすぎない。

そんな都市の一角にアイドル専用の劇場はあった。ここはアイドルから死刑執行人のアイドルによる

公開処刑まで行われていた。

 ・・・そろそろ時間か。

 女は壁の時計を見上げた。彼女はロッカーから刑務官服を着用する。

 ステージでは観客達が首を長くして待っている。作曲もやるし作詞もする。いわゆるアイドルだが普通に

アイドルはやっていない。

 女は手馴れた手つきで長剣や銃が納められたベルトを着用する。

 私は死刑執行人のリサ。もちろん賞金稼ぎのハンターのようにハンターもするが本職は死刑執行人。

ハンター協会から許可証もあるし殺人許可証も所持している。ただ死刑を執行するだけならそこらにいる

死刑執行人と同じになるから好きだったアイドルやりながら死刑執行をパフォーマンスショーとして自分の

ファン達に見せている。ファンは自分の子供のように大事だ。

 リサは控え室から出ていくつかの部屋を抜け長い廊下を進む。彼女は資料が入ったタブレット端末

を操作する。

 今度の死刑囚はあだ名は「チビ」身長は一四〇センチのおじさんである。ただのおじさんではなく闇で

武器商人に仲介するブローカーである。武器商人の中には複数の国から逮捕状が出ている者もザラ

にいるし、警察やハンター達は協力者や小物から逮捕して最後の”「虎」を退治するのだ。この死刑囚

もそういった小物の一人だ。

 リサは収容檻のある石部屋に入った。

 マネージャーにタブレット端末を渡す。

 「こんにちは」

 リサはのぞきこんだ。

 死刑囚が力なく振り向いた。

 「眠ってたのかしら」

くっきりと口角の上がったバラ色の唇。

肩口から溢れる陽光のような金髪。

武骨な刑務官服に包まれた豊満な身体。

底冷えするほど寒いのに饐えた空気が充満するこの場に、その存在はいかにも場違いだ。

死刑囚は顔を上げた。

また夢を見ているのだろうか。ああ、甘い香りがする。

「さあ、いい子ね」

扉の鍵が外され、リサが手を伸ばした。

慈母の微笑み。

しかし死刑囚「チビ」はその手を掴まない。反抗しているのではない。掴むことができないのだ。死刑執行

が決まり何も食事が食べられなくなりガリガリにやせて力がでなかった。

「ああ、忘れてたわ」

リサはそう言うと格子を潜って房に入り、ベッドに仰向けになったままの「チビ」の横にやって来た。

格子窓から差し込む西日を受け、金髪がキラキラと輝いている。

リサは「チビ」の背中と膝裏に腕を差し入れ、ひょいと持ち上げてみせた。

監房を出た女はわたしを横抱きに抱えたまま、レフランプの照らす

無機質な廊下を歩き出した。この廊下の向こうはステージである。

「チビ」にも観客の歓声が聞こえる。自分はこれから公開処刑される事に気づいてた。気づいてももうどう

にもならないが。

衰弱した「チビ」の脚は、彼女の二の腕ほどの太さしかない。リサの張りのある胸に身体を預けると、

やはり甘い香りがした。

ようやく全てが終わるのだ。ゆるゆると生きたまま腐っていくような日々が。

長い廊下を抜けると扉の向こうはステージだった。

驚きの顔の「チビ」

ステージ前や二階席にまで観客がいる。

「怖がらなくていいのよ」

リサは耳元でささやきソファに「チビ」を座らせた。

リサはいきなり振り向きざまにナイフを投げた。

キーン!

というかん高い音をたててナイフは誰かの短剣になぎ払われ天井に刺さる。

ステージの暗幕から出てくる三人の男女。

「誰あんた?」

リサは振り向いた。

「私は東京支部ハンター協会の氷見十六夜。隣りはリックとジェル」

氷見達はステージに出てくる。

観客達もシーンとなる。

「私のステージを邪魔する気?」

リサが目を吊り上げた。

「勘違いしないでくれる。私達はそいつに用があるの」

氷見は死刑囚「チビ」を指さす。

「こっちはあんたの趣味に付き合うほど時間があるわけじゃない」

ジェルが言う。

「用が済んだら俺達は帰る」

リックが口をはさむ。

リサと氷見達は遠巻きににじり寄る。

四人が同時に動いた。

リックの速射パンチをすべて受け流すリサ。

ジェルの蹴りと氷見のパンチをかわして姿が消えた。

「・・・消えた」

絶句するリック。

氷見の後ろ回し蹴り。

リサは姿を現すなりソファの隣りに姿を現した。

「こいつテレポーターだ」

ジェルが身構えた。

「おもしろい展開ね」

氷見が長剣を抜いた。

このリサという女がトップクラスの死刑執行人なのは知っている。ここに来る前に死刑執行人ギルドで

名簿を見たから。本当のトップクラスは死刑執行人「パニッシャー」で彼は一人で犯罪組織やゲリラ組織

を壊滅させる。リサがなんで一匹狼的な活動が出来る理由は彼女がテレポーターだからだ。テレポートが

得意な能力者だからそういう芸当ができる。

そのうえ、この女はアイドルときている。ならこっちもプロのハンターの意地がある。少し付き合って

やってもいい。

 リサは長剣を抜いて動いた。

 氷見とリサの剣が何度も交差する。

 「あんまり時間がないんだけど」

 氷見はにらんだ。

 「迷惑料払ってもらうからね」

 リサは言い返す。

 リックが動いた。

 リサは氷見の剣を弾き、何度もテレポートしながらリックの剣を受け払う。

 観客も死刑囚「チビ」も二人の動きは見えなかった。

 ジェルはまんじゅうをこねる動作をすると掌底を向けた。黄金色の光球が放たれる。

 リサは連続でリックの剣をかわして光球をテレポートでかわした。

 氷見は剣をなぎ払う。

 リサも受け払い、ジャンプ。

 氷見もジャンプして天井から下がる照明に着地。二人の剣が再び交差する。

 「あんたも物好きね。あんなロボットとサイボーグをメンバーに入れるって」

 リサは口を開いた。

 「成り行きでそうなった」

 氷見は答えた。

 「死刑執行人の間じゃあ有名よ。あの「チビデブ」と銀髪女を仲間の死刑執行人に引き渡したって」

 リサがふと思い出す。

 「依頼を持ってきたのは国連本部よ。それをオスカー会長が持ってきただけ。任務をこなしただけ」

 「わざわざ人のステージを壊してここに来た理由は?」

 「そこの「チビ」はモーロックやライデッカーの仲介人やブローカーをしていた。かなり近い場所にいた

重要参考人よ」

 氷見は答えた。

 「あんた本気でモーロックのアジトへ行くつもり?」

 リサが聞いた。

 「誰かがやらなければいけないでしょ。あいつは複数の国から賞金をかけられている。死刑執行人ギルド

にも手配書があったけど」

 氷見が声を低めた。

 「知っている。死刑執行人も数百人ほど行ったけど誰一人帰ってこなかった。これはウワサだけど闇の

死刑執行人がいる。そう意味ではアフリカは死の大陸よ。あの大戦ですべてが変わったからね」

 リサは剣を弾くとステージに降りた。

 氷見も降りてくる。

 「好きなだけそいつに聞いていいけど」

 リサは促した。

 リックとジェルが近づく。

 「ねえ、あんた。こいつを知っている?」

 氷見はモーロックとライデッカーの写真を見せた。

 「私は武器の仲介をしただけだ。それ以外は知らなくてもいい情報だからね」

 「チビ」は視線をそらした。

 「砂漠の壁から向こうは行った事は?」

 氷見が聞いた。

 「何度もある。合言葉が必要で「チビデブ」のアジトを経由して入ってモーロックの手下に渡した。だが

「チビデブ」は死刑執行人に引き渡された。たぶん変更されている」

 おぼろげながら思い出す「チビ」

 「他に経由できる所は?」

 氷見が聞いた。

 「ガイドを探せ。そいつはエジプトの闇市場に出没する。黒マントを羽織っている」

 「チビ」は真剣な顔になる。

 「わかった」

 うなづく氷見。

 「本当に行くつもりか?」

 「チビ」が聞いた。

 「なんで?」

 氷見が聞き返す。

 「文字通りアフリカは暗黒の死の大陸だ。地獄だぞ」

 忠告する「チビ」

 「だからロボットとサイボーグを連れて乗り込むの」

 氷見は答えるとステージを降りていく。

 リックとジェルもついていく。

 リサもステージを降りた。

 「あんた」

 氷見達が振り向く。

 「これがあいつが持っていた「黒革の手帳」と顧客リスト」

 リサは投げた。

 リックはそれを受け取る。

 「それと死刑執行人ギルドのデータアクセスキー。使ったらギルドの局長に渡してね」

 リサは鍵を投げた。

 氷見はその鍵をつかむ。

 「あいつのデータにアクセスしたければ好きなだけしていい。聞かれたらリサに好きに使っていいと

言われたって言えばいい」

 リサは腰に手を当てる。

 「ありがとう。あんたのステージを邪魔して悪かったわ」

 あやまる氷見。

 「忠告するわ。闇の死刑執行人に気をつけることね。あのロボットとサイボーグに高額な懸賞金が

賭けられている。連中は非合法でやっている。ギルドとも関係がないから好きなだけ殺れる。あんた達

が死んだら骨だけは拾ってあげる」

 忠告するリサ。

 「迷惑料請求なら東京ハンター支部か国連事務所にして」

 氷見はフッと笑う。

 三人はステージを出て行く。

 「この黒革の手帳・・・迷宮機関のメンバーからブローカー、仕入れ業者まで名前が入っている。

顧客名簿はダイバーエージェンス播磨工業の重役や社長まで入っている」

 劇場を出て感心するリック。

 「あの死刑囚の「チビ」はすごいマメにメモをするメモ魔だったのね」

 氷見はメモ帳をめくる。

 メモには地図や武器の詳細、合流場所が書かれている。この細かいメモから見るとモーロックのアジト

までの行き方まで載っていそうだ。

 「アクセスキーをドバイで使う?」

 ジェルが聞いた。

 「イスタンブールにいったん帰ってバージル達とやった方が安全にハッキングできるわ」

 氷見は言った。


 三時間後。イスタンブール市内

 市内の死刑執行人ギルド支部に入る氷見、ジェル、リック、バージル、ドール、エレミアの六人。

 三階の事務室にあるPCからリサからもらったアクセスキーを差し込んだ。

 「これはすごいな。死刑になった死刑囚の名簿だ。あの「チビ」も入っている」

 リックが指摘する。

 「名前はマウスで武器の横流し、薬物、違法な物資もモーロックや無法者達に売りさばいていた

ブローカーね。彼は小物でもネズミでもない虎に近いわ」

 氷見が気づいた。

 モーロックだけでなく社長のフランクリンやサムエル、永野の名前まである。そして数字か

番号が並ぶ。

 「この番号はロボットですね。数字と形式はロボットのパーツ部品です」

 バージルが指をさす。

 「席を替わる?」

 ジェルが促した。

 バージルは手首からケーブルを出してPCに接続した。

 画面が高速でスクロールして切り替わる。

 「すごいわ」

 感心するジェル。

 「終戦後にアンドロイドと装甲車がモーロックに売られた経歴がある。そして女性サイボーグと宇宙船、

護衛艦あかぎ、偵察機は敗戦置場やロボット廃棄置場で見た。護衛艦あかぎは廃棄部品を運ぶ

運搬船としてアフリカの海域を行ったり来たりしている」

 バージルは暗号化された情報を読んだ。

 「ええええ!!」

 氷見達の驚きの声が響いた。

 「護衛艦あかぎを先に見つけましょう。自衛隊や日本政府が血眼になって探している」

 バージルが振り向く。

 「ヘリ空母がどうやって廃品運搬をしているんだよ?」

 リックが疑問をぶつけた。

 「彼にはカメレオン能力がある。バレる前に逃げているだろうから自衛隊が嗅ぎつける前に

見つけないといけない」

 席を立つバージル。

 「どこに行くのよ」

 氷見が聞いた。

 「彼の信号は知っている。今、地中海にいます」

バージルは何か決心したように言う。

 「わかった。手伝うわ」

 氷見はうなづいた。

 「本気か?」

 リックは思わず氷見の腕をつかむ。

 「自衛隊が先回りしていたら私達は捕まって刑務所行きよ」

 ジェルが心配する。

 「おとなしくその時は刑務所に入るしかないな」

 エレミアは視線をうつす。

 バージルとドールは先に部屋を出て行く。

 「護衛艦あかぎを日本政府が捕まえたら解体するわ。それを一番喜んでいるのは迷宮機関よ。

他の仲間だって同様よ。他国政府も悪夢は忘れたいから解体したい。喜ぶのは迷宮機関だけ。

私は行くわ」

 氷見は出て行く。

 リックとエレミア、ジェルは顔を見合わせると追いかけた。

 

 艦橋で氷見は黒革の手帳を開いた。

 顧客名簿をのぞくリックとジェル。

 「死刑囚チビはマメがつくほどメモ魔だな」

 エレミアは二冊目の黒革の手帳を見ながら感心する。

 「これを見ると誰にどの品物を売れば高く売れるのか書いてある。終戦後はロボットは介護ロボット

しか売れないからアフリカの無法者、海賊、ゲリラに売りさばいている。他国政府に逃亡したロボット

を捕まえて売っている」

 ジェルはメモをたどりながら言う。

 「じゃあ囮捜査もできるわね」

 しゃらっと言う氷見。

 相手のほしい物をくれれば接触できる。ロボットに行き着くだろうし大虎に近づける。

 艦橋の窓から穏やかな海が見える。「あかぎ」はこの海域のどこかにいる。

 そこに小さな黄金色の光球が現われる。司令室にいる主体コアの球体の小さいタイプだ。

 「自衛隊の船や哨戒機が飛び回っています」

 バージルが海図をスクリーンに出す。

 「イージス艦二隻と護衛艦五隻。対空母、アンドロイド兵器を積んでいます」

 ドールが分析した。

 「私は光学迷彩は使っていません。彼らは無視して捜索しています」

 バージルが言う。

 「あのイージス艦に量子間テレポートできる?」

 氷見がひらめいた。

 「護衛艦「たきなみ」ですね。貨物室にテレポートできます」

 バージルが言う。

 「え?」

 「自衛隊は血眼になって「あかぎ」を探していた。そこへその情報を持ってきた奴は誰なのか知りたい。

それに死刑執行人ギルドにロボットが売れる事をしゃべった奴が誰なのか知りたい。これが終わったら

リサにも聞きたい事はたくさんある」

 氷見が口を開く。

 そうしなければこんな都合よく見つかるハズがない。

 「エレミア、リック、ジェル行くけどいい」

 氷見が聞いた。

 「わかった。付き合う」

 リックとジェルはため息をつく。

 エレミアはうなづく。

 「量子間テレポート開始します」

 バージルは言った。

 四人の姿が青白い光に包まれて消えた。次の瞬間、貨物室に現われた。

 「フルメタルミサイル準備完了」

 艦内アナウンスが聞こえた。

 「まずい」

 エレミアがつぶやく。

 「フルメタルミサイル発射」

 艦内アナウンスが再び聞こえた。

 「艦橋を制圧しよう」

 エレミアはドアを開けた。

 

 護衛艦「あきづき」が放ったミサイルは正確に大型貨物船に命中した。姿が揺らいで陽炎のような幕が

取れるように青白い光とともに正体があらわになる。

 ヘリやオスプレイ、垂直離着陸できる航空機を着艦できる全通甲板。空母のような外観。それはどこから

見てもヘリ空母である。艦名は「あかぎ」自衛隊の船である。

 護衛艦「いせ」「いずも」の後継艦といってもよく改「いずも」といってもいいほどの艦容である。「いせ」

「いずも」と違うのはヘリやオスプレイだけでなく垂直離着陸できる戦闘機を配備している。そのうえ、

陸自の戦車や装甲車、人員を載せられる揚陸艦としての顔を持っていた

せつな。フルメタルミサイルが四発貫く。

「ぐあっ!!」

護衛艦「あかぎ」はくぐくもった声を上げ、スピードが落ちた。貫かれた傷口から黒煙が上がる。

他の護衛艦から対艦ミサイルが発射される。

そのミサイルを撃墜するバージル。

空母エスペランサーの姿を見てどよめく自衛官達。

「たきなみ」の艦内でラッタルをのぼる氷見、ジェル、リック、エレミア。そこはヘリ甲板と格納庫である。

そこで作業をしていた自衛官達が振り向く。

リックが動いた。

自衛官達にその動きは見えなかった。気づいた時には足元に五、六人の自衛官が目を剥いて倒れていた。

ヘリ格納庫から出てくる女性自衛官。髪は黒髪でも顔はメイにそっくりだ。

「あいつアンドロイドだ。メイ型の量産型がなんでいる」

エレミアは身構えた、あごでしゃくった。

リックはジェル、氷見を抱えて動いた。

エレミアはメイの顔をした女性自衛官に飛びかかった。

リックは猛スピードで艦橋構造物を駆け上がり艦橋ウイングに着地した。艦橋内部に飛び込む氷見、

ジェル、リック。

「なんだおまえたちは?」

艦長は銃を抜いた。

とっさに蹴り上げる氷見。彼女は長剣を抜いた。

艦長の首もとに突きつける氷見。

「やめろ。我々は日本政府の要請で出動している」

艦長の声が震えている。

「私は国連組織「スクード」のメンバーよ」

氷見は語気を強める。

「国連組織が何の用だ」

艦長が聞いた。

「理由は簡単。護衛艦「あかぎ」を見逃すこと。簡単な取引でしょ」

「バカな。そんなもの受け入れられない」

「じゃあ「あかぎ」をどうするつもり?あんた達じゃ手に負えないけど」

「世界の政府機関はあの空母エスペランサーをはじめ二〇年前の戦争の遺産は残らず解体することに

決めている。残してはいけないのだ」

顔を朱に染めて声を荒げる艦長。

「国連軍やスクード、ハンター協会は迷宮機関を追っている。それには「あかぎ」やエスペランサーの力が

必要よ。迷宮機関があの第三次世界大戦を起した張本人よ。あの空母二隻やエレミア達はプログラミング

されただけ。連中はゲーム感覚で見ていた」

目を吊り上げる氷見。

「我々は「あかぎ」を連れ帰り解体する。「「あかぎ」にいるサイボーグも逮捕状が出ている。裁判後は

死刑になる」

反論する艦長。

「どうやって殺すの?」

ジェルがわりこむ。

「ハルベリー博士はサイボーグだった。二匹で一つの機械龍の片割れが死んだら力を失った。もう一匹は

彼女自身だ。彼女のコアと心臓を取れば死ぬ。なら「あかぎ」だって同様のことができる」

自信ありげに言う艦長。

「君らのおかげだよ。あの空母エスペランサーだって殺せるんだ」

副長がわりこむ。

「じゃあどうやって迷宮機関と戦うんだ?」

リックが詰め寄る。

「彼らがいなければ戦えない。相手は私達より進化したテクノロジーを使う未来人よ」

氷見が声を荒げる。

護衛艦「たきなみ」に接近する空母エスペランサー。

艦長と副長の顔色がくもった。

「あんた達の船に別のアンドロイドが紛れ込んでいた。それに日本政府と自衛隊に護衛艦「あかぎ」の

居所を教えたのは誰?」

氷見が核心にせまる。

「大使館と死刑執行人が捕まえたブローカーからの情報だ」

艦長が答えた。

「艦長。国連本部からです」

副長がわりこんだ。

艦長は副長が持ってきた暗号を解読する。

「君らは運がいいようだ。国連本部から護衛艦「あかぎ」への攻撃を中止せよとの通達が来ている。よって

我々は引き上げる」

艦長は歯切りしながら言う。

「それはよかったわ」

しれっと言う氷見。

「でも覚えておくがいい。空母エスペランサーと「あかぎ」「イスベル」と無人機にかかわるとロクな事がない。

それにどこへ行っても監視がついていることを忘れるな」

艦長は声を低めた。

「わかったわ」

氷見はうなづくと艦橋を出て行く。

氷見達は少し助走をつけて接近してきた空母の甲板に飛び移った。


イスタンブール港の隣りにある国連軍基地に入港する空母エスペランサーと護衛艦「あかぎ」

全長二四八メートル。二万トン前後。陸自の車両や人員も搭載しての揚陸艦としての役割も備えている。

「空母がも一隻増えたな」

岸壁でつぶやくエリオット。

「なんか頭が痛いな。世界の政府機関を説得して理解を得なければいけないな」

ホランドが言う。

甲板から岸壁に飛び降りる氷見達。

「もう一人は誰ですか?」

武藤が口を開いた。

「彼はカラーム・滝本逸郎・シェローム。護衛艦「あかぎ」に主体コアがある」

エレミアが答えた。

振り向く氷見達。

自分達が岸壁に上陸するまで「あかぎ」から出てこなかったサイボーグがいる。浅黒い肌に黒髪の短髪。

顔立ちは東南アジア系でインド人に近い。顔立ちに少し幼さが残る。白色のサイバネティックスーツに

緑色のアーマーを着用している。

 「彼は高校生?」

 「中学生?」

 氷見、ジェル、リックが声をそろえる。

 「僕は三十年前は二十二歳です。父は日本人で母はパキスタン。京都大学を卒業して就職先を探して

いたらダイバーエージェンス播磨工業の社員が声をかけてきて月収は三十万で社会保証とか保険も

いくつかついて、農業について学べる部署もあると聞いて面接に行った。そこから先が覚えてない。

気がついたのは大戦末期で迷宮機関を裏切る前にバージルがプログラミングを消去してくれた。

大学で農業科を学んで、ダイバーエージェンスでも農業を学んだら実家のモモ農家を継ごうと思った」

 滝本は重い口を開いた。

 「実家はどこなの?」

 氷見が聞いた。

 「青森です。両親や兄が生きている事は知っています」

 視線をそらす滝本。

 「あの艦長が言っていたけど日本政府や自衛隊から逮捕状が出ていて、帰ったら裁判所で裁判されて

死刑になるというのを聞いた」

 ジェルがふと思い出す。

 「滝本。あなたは青森の実家に帰れたら何がしたいの?」

 氷見が聞いた。

 「実家のモモ農家を継ぎたい。そして農学博士になって植物の栽培をしたい。食料になる作物が強ければ

干ばつにだって耐えられる物ができると思う」

 真剣な顔になる滝本。

 「では国連本部から日本政府に逮捕しないように要請する。それに研究所を紹介する」

 エリオットが口を開いた。

 「え?」

 「優秀な農学博士や植物を研究する研究者はどこも欲しがっている。確かに砂漠化が広がっている。

サハラ砂漠は三十年前よりも広がり、アフリカ大陸全体に広がっている。君はサイボーグで主体コアは

「あかぎ」にある。そのパワーを植物研究に使えるだろう」

 ホランドがわりこむ。

 「このままだと食糧難が確実になります。品種改良されて、干ばつに強い種があれば悩まなくて済むし、

砂漠が緑地化だってできると思います」

 何かを決心したように言う滝本。

 「いい心がけだ」

 オスカーは滝本の肩をたたく。

 「私とホランドで青森の実家に行こう」

 エリオットが少し考えてから言う。

 目を輝かせうなづく滝本。

 「君達はどうする?」

 オスカーが聞いた。

 「私とリック、ジェルはリサにもう一度会いに行く。聞きたい事が山ほどあるからバージル達はヨセフ博士

をお願いします」

 氷見が答えた。

 「死刑執行人リサは今、南アフリカに買い物に来ています」

 バージルが口をはさむ。

 「国連軍の飛行機を借りるわ」

 氷見が周囲を見回す。

 「使っていい。全員が戻ってきたらエジプトに出発する」

 エリオットはうなづいた。


 二時間後。

 氷見は窓から眼下に広がる雲海を眺めていた。眼下の雲海は何もなかったように雄大に広がっている。

 「国連軍もいい飛行機を持っている。それも垂直離着陸機能があって、ミサイルもあってステルス

機能がある」

 リックは口を開いた。

 「この技術も二十年前の大戦でロボット軍団から奪ったそうよ。だから対ロボット、サイボーグ、アンドロイド

兵器があるし、ミュータント動物兵器があるの」

 ジェルはタブレット端末を操作する。

 「確かにあの戦争は私達に技術的に進歩させた。それでも迷宮機関には勝てないわね。向こうの方が

科学力は上よ」

 氷見は雲海を見ながら言う。

 あの戦争でおびただしい犠牲者と放射能、化学兵器による汚染をもたらしたが逆に放射能除去や

宇宙防護服といった技術をもたらした。太陽発電、藻発電、水素を使った動力は普及しているし石油に

頼らなくても生活できるようになった。でもバージルの言う反重力やヴェラ二ウムを制御する機関は

開発されていない。

 「バージルも言っていたけど隕石の力をエレミア達に分けたそうだ。どうりで死なないわけだな」

 リックが感心する。

 「そうね」

 氷見は黒革の手帳に視線をうつす。

 「気になるのね」

 ジェルが聞いた。

 うなづく氷見。

 彼らを乗せた航空機は南アフリカ上空に入った。


 南アフリカ共和国、通称南アフリカは、アフリカ大陸最南端に位置する共和制国家で、イギリス

連邦加盟国である。東にスワジランド、モザンビーク、北にジンバブエ、ボツワナ、西にナミビアと国境を接し、

レソトを四方から囲んでいる。南アフリカは首都機能を

プレトリア(行政府)、ケープタウン(立法府)、ブルームフォンテーン(司法府)に分散させているが、各国の

大使館はプレトリアに置いていることから、国を代表する首都はプレトリアと認知されている。

ヨハネスブルグの北五十五キロにあり、地理的にはブッシュベルトとハイベルトの間のマガリースベルク

山地の谷間に位置するため、

寒気から守られている。亜熱帯気候である。

プレトリアは、南アフリカ共和国ハウテン州北西部のツワネ市都市圏にある地区。同国の首都である。

二〇〇〇年までは、単独の都市としての権限を有していた。アフリカ有数の世界都市であり、アフリカ最大

の経済大国、南アフリカ

共和国の政治的な中心都市の一つであるため、アフリカでも最重要な都市の部類である。


 どれにしようかな?

 若い女性日本人観光客は鼻歌を歌いながら有名ブランドのバックを見比べていた。

 ネイルはバッチリだし、報酬は入ったし。

 鏡を見て笑みを浮かべる女性。

 女性は鏡の後ろにうつる人物達を見て笑みが消えた。

 「リサ。いい趣味しているわね」

 氷見がしれっと言う。

 「またあんた?死刑囚「チビ」の証拠品はあげたでしょ」

 つっけんどうに言うリサ。

 「死刑執行人ギルドのデータベースにロボットと部品パーツ、アンドロイド、サイボーグの名前が

あったのはなぜ?」

 氷見は核心にせまった。

 「・・・ここじゃあれだから外で」

 リサは周囲を見回すと手招きした。

 市内にある公園で入るリサ達。

 「死刑執行人ギルドは闇のブローカーや武器商人、仲介人を長年の調査に上に捕まえている。

捕まえた連中はみんな刑務所を何回も入っているし、何回も脱獄した事もある連中ばかりよ。事情聴取

やガサ入れで立件しているし冤罪が発生しないようにしている」

 リサは噴水の回りを歩きながら説明する。

 「あなたはアクセスキーを持っていたけど上位レベルなら持てるの?」

 「レベル6以上だけ。私はレベル6だから許可されて持っている」

 「私達はレベル5よ。オスカー会長がレベル7でエリオットがレベル10でイリーナと武藤がレベル6だと思う」

 おぼろけながら思い出す氷見。

 ハンター協会でも情報にアクセスできる権限がレベルによって決められている。それは死刑執行人ギルド

でも同様のようだ。

 「まさかギルドに迷宮機関が入り込んでいるとでも言いたそうね」

 リサはけげんそうな顔をする。

 「相手は名前の通り迷宮よ。迷宮はいったん入り込むと迷って出られない。迷宮機関はハンター協会や

執行人ギルドにすでに入っているんじゃないかってね」

 ジェルが疑問をぶつける。

 「私が迷宮機関だったらあんた達はとっくにあのステージで死んでいたでしょうね」

 リサは腕を組んだ。

 「迷宮機関が本気でやってきたらあんたの好きなエステも買い物もできなくなるけど」

 氷見が詰め寄る。

 「それはそうだろうね」

 リサは視線をうつす。

 「あの向こうに砂漠の壁がある。その壁を越えて取引した闇の商人を数百人以上捕まえている。彼らが

言うにはミュータント化した動物をあまり見ないというのよ。たぶん合言葉で安全に入れている

のかもしれないけど」

 リサはおぼろけながら思い出す。

 「それはそうだろうな。大事な商売相手が死なれたら困るからな」

 リックがうなづく。

 「じゃあ一緒にモーロックのアジトに行かない?」

 氷見が誘う。

 「私も仕事があるの」

 腕を組むリサ。

 「砂漠の壁の向こうを見たいと執行人ギルドの連中は言わないの?」

 「あまり言わないけど私は興味はある。砂漠の壁を近くでなら見れる」

 リサは答えた。

 「確か南アフリカの砂漠の壁は三重になっているというのを聞いたわ」

 ジェルがわりこむ。

 「国連軍と死刑執行人ギルドとハンター協会が壁を守っている」

 リサはタブレット端末を出して地図を出して三重の壁を出した。

 「夜は確か立入禁止だから明日の朝ならギルドから許可がもらえる」

 リサは画面を操作しながら言う。

 「泊まれる所があるの?」

 身を乗り出す氷見。

 「私が泊まっているホテルを紹介するわ」

 リサはフッと笑う。

 「それはよかったわ」

 氷見はうなづいた。


 翌朝。

 ロビーに集まるリサ、氷見、リック、ジェルの四人。

 時計を見るリサ。

 近づいてくる清掃作業員。

 「君らはイスタンブールに帰らないのかね」

 荷台を押していた作業員が顔を上げる。

 「シーボルトのおじさん」

 あっと声を上げる氷見。

 「誰?このおっさん。知り合い?」

 リサが聞いた。

 「勝手に出てきて予言してくれる変なおじさん」

 氷見が腕を組んだ。

 「砂漠の壁の見物は短時間にしなさい。それ以上は保証できない」

 シーボルトは真剣な顔になる。

 「危険は承知で行く」

 リックが言う。

 「この三十年。南アフリカにはミュータント化した動物は現れていない。行くわよ。私も忙しいの」

 リサはしれっと言うと時計を指さす。

 「そうね。迎えのヘリが来る時間だわ」

 氷見はうなづくとエレベーターに乗る。

 ホテルの屋上に出てくる四人。

 屋上のヘリポートに国連軍の武装輸送ヘリが着地した。そのヘリに乗り込む四人。

 上昇するヘリ。

 眼下の街を見下ろす氷見。

 シーボルトの心配はわかる。でも行って見ないとわからないものもある。

 輸送ヘリは砂漠の壁へ飛び去った。


 二時間後。

 輸送ヘリは国境警備隊の基地に着陸した。

 機外へ出てくるリサ達。

 基地からでもその壁は万里の頂上のようにそびえ立っていた。高さは三十メートル。暑さは五メートル。

鉄筋と合金のコンクリート仕様になっている。壁面をゴンドラが動き回り、それぞれの部署に武器や

食料を供給している。

 ジープに乗り込む四人。ジープは壁の脇にあるトンネルをくぐる。

 「第一の壁が南アフリカ軍。第ニ、第三が国連軍とハンター、ギルドが警備をしている」

 説明するリサ。

 「こんなすげえものをよく造ったな」

 感心するリック。

 「終戦後は混乱していてミュータント化した動物も出現していたからアフリカ諸国は恐れて砂漠の

壁を作った。おかげで三十年破られていない」

 リサは運転しながら言う。

 しばらく行くと第一の壁に着いた。

 鉄条網の向こうに壁がそびえ立っていた。



迷宮機関のメンバーではないかという思わぬ疑念をかけられた死刑執行人リサは氷見達のチームにくわわった。

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