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スターラはやさしいこ

作者: おっさー

ファンタジーです。

たいようがさんさんとかがやいて、きもちのいいあさのことです。

「それじゃあスターラ、おばあちゃんにこのケーキとワインをとどけてきてちょうだい。」おかあさんはそういいながら、スターラをなでてくれました。

「わかったわ。おかあさん。」

スターラはうきうきして、おもわずとびはねてしまいました。


 「いってきます。」

いつもおかあさんととおっているみちだから、まようしんぱいはありません。おかあさんにてをふりながら、スターラははやしのなかへかけていきました。

「いってらっしゃい、きをつけてね。」

おかあさんがそういったときには、もうスターラはとてもとおくまでいってしまって、みえませんでした。


スターラは、はしるのがはやいのです。


 はしるのがとてもたのしかったからでしょうか、おばあさんのいえは、すぐにみえてきました。スターラはすこししんこきゅうをしてから、とびらをこんこんとたたいておおきなこえでいいました。

「おばあちゃん、こんにちは。スターラよ。ケーキとワインをもってきたの。」

あれ?じぶんでも、おおきなこえだったとおもったのに、おばあちゃんのへんじがありません。ふしぎにおもって、スターラはドアをあけてなかへはいっていきました。


「おばあちゃん?おばあちゃん?スターラよ。」


 ところが一向に返事はない…静けさと相まって、なにかどんよりとした雰囲気がスターラを包み込んだ。湿っぽい匂い…液体のしたたる音…スターラは息を呑んで祖母のベッドへと駆け寄った。

「あっ」

スターラは目を見開いた。死んでいる!胸から血を流して死んでいる!スターラはショックで手に持っていた籠を取り落とした。祖母は苦悶に満ちた表情で横たわり、恐らくどこかに伸ばされようとした前肢は、力尽きて曲がっていた。

「おばあちゃん…苦しかったよね…痛かったよね…」

ふと、鉛の塊がベッドのわきに落ちているのを見つけ、スターラはそれを拾い上げた。まだ熱を帯びている…犯人はそう遠くにはいない!スターラは牙をむき出しにして笑うように言った。

「あたしが敵をとる…生まれてきたことを後悔させてやる!」


 スターラはまるで飛ぶように走る。後ろ肢を極端に引きつけるそのフォームから、狼仲間のうちではバネ足のスターラと呼ばれていた。もはや今のスターラに走りで敵うものなど誰もいない。それは森に慣れた狩人とて例外ではなかった。

「どこだッ…どこだ!あたしのおばあちゃんを殺したやつはぁ!」

かぎ爪が地面に食い込む、その跡がスターラの怒りであり、地面が狩人の無惨な姿である。

とがった牙は獲物の血を求めている。スターラはもう止まらない。


 「いた!敵…敵!敵ぃぃぃぃぃ!死にさらせッ!」

狩りを終えた満足げな背中に飛びかかる。服をこえて背中に食い込む音。引き抜いたかぎ爪には汚い血。突然襲いかかった恐怖におののく狩人を見て、スターラの顔は狂喜にゆがんだ。

「せめて叫び声でも上げてあたしを満足させて見せろッ」

狩人はさっきの傷でもう這い回るように動くことしかできないようだ。どうやったって抵抗できない獲物が目の前にいる。狩りをする狼の本能が喜びを感じている。スターラは口元から大量のよだれをこぼしながら大きく遠吠えした。


 まだ弱々しい生にしがみつこうとする狩人にもう一度、今度は腹に飛びかかった。この方が顔がよく見える。哀れなものだ。鉄砲のない人間など、赤子だろうと大人だろうと無力な虫けらにすぎない。だが、そんなやつがスターラの愛する祖母を殺したのだ。再び怒りがわき上がり、スターラは目の前で必死に涙を流しながら懇願する肉の塊に興味を失った。もう終わらせてやることにした。

「これが狼のキスだよ」

柔らかな首の肉が、狼のあごに耐えきれず一度、びくんと跳ねた。終わりへ向かう命の最後の輝きには気をつけろ。どんな力が隠されているか分からん。すべて祖母に習ったことだった。

(ありがとう、おばあちゃん…あたし、手加減はしないよ)

今までで一番強い力をこめると、ごきゅっという鈍い音がして、人間の動きが急速に弱まっていく。スターラはにわかに落ち着いて、口の中に広がる鉄の味が人間の血のものであることを知った。


 「はあ…おつかいにしっぱいしちゃった」

スターラはおかあさんにおこられたらいやだなあとおもって、かなしくなりました。

「でも、しかたがないよね。まあ、たぶんだいじょうぶだよ。」

じぶんにそういいきかせ、スターラはいそいでかえることにしました。ことりがきれいなこえでうたっています。


おひるちかくになって、もりはとてもあかるくなっていました。


  おわり

狼とか見たことありません。

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