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始まり

「ハルとユキってなんか双子みたいだよね」

「そうそう、好きなものとか得意なのとか一緒だよなー!」

「…そうか?」

「しっかり者の妹とうっかり者の兄って感じ?」

「いや、絶対違うでしょ…つかこんな兄ならいらんわー」

「ちょっなんだよそれ!」

学院に通っていた時つるんでいたやつとの何気ない会話


卒業の日を迎えた俺たちはそれぞれの故郷に戻る

「いつかまたこのメンバーで集まろうな!」

「故郷に着いたら連絡頂戴ねー」

「また会おうぜ!」

あるものは国のために

あるものは家族のために

またあるものは自身の鍛錬のためにここで力を磨いた

それぞれの決意を胸に俺たちは学院を出ていった


それから約5年

運命の歯車は動きだす


* * * * * * * * * * * *


カンコンカンコンカン

「ハルー後でこっちの畑に水をまいてくれねーか?」

「はいはーい隣の屋根の補修終わったらそっち行くわー」とハルは屋根の上から大声を張り上げた

「いつもすまんのー。そん代わりに野菜分けちゃるけーのー」と下から声をかけた爺さんは自分の家にゆっくり歩いていった


それを横目に見つつハルは屋根の補修作業のスピードを上げ急ぐ

「…よし」

一通りの補修は終わった

後は依頼主から金をもらって終了だ


ハルはチラッと下を見る

屋根から地面までの高さはだいたい6mくらい

普通なら地面に叩きつけられて怪我をするだろう

でもハルは違う


…このぐらいならいけるな

片手に道具箱を持ち勢いをつけて飛び降りた

空いた片方の手でパチンと指を鳴らす

途端にハルの周りで風が渦巻き落下のスピードを緩めた

そしてゆっくりと着地する


足が地面につくと風は渦巻くのをやめた

そのままハルは歩き出す

始めて見る人なら驚いたり拍手をしたりと反応はさまざまだがここの村の人はもう驚かない

だって村の人は知っている


彼が魔法使いという事を


* * * * * *


ハルの故郷は町から少し山を登ったところにある農業と放牧で生計をたてている村だ

ハルは魔法を使って何でも屋をしている

ハルの村では若い人はあまり多くなくさっきのような屋根の補修や荷物運びのような力仕事をよく任される

さっきの水やりとかも範囲は尋常じゃないくらい広い

だからハルの魔法が役に立つのだ

ただ、たまには突拍子もない事も頼まれる

例えば…

「ハル兄ー!盗賊が来たー!」

…こんなのとか


* * * * * *


「この村は今から俺たち盗賊団のものだ!金と女を出せ!」

盗賊団のお頭らしき人物が刀を振り回しながら叫んでいる

たしかあれはシャムシールという刀だったはずだ

柄の部分には宝石が埋め込まれていて売ったら高値がつきそうだ

そんな事を考えながら村の人が固まっている中をハルはすいすいと進んでいき盗賊団の前に立つ


目の前に立ったハルに盗賊団の下っ端が近づいてきた

「おい金と女って言ってるだろ!お前みたいな青二才はいらねえんだよ!」

とドスをきかしてくる


そんな下っ端には目もくれずハルはお頭らしき男を見て

「すみませんけど帰ってもらえません?」

とへにゃりと笑いながら言った


ざわつく盗賊団たち

「こんな田舎になんか価値のあるもんはないですよ。どうしてもここに残るって言うのなら力ずくでも村から出て行ってもらいますけど。怪我しても知りませんよ?」


「ふざけんなテメェ!」

頭に血が上った下っ端が殴りかかる

それをハルは片手で受け止めるとリーダーにひょいと投げた


ヒューン ドスン!


風魔法を少し使い投げた下っ端は綺麗な弧を描いてお頭に命中

一瞬呆然とした下っ端達だがお頭の

「なにしやがる!」

と言う声で我にかえり一斉に剣を抜いた


「言ったじゃないですか怪我しても知りませんよって…」

ハルはため息をつきながら言った

正直言って面倒だ

こういうモメ事はさっさと終わらせてしまうに限る


「それじゃ最終警告。さっさと尻尾まいて逃げた方がお得ですよ?」

ヘラヘラ笑いながらハルは盗賊団を見やる

その目は決して笑ってはいない


「やっちまえ!」

誰か分からない声を合図にこっちに走り出す下っ端達

────警告はしたぜ?

ハルはニヤリと笑うと手を上にあげて振り下ろした


* * * * * *



5分後

ハルの前には2つの山ができあがっていた

1つは盗賊団の山

もう1つは盗賊団の荷物──ハルが風で盗賊達から引っぺがした金やら道具やら──の山だ

「こ、このクソガキ…!」

お頭がなんとか威厳を保つためか声をだしたがなにぶん声が震えてる時点で恐ろしさはない


「まだやるんスか?」

ここまでやられているのにまだそう言えるお頭に心の中で感服しながらハルはちょっと面倒くさそうに言った

「そろそろ怪我だけじゃ済まなくなりまスよ?」

ニヤリと下っ端たちに笑いかける

もちろん目は笑ってない

もういっちょオマケに風魔法で刀をフワリと浮かせて切っ先を盗賊団にむける


「う…うわあああああ」

ついにハルの脅しに耐えられなくなった下っ端の1人が逃げだした

それにつられて他の下っ端も次々と逃げだす

「お、お前ら待て!クソッお、覚えてろよ!」

と最後に下っ端どもに置いて行かれたお頭が捨て台詞を吐きながらヨタヨタと走り去って行った



「ありがとなハル!」

「毎度毎度ありがとうな!」

「さすがじゃのー」

盗賊団が見えなくなるとハルは口々に村人に賞賛された

「いいっていいって。これも仕事だし」

と笑いながらハルが答える

「しかしワシら金持っとらんからのー。さっきの盗賊団が置いてった荷物、好きなだけ持っていってええぞ?」

村長の爺さんがハルに言った


「俺?俺は…これとこれだけでいいや」

とハルは荷物の山から少しのお金とさっき気になってたお頭が持っていたシャムシールを手にとった

「おいハル、たったそれだけでいいのかよ?」

村長の息子が素っ頓狂な声を上げる


「ああ、いいさ。俺は時々酒が飲めるくらいの金があればな」

そう言ってハルは今度こそ本当に笑った


* * * * * *


残りの盗賊団の荷物の分配を村長の息子に任せてハルは村からほど近い街に向かった

ハルの村からほど近いところにあるこの街は商業が盛んで宿所や酒場、旅人が開く露天商などいつ来ても賑やかだ

ハルは鞘に収めたシャムシールを手に持ったまま機嫌良く露天商の客引きの声が飛び交う中を歩いていた

せっかく臨時収入が入ったのだから酒場で一杯やろうと考えながら


「そこのお兄さん南国のフルーツで作ったお菓子なんてどうだい?」

(ビールに塩っ辛いつまみ…いいねぇ)

「ほらほら、冒険するんなら傷薬持たないと!今ならお安くしとくよ?」

(いや待て、今日は比較的手持ちが多いからワインでもいいな?)

「この防具さえあれば怪我なんてしないぜ?どうだい?」

(他の果実酒でもいいな!何飲もうかな〜)

「お、いい魔法道具持っていますね?見させてもらえませんかね?…ってハル?!」

「えっあっ…はい?」

完全に意識が酒場に向かっていたハルは急に声かけられて慌てて声をかけた人のほうを向く


そこには地面に盾やら剣やらを置いたハルと同じくらいの年頃のメガネをかけた若い男が座っていた

学園時代に比べて少し痩せていたし髪の毛もボサボサだったがハルもすぐに気づく

「…もしかしてレオか?」

「やっぱりハルだ!久しぶりだね!!いつ以来だっけ?」と若い男──レオは勢いよく立ち上がりハルの両手を握ってブンブンとふった

* * * * * *





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