表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/29

プロローグ

 死んだと思えばいつの間にか新たに生を受けるいう転生。死んだと思えばいつの間にか別人の身体に宿っているという憑依。そして、何らかのショックでいつの間にか別の場所に来てしまったという異世界転移。これらの転生や憑依、そして異世界転移が小説等で取り上げられる時によく舞台となるのはなんといっても異世界だろう。


 異世界と言っても色んな物がある。魔法や剣に彩られたファンタジーな世界から地球のように魔法等のファンタジー要素の無い世界もある。そして、人間族も必ずいる訳でも無く居ないとされる世界もある。こうなれば必然かもしれないが、転生・憑依そして異世界転移した先で自分が人外となっているという事もありえるのだ。


 この中ではどれが一番マシであろうか。転生であればその世界の人間として1から地位を気付く事ができるが、奴隷階級などに生まれたら一生失意の中で生きる事を余儀なくされるかもしれない。では憑依はどうであろうか。憑依先が金持ちであったり権力者であったりすれば良いかもしれないが、犯罪者や乞食もしくは奴隷であったらどうだろうか。これは転生よりもさらにリスクは高い。過去の記憶が無い者がその世界の処世術を学んでいる訳が無いのだから。そして、最後に異世界転移であるがこれは少し特殊だと言わざる得ない。


 召喚のように始めから特殊能力を約束されているが勇者として魔王との戦いをする義務がある場合、異世界に誰も関与しない形で迷い込み言語すら理解できない場合、なんらかの思惑を持って異世界に送り込まれた場合等色々なケースが考えられるのだ。ゆえに異世界転移に関しては一概に転生や憑依と比べてどちらが望ましいかとは言い切れない。ただ、ひとつだけ言える事はある。自分から転生・憑依そして異世界転移をしたいかと聞かれた場合に、したいと答える者は極々少数であり大抵の者は溢れんばかりの魔法の才能を与えられたとしても異世界に行く事は望まないであろう。


 だが、異世界に行く事が既に既定路線となってしまっている場合はどうであろうか。中には絶望をして命を絶つ者や泣き叫ぶだけで何も決められない者もいるかもしれない。ただ、この場合は既に既定路線となってしまっているという事が肝要なのだ。もう行く事がどうしようも無く死にたくないとすれば異世界で生きる為の知恵と力が必要となってくる。そのような場面に立たされたら貴方は何を思いどう行動するであろうか。少なくても俺は……いや俺は『力』を欲した。自分達を害する者達から身を守る為に。そして、見ず知らずの異世界で生き残る為に。





 俺の異世界行きのきっかけは修学旅行中のバスの事故だった。異世界行きの話を聞かされる時に教えられた理由によるとブレーキの故障による暴走でガードレールをぶち破りがけから墜落した事が原因らしい。彼の話になると地球は別の惑星と次元の壁を通して接しているらしい。そして、この壁が破られる事がないようにと結界を張っているらしいが大規模結界の性質上どうしても結界が薄くなる場所があるという。ここまで聞けば平時なら予想は着くであろうが、その時は混乱しており続きの言葉を待ってようやく意味する事に気付いた。暴走したバスがたまたま結界の薄い部分を貫き次元の壁を越え別の惑星に来たのだと。


 俺が理解するのを待って彼は言った。この場所に貴方達を置いておく事はできない。ゆえに異世界に旅立ってもらうと。これが俺が異世界へ来る事になった理由である。


 ただ、それらの事はどうでもよい事だ。天に唾を吐くのと同様に意味の無いことなのだ。重要な事はただ一つ。俺は生き延びる必要があるのだ。そう生き延びる必要があるのだ。





 夜、異世界に来てから書き始めた記録帳をぱらぱらとめくるととある文章が書かれていた。その内容はまぎれも無い事実であったが、俺は頭が痛くなるのを感じた。それは、異世界転移当初に気晴らしに自ら書いたものであったものの明らかに痛すぎる文章に仕上がっていたからだ。そっと俺は見なかった事にして記録帳を閉じた。そして、そっと明りを消すと眠りについた。いわゆる現実逃避というやつであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ