彼がストーカーになった理由
作者は、決してストーカーを容認している訳ではありません。
ですが話の都合上、不快に感じる方がいらっしゃったら申し訳ありません。
「ごめん、ごめんな…」
そう、ベッドに力なく横たわりながらも謝る男を、私は見ていた。半年前に感じていたようなときめきを、今は感じていなかった。実際、どうでもよかったのだ。
こんな男が死のうが生きようが。
私に関わらない場所で、勝手に朽ち果てればいいとまで考えていた。
しかし、人のマンションの屋上で自殺騒ぎを起こすなんて、どこまで自分勝手ではた迷惑な男なんだ。
それが、嫌がらせ目的だというのならまだわかる。
それなのにこの男ときたら「どうせもう会えないのなら、君の近くで死にたかったから」とぬかすのだ。
本当にやってられない。最早、どうしてこんな男を好きだったのか分からない。
純粋で悪意がなければ許されるのか?
別れるといった途端、四六時中こいつから謝罪とも懺悔ともつかない電話やメールが来ていても?何度番号を変えようとも、彼に同情した共通の友人から私の番号を聞き出してイタチごっこもいいところだった。
お陰で、何人かの友人と疎遠になった。
家を待ち伏せされるのは可愛いほうで。渡していないはずの合鍵を使って、部屋に侵入された時には肝が冷えた。
「何故、あんたがカギを持っている」
と問えば、さも当たり前のように、作ったからという答えが返ってきた。
その時に確信した。
こいつは立派なストーカーになり下がったのだと。
若干おそい気もしないでもないが、仮にも惚れた男がそんなものであると信じたくないではないか。
おまけに、こいつは所詮守ってあげたくなる感じで、天然だなんてもてはやされていたからよけいに信じられなかった。
どうせ私もミーハー、整った顔にやられたのか。
いや、本質は善良で悪い奴ではないのだ。だが押しに弱く、振った相手に「一回でいいから思い出を頂戴」と言われると拒絶できないまま一夜を明かすことも珍しくなかった。
きっと気づいてなかったのだろう。
女たちが、「ウルウルおめめで同情をかえば、彼は相手してくれると」陰で噂されていた事も。「彼女では満足できなくて、実は楽しんでいるのではないかと」言われていた事も。
驚くことに、彼の最悪な部分はそれだけではない。
逐一、どこの誰と何時間一緒だったと私に報告してくるのだ。
正直本当に勘弁してほしい。謝罪する事でそちらは気分が晴れるかもしれないが、聞かされるほうは堪ったものじゃない。何処の世界に、彼氏の浮気事情を事細かに聞きたいと思う女がいる。
確かに、もう二度としないというのなら話はわかる。けれど彼は「それは約束できないと」いうのだ。
抵抗はするものの、もしこれで最後だからと言われたら、可哀想で仕方がなくなる
そうだ。
こんな愚かな男、二年経ったころには我慢できず振ってやろうと思った。優しさを履き違えたこんな男、女を不幸にするだけだ。博愛主義者?笑わせるなと。
けれど、もっと愚かな私は彼を愛していたのだ。
もしかしたら、考えを改めてくれるのではないかと、そんなやり方は間違っていると何度も言い聞かせた。優しい彼が好きな私には「私にだけ優しくしてと」も、「女はそれを狙ってるのよと」もいえなかった。
―――そんな私も、ある日我慢の限界を迎えた。
普段は一回しか相手をしない彼が、数度同じ女と関係を持ったというのだ。
そもそも、彼女がいる時点でほかの女を相手しているのはおかしい。だが、もっとおかしいのはこいつの頭だった。
彼女と別れられないというのなら、身体だけの関係でもいいといった彼女を、受け入れやがったのだ。「受け入れてくれなければ、自殺してやると」言ったら、簡単にいうことを聞いたらしい。
これは、彼と別れてくれと言ってきた当事者から聞いた話のため、確かだろう。
彼と関係を持った相手と直接話をしてみて、ようやく私は愛想が尽きた。
自分の命を引き合いに出して男の気を引くやり方も大概だと思うが、何度も同じ手に騙される彼の人柄にこれ以上付き合うなど、耐えられなくなってしまった。
幸いにも彼を欲しいという人がいるのだから、ちょうどいいだろう。三年目にして「もう好きじゃなくなったから、別れようと」初めて彼に言った。
此処までよく我慢したほうだろう。むしろ、今まで耐えていたことを褒めてほしいくらいだ。
それにも関わらず、何をとち狂ったのかこいつは「もう、ほかの娘に優しくなんてしないから別れるなんて言わないでと」懇願してきたのだ。
やっと解放されると思ったのに、そんなの冗談じゃない。
今度こそ普通の顔でも、誠実で私にだけ優しい王子様を見つけるのだ。博愛主義を履き違えたエセ宗教家はいらない。
…それなのに、私の心が離れた途端に一筋になられても嬉しい訳がないだろう。
というか、こんなストーカー誰も喜ばない。ストーカー自体迷惑以外のなにものでもないのに、この男は本当にどこかが確実的に間違っている。
病院にだって、本当は来たくなかったのだ。
それなのに、一命を取り留めたこの男がうわごとのように私の名前を呼ぶから親切な管理人さんに、見舞いに行くよう言われてしまった。
これであそこには、もう住めなくなってしまった。
本当に、この男は私を不幸にしかしない。
うわ言のように「愛してる」と、つぶやく彼を立ったまま。
私は何時までも見つめ続けていた。
だいぶ色は加えていますが、ごく一部箇所だけは本当です。
聞いた話にすぎないのですが、私にとったらなかなかの衝撃でした。
ストーカーだけでなくセクハラさえも、本当に嫌悪の対象なので
不快に感じる方がいらっしゃたら申し訳ないです。
願わくば、自分勝手だという事にすら気付いてない人に対する
皮肉の様なものだと感じてくだされば幸いです。