第20章:祝福のウェディングベル
それから、数ヶ月後。
柔らかな春の日差しが降り注ぐ、うららかな日。都内にある由緒正しいホテルのガーデンチャペルで、紬と蓮の結婚式が、厳かに、そして、温かく執り行われた。
チャペルには、二人の新たな門出を祝うために、多くの人々が集まっていた。
ウェディングドレス姿の紬の隣で、親友の亜美は、式の始まる前から「綺麗だよ、紬…」と、ハンカチで何度も目頭を押さえている。経理部の同僚たちは、まるで自分の娘や妹を嫁に出すかのように、温かい拍手と笑顔を送ってくれている。
新郎側には、いつものポーカーフェイスを少しだけ緩めて、どこか誇らしげに二人を見守る、秘書の高遠の姿があった。
そして、最前列には、モーニング姿で少し照れくさそうに、しかし、満足げな表情を浮かべる紬の両親と、隣で静かに、しかし、優しい眼差しで息子夫婦を見つめる、蓮の父親である正臣会長の姿もあった。
やがて、音楽と共に、チャペルの扉が開かれる。父親にエスコートされ、バージンロードを歩く紬は、純白のウェディングドレスに身を包み、誰もが見惚れるほど、美しく輝いていた。祭壇の前で待つ、完璧なタキシード姿の蓮は、その姿を、愛おしさの全てを込めた瞳で見つめている。
神父の前で、二人は、永遠の愛を誓った。
「健やかなるときも、病めるときも、富めるときも、貧しきときも、これを愛し、敬い、慈しむことを誓いますか」
「「はい、誓います」」
二人の声が、神聖なチャペルに、はっきりと響き渡った。
指輪の交換、そして、誓いのキス。蓮が、そっとベールを上げ、紬の唇に、優しく口づけをすると、チャペルは、割れんばかりの拍手と、祝福の歓声に包まれた。
フラワーシャワーが舞う中を、笑顔で歩く二人。その後の披露宴も、終始、和やかで、笑いと涙に溢れた、素晴らしいものだった。
亜美は、友人代表スピーチで、二人の馴れ初め(もちろん、隠し子の件は、上手にごまかして)を、ユーモラスに、そして、感動的に語り、会場を大いに沸かせた。
そして、宴の最後に、蓮が、マイクを手に取り、ゲストに向かってスピーチをした。
「皆様、本日は、私と紬のために、誠にありがとうございます。ここにいる彼女は、私の人生を、根底から変えてくれた、最高の、かけがえのないパートナーです」
そして、彼は、隣に立つ紬に向き直ると、ゲスト全員に聞こえるように、はっきりと、こう言った。
「紬。世界中の誰よりも、君を幸せにすることを、ここに誓います」
さらに、彼は、紬にだけ聞こえるような、優しい声で、そっと囁いた。
「愛してるよ、紬」
偽りの契約から始まった、私たちの恋。それは、たくさんの障害と、たくさんの嘘を乗り越えて、今、満場の祝福の中で、永遠の愛となった。
「私もです、蓮さん。心から、愛しています」
紬は、最高の笑顔で、そう答えた。
二人の輝かしい未来は、この日の、雲一つない青空のように、どこまでも、どこまでも、明るく澄み渡っていた。




