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第五話「風と影」
森を抜け、丘を越え、隊はまた敵の小隊と遭遇した。
今回の敵はより組織的で、無理な正面突破は命取りだ。
だが、新隊長はもう迷わない。教本の言葉と、自らの経験を胸に、隊を動かす。
「走れ。投げろ。間合いを作れ」
ジャベリンを手に、隊員たちは影のように散り、風のように接近する。
敵の剣が振り下ろされる寸前に、半歩前に出て短槍を突き、すぐに離れる。
斧を投げ、敵を止める。
走りながら投げる。突く。拾う。
前回の初陣よりも、動きは滑らかで、判断も速い。
新隊長は敵の視線を読み、隊員たちを誘導する。
「守れ。逃げ道を作れ。間合いを見ろ」
敵は足を止め、動きを制される。
ジャベリンの一投が、短槍の一突きが、戦況を変える。
まるで風が吹き、影が揺れるように、彼らは戦場を支配していた。
戦闘後、倒れた敵の間を抜けながら、新隊長は仲間たちを見回す。
「今日も生き延びた。元隊長の教えを、俺たちなりに体現できたな」
隊員たちは小さく頷く。
もう元隊長はいない。だが、教本と経験、そして仲間があれば、自分たちは風走り隊として戦える。
風のように入り、影のように消える――
教本の言葉が、今、自分たちの動きそのものになっていた。




