第三話「初陣」
森の奥、朝霧の中で新隊長は息を整えた。
新たに集めた隊員たちは、教本の指示と新隊長の声に耳を澄ます。
戦場は静かだ。だが敵はすぐそこにいる。間合いと判断の重要性を、誰もが知っていた。
「間合いを守れ。突くな、焦るな。走れ」
新隊長の声に、隊員たちは無言で応じる。
まず、ジャベリンを手に取り走る。狙わず投げる――命中は二の次。
敵が動きを止めた瞬間、半歩踏み込み、短槍を突く。
突いた瞬間すぐに離れる。倒れた兵士から槍を拾い、次の攻撃に備える。
敵は一歩でも前に出ようとするが、新隊長は動きを読み、間合いを調整する。
「焦るな、息を上げるな。生き延びるのが最優先だ」
小隊の動きはまだぎこちない。だが、それぞれが考え判断して動くことで、戦闘は少しずつ安定していく。
ジャベリンの投擲、短槍の突き、回収の繰り返し――これが教本に書かれた通りの戦術であり、同時に新隊長たち自身の戦い方でもあった。
敵の攻撃が集中する瞬間、新隊長は盾を手にした者を守りつつ、仲間の間合いを微調整する。
「守れ。逃げ道を作れ。生き残れ」
森の中に、ジャベリンが飛び、短槍が舞い、隊員たちの呼吸と足音が重なる。
戦闘は激しく、しかし秩序があった。新隊長は思った。
これが、隊長の教えを受け継いだ、俺たち自身の風走り隊の戦いだ。
初陣の終わり、森の静けさが戻る。倒れた敵、拾われた槍、疲れた息、しかし全員無事だ。
新隊長は仲間たちを見回し、軽くうなずいた。
「今日、生き残ったのは俺たち自身だ」
小さな勝利。だが、風走り隊としての第一歩は、確かに踏み出されたのだった。




