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第一話「戦争のあと、風は残る」

戦争は終わった。街には静けさが戻り、煙と血の匂いは薄れていた。

元風走り隊の隊長は去り、隊は解散した。だが、心の中に隊長の教えを抱えた若き新兵――今では少しだけ成長した彼――は、まだ走り続けることをやめられなかった。

隊長が残した教本を開く。

「生き残ること。それが最優先。距離は武器だ」

胸の奥で隊長の声が甦る。

盾や重装に頼らず、身軽に動き、間合いを制して戦う——教本は、戦場で何を最優先すべきかを教えてくれていた。遠距離攻撃はただ敵を倒すためではなく、距離を作り、動きを奪い、判断するためにある。

初めての小隊編成の日、彼は仲間たちに短く告げた。

「槍を持て。投げて、突いて、また拾う。距離を管理するのは、俺たちの武器だ」

森の中、訓練場を兼ねた演習で、初陣が始まった。

敵役の兵士が前に出る。彼はすぐにジャベリンを手に取り、走りながら投げる。狙いは当たらない。狙う必要はない。敵の足を止め、体勢を崩す——それだけで十分だった。

一瞬の間合いを見極め、半歩前に踏み出す。短槍を突き、すぐに離れる。

倒れた兵士から槍を拾い、また投げる。仲間たちも同じ動きを繰り返す。遠距離武器と短槍の連携、動きながらの攻撃——「隊長が残した戦いの型を、今、自分たちなりに体現した」

「焦るな。呼吸を整えろ。生き延びることが最優先だ」

言葉をかける彼自身も、胸の奥で震えていた。

隊長はいない。だが、手元には教本があり、仲間たちがいる。

走りながら投げる。突く。拾う。

そしてまた走る——

生き延びるための戦いは、今始まったばかりだった。

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