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蛇眼破り第二部~おわらせるもの~  作者: 石笛 実乃里


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第九話 第四章「霧の領域へ」其の一

堅柳(けんりゅう)泰賀(たいが)はひとり馬に乗って(きり)(りょう)(いき)内を進んでいた。

本来ひとりで霧の領域の深部(しんぶ)にまで(おもむ)くのはきわめて危険なこととされた。

しかしそのときの泰雅はそんなことなど気にしていないようにも見えた。

そう言えば勇猛(ゆうもう)果敢(かかん)にも思えるが彼自身は淡々としていた。

彼はあてもなく霧の領域を彷徨(さまよ)っていた。

彼はただ知りたかった。

自分は本当に周りの人々が噂するように蛇眼が使えない役立たずなのだろうか。

自分は蛇眼が使えないばかりか、接する常人に蛇眼破りの能力を与えてしまうのは本当なのだろうか。

もし本当なら、そうすることで自分に与えられる列島世界の中での役割(やくわ)りというものはあるのだろうか。

ところで馬を休ませ、草を食べさせて水を飲ませないと。

泰雅は霧の向こうを見ようと目を()らした。

荒れ地の道を下ったところに川があるのではないだろうか。

道は盛り上がったところにあったがそこから下ったところに川が一本流れている。

やや大きめの川に思えた。

泰雅は河原に草が生え、馬を(つな)げられそうな低木(ていぼく)まである場所を見つけた。

荒れ地の多い霧の領域では珍しい場所に思えた。

泰雅は馬の向きを変え、その場所まで下りた。

馬を降りると低木に手綱(たづな)を繋ぎ、馬が歩くと川の水が飲めるようにする。

馬は頭を下げ、足元の草を食べ始めた。

泰雅はそれを確認すると、ひとり河原を歩いた。

(すわ)るのに手ごろな大きさとかたちの岩を見つけ、腰をそこに下ろす。

泰雅は霧の流れる川面をただ見つめた。

これからどこに行くとか、そういう計画もなかった。

暗くなったらさすがに危険だ。

早めに霧の領域を出ないと。

みずからの直感に従いここまで来たが、無駄足だったかもしれない。

泰雅が立ち上がろうとしたときだった。

「おまえは堅柳泰賀だな?」

霧の向こうから声がする。

川の上から声がしたように思えた。

その方向を泰雅は見て、驚いた。

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