表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛇眼破り第二部~おわらせるもの~  作者: 石笛 実乃里


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/64

第五十三話 第十三章「霧の領域ふたたび」其の四

(りゅう)(ちょう)(りゅう)三丸(さんまる)の頭を()ぜながら時折(ときおり)背中の翼をゆらめかせたが、龍鳥が翼を動かすたび泰雅は温かな風を(ほほ)に感じた。

「ここは(きり)領域(りょういき)としては不安定です」

馬の上から(みさき)()(せい)(れい)が声を上げた。

「霧の領域が移動していて、ここもいつ霧の領域でなくなるかわかったものではない。龍鳥さまも猿田彦(さるたひこ)さまも長居(ながい)して大丈夫(だいじょうぶ)なんですか?」

「まったく、自分のミズトカゲが動かないと現金(げんきん)なものだな!」

猿田彦が鼻を鳴らすようにして言った。

確かに岬野成礼も(くら)の後ろに()わえ付けた木箱(きばこ)(ふた)を開け、(りゅう)二丸(にまる)を解放していたのだが、活発な龍二丸にしては珍しく、龍鳥を怖がっているのか木箱に入れた壺の底、低く張った水の底にうずくまるようにじっとして、動こうとしなかった。

龍二丸は龍三丸と違い心の交流をしてこなかった。だから龍鳥と交信する方法もわからないのだろう。

馬の上、横から見ていた海堂(かいどう)(りゅう)()は思った。

一方龍三丸は龍鳥の(かぎ)(づめ)に頭を撫ぜられて、(たい)()の他にもうひとり(おや)を見つけたように気持ち良さげにしている。

泰雅は龍鳥が自らの鉤爪の鋭い部分を当てないようにして龍三丸を傷付けないようにしているのに気付いた。

そんな泰雅に猿田彦は話しかけた。

「さて、堅柳(けんりゅう)泰賀、おわらせるものよ」

猿田彦は言った。

「そこの海龍つかいの弟子の若者の言うことにも一理ある。ここの霧の領域は不安定だ。いつ霧の領域でなくなるかもしれない。そしてわたしも龍鳥さまも霧の領域でないと生かされない。もうおまえに言うべきことは言ったし、早くはあるが去ってもいいかな?」

「ええ」

泰雅は答えた。

「龍鳥さまの言葉を伝えて下さり、ありがとうございます」

猿田彦は()()()とにやける表情をしてうなずき、まだ龍三丸を名残惜しそうに撫ぜている龍鳥の角の横にある鋭い角度の耳に何かをささやいた。

龍鳥は甲高く鳴いた。

猿田彦はそれを聞いてから言った。

「堅柳泰賀、おわらせるものよ」

「はい」

「おまえは一旦この霧の領域を離れ、(うお)御崎(みざき)に戻らねばならぬようだ」

「はい」

「だがすぐに戻ってくると龍鳥さまは(おっしゃ)っておられる。そしてそのときには草原(くさはら)(そう)()を故郷に連れて帰るための家族と、自分の仲間も(ともな)うであろうと」

猿田彦は瑠璃(るり)を横目でちらりと見た。

瑠璃は両目をいっぱいに見開いて泰雅と猿田彦を見ていた。

とうとう龍鳥は龍三丸の頭を撫ぜるのを止め、腕を引いた。

大きくその背から伸びた金色の翼が羽ばたく。

堅柳泰賀以下四人はその翼から生み出される強く熱い風のために、手綱(たづな)を持っていない片手で自らの顔を護らなければならなかった。

龍鳥はついに空へ舞い上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ