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蛇眼破り第二部~おわらせるもの~  作者: 石笛 実乃里


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第五十一話 第十三章「霧の領域ふたたび」其の二

(たい)()はそのとき、馬の(くら)の後ろに()わえ付けた(つぼ)の中の(りゅう)三丸(さんまる)の様子が変わっているのを感じた。

何かそうしなければいけないような気がして、手を伸ばす。

自らの乗った馬の鞍の後部に結わえ付けた木の箱がガタゴト鳴っている。

泰雅は自分の前を行く瑠璃(るり)がすでに、(りゅう)一丸(いちまる)を自由にしてしまっているのを見た。

瑠璃は龍一丸を保護しているはずの木の箱の(ふた)を閉ざして固定している(ひも)さえ(はず)してしまっていた。

龍一丸が木の箱の中のそのまた中の壺の(ふち)に両前足をかけて立ち上がっているのが見える。

三匹のなかでいちばん活発なミズトカゲらしく、まだ満足に歯が生えていない口をいっぱいに開けて猿田彦(さるたひこ)威嚇(いかく)しているようだった。

(りゅう)()さんにいたずらしたのも君なの?」

泰雅は尋ねた。

「そうだな」

猿田彦は肯定した。

「おまえたちの先頭にいる者のことだな、いかにもそうだ。ただ登場するだけでは芸が無かろうと思ってな」

「彼の顔を元通りにしてください!」

彼の弟子三人が叫んだ。

「よかろう」

猿田彦は言って龍治のほうを向いて片手の指を立て、何やら口の中で(つぶや)いた。

すると龍治の顔が元通りになった。

「どうしたんだ?人の顔ばっかり見て」

元に戻った龍治が言った。

泰雅はつられるように紐の端を持って引き、龍三丸を外界から(へだ)てている木の蓋を外した。

「そろそろ龍鳥さまが来る。このかりそめの(きり)領域(りょういき)にも」

猿田彦が言った。

龍三彦は霧のたちこめる空を向いて口を開けた。

にゃあ、という子猫のような鳴き声を上げた。

はじめての鳴き声であった。

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