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蛇眼破り第二部~おわらせるもの~  作者: 石笛 実乃里


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第五話 第二章「想い出をたどって」其の一

(けん)(りゅう)(まき)()は夫を失ってからふさぎ込んでいると言われていた。

だが(たい)()の目から見た母はそれはそうなのだが、微妙に違っても見えるのだった。

実際牧芽は一時ひどく落ち込んで、もとから信心深かった彼女は出家して真叡(しんえい)(きょう)(さい)恩派(おんは)の尼僧になることすら考えた。

そして何人かの真叡教斎恩派の関係者に相談したのだが、そのなかに()(ねん)もいたというわけだった。

智念と牧芽は同年代であり、美人で知られる牧芽と端正な顔立ちの智念が並ぶと雰囲気的によく似合った。だから牧芽と智念が急接近して頻繁(ひんぱん)に会うようになると世間の人々が(うわさ)することは決まっていた。

堅柳牧芽は夫を失い、できたその心の隙間に美形の僧が入りこんだ、牧芽は喪が明けて久しく堅柳泰賀の独立と同時に智念を帰俗させて再婚するに違いない、というわけだった。

泰雅から見て母親の牧芽と智念がどういう関係なのかはわからなかった。

ただ智念が足しげくといっても良いほど堅柳邸に通っていること、牧芽もそれを切望しているらしいということはわかった。

そして二人とも泰雅の存在を宗次(そうじ)の影のように重たく感じていることも感じていた。

そんなわけで泰雅は家でも自分の居場所を感じることはなかったのだった。


だから泰雅が突然独り旅に出たいと言ったとき、母親はむしろほっとしたようだった。

泰雅は馬に乗れたので、馬で街道を行く旅を考えていた。

正直な話、独り旅など考えられる時節柄(じせつがら)とは言い難かった。

いま神奈ノ国は北方王国連合と戦争中なのである。

いつ誰が巻き込まれてもおかしくはなかった。

しかし牧芽は息子に再考を(うなが)すことすらしなかった。

もう心がそういうところにないのかもしれない。

泰雅はそう感じた。


そんなわけで堅柳泰賀はある朝、馬に最低限の荷物を積んで独り旅に出た。

遠くへ出る前、泰雅には寄りたいところがあった。

泰雅が小さい頃、亡くなった堅柳宗次に代わって育ててくれた宗次のかつての右腕、佐之(さの)()(かん)()の家であった。

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