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蛇眼破り第二部~おわらせるもの~  作者: 石笛 実乃里


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第四話 第一章「処刑実習」其の三

学問所内に堅柳(けんりゅう)泰賀(たいが)(うわさ)が広まるのに時間はかからなかった。

堅柳宗次(そうじ)の一人息子は(じゃ)(がん)が使えない。

それどころか彼が蛇眼を掛けようとした常人(じょうにん)は逆に(じゃ)(がん)(やぶ)りの能力を発現してしまった。

これは利敵(りてき)行為ではないか?

憶測(おくそく)が憶測を呼び、泰雅はそれこそ廊下を歩くたびに後ろ指を指されるようになった。

名家に属する友人も親に言われたから、という理由で離れて行った。

彼は学問所にいるのが苦しくなった。

彼は次第に休みが多くなった。

すでに基本的な読み書きは低学年で終わっており、教師たちももう来なくとも日常生活に支障はきたさないと言わんばかりの対応であった。

そして彼はある日から学問所に通うのを止めてしまった。


ある日の午前中、泰雅は堅柳邸の廊下をとぼとぼとひとり歩いていた。

彼は最近学問所に通うのを止めて自宅に引き籠りがちになっている。

では自宅が彼の安心できる場所かと言うとそうではなかった。

そしてその原因となる人物が廊下の角を曲がり、彼とばったり出くわした。

真叡(しんえい)(きょう)(さい)恩派(おんは)修道(しゅうどう)(そう)()(ねん)である。

若く端正な顔立ちは優秀な蛇眼族らしく、自信に満ちている。

(しわ)ひとつない華やかな法衣に身を包んだ智念はひとり歩く泰雅を見ると苦笑いのような笑みを顔に浮かべた。

泰雅は思わず廊下の真ん中で立ち止まった。

「やあ、泰雅くん」

智念は泰雅に声をかけた。

「今日は元気かな?最近学問所に行っていないと聞いたのだが」

「ええ、そうです」

泰雅は会いたくなかった空気を全身から発しながら手短に答えた。

「ほう。それはまた、どうして?」

智念はいかにも関心があるように装って、顔に笑みを浮かばながら尋ねた。

泰雅はこの邸宅のあたらしい主人のように歩く智念に、別に意地悪や嫌味を言いたい気分にはならなかった。

だが、なぜかここでどうしても実の父親の名前を口に出したくなった。

なにかここで父の名を出しておかないとここから堅柳宗次の気配が消えて行ってしまいそうな気がしたのだった。

「みんなが言ってるみたいなんです」

泰雅は説明した。

「あいつは堅柳宗次の息子なのに、蛇眼が使えないって。それどころかただの常人に蛇眼破りの能力を与えてしまうって」

智念の表情が一気に険しくなるのがわかった。

そのことを智念自身感づいたように、無理矢理といった風に微笑んだ表情に自分の顔を戻すと

「常人処刑の実習がきっかけだったんだね?」

と尋ねた。

泰雅がうなずくと智念は、

「まったく儀礼(ぎれい)(そう)たちは残酷な制度を思いついたものだ。たった一度きりのことだったのだろう?」

「はい」

「では君も必要以上に深刻に悩む必要はない。学問所へはまた行きたくなるときもあるだろうから、籍だけは置いておいてまた行きたくなったら行けばいい」

いかにも問題児を理解している側の大人を演じて智念は言った。

演じながらも堅柳宗次と泰雅の親子を嫌悪しているのが伝わってきた。

そして智念がそう思う原因もまたそこに現れた。

「智念さま!」

廊下の向こうから声がする。

堅柳泰雅の母親、堅柳牧(まき)()であった。

牧芽は息子の存在に気が付くとあからさまに気まずそうな表情をした。

智念はそんな様子の牧芽を見てすぐに

「ではあちらのほうでお話ししましょう。泰雅君、それではここで失礼します」

と言って大人の二人はそろって向こうへ行ってしまった。

ふたり並んで歩くのを見れば、その仲を疑うなというほうに無理があるとも思えるのだった。

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