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蛇眼破り第二部~おわらせるもの~  作者: 石笛 実乃里


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14/27

第十四話 第六章「暗殺団へ」其の一

ともに列島世界を旅してくださっているみなさま、いつも本当にありがとうございます。

あけましておめでとうございます。

2026年がみなさまにとって良い年になるよう願っております。

わたくしももっと頑張って書いていくことを目標にしたいと思います。

それではこれからもよろしくお願いします。作者・(いわ)(ぶえ) 実乃里(みのり)より。

夜になった。

満月であり、明るい夜であった。

北練(ほくね)()(じょう)馬場(ばば)(すみ)にある厩舎(きゅうしゃ)に向かって(ひそ)やかに歩みを進めるひとつの影があった。

鈴之(すずの)()琴音(ことね)であった。

長い旅にも耐えられる軽装(けいそう)をしている。

琴音は厩舎に忍び入り、自分の馬に(くら)手綱(たづな)をつけ、舞い上がるようにそこに乗ると馬を自由にした。

馬は一度だけいななくと琴音を乗せて開け放された厩舎の扉から満月の夜空に向かって飛び出した。

琴音はひたすら自分の信ずるものに向かって走っていた。



堅柳(けんりゅう)泰賀(たいが)に王府からその指令が下されたのは旅から帰って間もなくだった。

それはこういうものだった。

神奈(かな)ノ(の)(くに)と北方王国連合との(いくさ)は何年もの膠着(こうちゃく)状態(じょうたい)を経て、現在は難局(なんきょく)を迎えている。

いくつかの合戦があり、神奈ノ国には無敵と言われる(じゃ)眼族(がんぞく)の騎馬隊があったが、それが有効に機能していない。

北方王国連合の切り札“(じゃ)(がん)破り(やぶり)の声”のためだった。

このため蛇眼族の騎馬隊はせっかくの蛇眼の能力が発揮できず、通常の騎馬隊と同じようにしか機能しない。

従って先日の(ねり)野州(やす)人民共和国滅亡後初めての北方王国連合との会戦“”東野(ひがしの)平野の戦い“でも北方王国連合の老名将・セイリュウ将軍率いる常人の騎馬軍団に対し一敗地にまみれ、いわば進撃の障壁であった練野州人民共和国を排除した北方王国連合は(けい)(おん)の都に向けて大きく駒を進めることになった。

ちなみに練野州人民共和国滅亡の最大の功労者であり、泰雅(たいが)の父親である堅柳(けんりゅう)宗次(そうじ)を倒した常人であるとされる鈴之(すずの)()(そう)()は蛇眼の(しのび)団経由の情報によるとそれ以降行方不明になってしまっているとのことだった。

これは泰雅にとって最も気になる情報であった。

というのも、あらゆる人物に鈴之緒蒼馬こそ泰雅の実の父親を倒した(かたき)であり、いつか実の息子である泰雅が仇をとらなければならないと教えられてきたからであった。

その時点で鈴之緒こと草原蒼馬といえば伝説上の人物のような扱い方をされていたから子供の泰雅にはどうもぴんと来なかったというのが本当のところだった。

いずれにせよ、神奈ノ国軍は“蛇眼破りの声”に対してなにか対策を打つ必要に迫られた。

その結果立てられた今回の作戦が、突出した蛇眼破りの声の使い手である矢本(やもと)()()姫の誘拐、もしくは暗殺計画であった。

実際南下して来ている北方王国連合の武将のひとり・セイリュウはある時期まで同じく突出した蛇眼破りの声の持ち主である忍者出身の老女・イズクメを重用(ちょうよう)していたが、彼女の事実上の引退後はその座を矢口奈央姫が務めるようになって久しい。

イズクメは後進も多く育てていたから矢口奈央姫一人を始末することはほとんど無意味に思われた。

それでも矢口奈央姫の存在がきわめて重要なのは理解できたし、これが“蛇眼破りの声”の使い手に対する誘拐や暗殺の始まりになる可能性があった。

そして矢口奈央姫暗殺のために結成された蛇眼の忍び団中心の暗殺団のなかに堅柳泰賀もなぜか含まれているのであった。

そしてこの知らせは()(ねん)によってもたらされた。

それがなにを意味するか、泰雅にはわかった。

はじめ、なぜ貝那留(かいなる)王朝の総麗(そうれい)王直々(じきじき)の名指(なざ)しで自分がこの作戦に選ばれたのか、泰雅にはそれが不思議だった。

それが知念にその説明を受けて、泰雅にはなんとなくその理由がわかった。

高齢な明擁(めいよう)教主をはじめ、多くの真叡(しんえい)(きょう)(さい)恩派(おんは)の僧が神奈ノ国の王府に食い込んでいた。

彼らは何かにつけて王府の政治に口を出した。

それはときに自分たちの教派のためであったし、ときに蛇眼族全体のためであったが、ほとんどの場合自分の利益のためであった。

そして智念もそういう政治的な僧のひとりなのだった。

今回智念は泰雅が暗殺団に参加できるように王府や蛇眼の忍団にはたらきかけたようだった。

おそらく知念は泰雅にとにかく目の前からいなくなって欲しいと思っているに違いなかった。

だから暗殺団の編成の話が上がったとき、さして適性があるとも思えない泰雅を強力に推したのであろう。

命の危険がかなりあるのにも関わらず。

そして泰雅にとってなにより衝撃的なのは、母親の(まき)()が早くからそんな智念の動きに早くから気付きながらも、積極的に止めようとしなかったことだった。

母の心には智念がいて、もう父の堅柳宗次はいないのだろうか。

堅柳宗次との忘れ形見である自分の存在は正直うとましいのだろうか。

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