表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛇眼破り第二部~おわらせるもの~  作者: 石笛 実乃里


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/30

第十二話 第五章「北練井城にて」其の一

鈴之(すずの)()家が奪還された北練(ほくね)()城に帰還してから久しい。

もう十数年以上の年月が経っている。

鈴之緒雪音(ゆきね)はそんな北練井城の天守閣で開かれた会議の直前に鈴之緒蒼(そう)()行方不明の(ほう)を聞いたのだった。

現地からの家来の報がもたらされた瞬間、天守閣に微妙な空気が流れた。

いくら将軍の位を持ち、作戦の最高司令官でも敵前逃亡の責任に問われるのではないだろうか。

そんな空気を察知し、鈴之緒雪音は周りの北部諸侯の代表たちに語りかけた。

「草原蒼馬がわたしの夫となり、鈴之緒家の名前を継ぐと決めて十七年の年月が経ちました」

雪音は続けた。

「夫は当時から“(じゃ)(がん)(やぶ)りの心術(しんじゅつ)”を修得(しゅうとく)した常人(じょうにん)として、あの(けん)(りゅう)宗次(そうじ)を倒した常人として伝説的な名声を勝ち得ていました」

周りの男たちはみな深くうなずいた。

「同時に夫は堅柳宗次が亡くなる直前にかけた“憑依(ひょうい)の蛇眼”に苦しめられることになりました。頭の中に堅柳宗次の一部が住み着いてしゃべりかけるのです」

「それはそれは、地獄のようでしたよ」

鈴之緒雪音の横に座っていた老人がしみじみと言った。

賀屋(かや)禄郎(ろくろう)であった。

「それでも、」

雪音は続けた。

「夫は皆と共に前線に立ち続けました。血を流すような戦いを他の者に任せるわけにはいかない、と周りが止めても戦い続けたのです。娘が生まれても…」

雪音は思わず涙ぐんだ。

北部諸侯のひとりが口を開いた。

「鈴之緒蒼馬殿はいままで休むことなく戦ってきました。(それがし)もともに戦ったことがありますゆえ、よく存じ上げております」

周りの者も再度うなずいた。

「蒼馬殿は某とともに戦っている間、御自身の内なる苦しみに関して一言も語られようとはしませなんだ。今から思えば軽々しく語れぬほどその苦しみは深かったと思われます」

みなは静まり返った。

「今回蒼馬殿のしたことは本来ならば敵前逃亡。しかしながら彼は本来北の王なのです。彼は最高司令官であり、今までに築き上げた伝説的な名声もあります。思うにいま彼は疲れ切っているのです。彼の罪を問う前に、まず彼の居場所を探し出し、彼の安否を確認すべきです。そしてできれば彼の安全を確保すべきなのです。違いますか?」

「そうよ!」

みながうなずく前に後ろから少女の声が上がり、皆は振り返った。

雪音と賀屋禄郎は彼女に気付き、しまったという表情をする。

彼女はずっと会議の間の外で盗み聞きしていたのだった。

「琴音!」

「琴姫さま!」

雪音と賀屋禄郎が小声でしかりつけるような声を出したがもう遅かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ