第3話 スライムの王、滅ぶ
森を覆う緊張の中……。
エルフたちの前に、一人の老エルフが歩み出た。
白銀の髪に、深緑のローブ。
杖の先には淡く光る宝石。
その姿を見た瞬間、少女が叫ぶ。
「族長さま!」
森の守護者。
エルフの族長が現れた。
その気配だけで、空気が変わる。
《高位存在を感知しました》
《戦闘危険度:最大》
(うわ、やば……これ絶対ボスキャラじゃん)
族長はゆっくりと俺を見下ろした。
瞳の奥には、憐れみと、恐怖と、決意が入り混じっていた。
「……スライムのキングよ。お前の存在は“災厄”そのもの。再び現れたというなら、今ここで滅ぼす」
(え? 滅ぼす? いや、ちょっと待って? 俺、何もしてないよ!?)
族長が杖を掲げた。
空気が震え、森の光がねじれる。
《高等魔法発動》
空を覆うほどの光の槍が、無数に出現した。
それが一斉に降り注ぐ。
スライムたちが俺の前に集まり、盾のように重なり合う。
しかし、光の槍は容赦なかった。
次々にスライムが蒸発していく。
透明な体がはじけ、土に溶け、消えていく。
(やめろっ……! やめてくれ! こいつら何も悪くないっ……!)
叫びたいのに声が出ない。
ただ心で、何度も何度も叫ぶ。
けれど……。
《部下スライム:全滅しました》
(……うそ、だろ……?)
目の前の光景が、白く滲む。
仲間だったスライムたちは、もういなかった。
静寂の中、族長の声が響く。
「これで終わりだ、スライムの“王”よ」
(……俺は……王様なんかじゃない……)
その瞬間……。
《スキル《キング》が異常反応を検知》
《魂の転移を開始します》
(え……まって、また転生? やだよ、もう転生ループとか……)
思考の途中で、鋭い痛みが走る。
光の中を逃げようとした矢先、一本の矢が俺の体を貫いた。
視界が揺れる。
青い身体が崩れ、意識が闇に沈む。
(……俺は……王じゃない……ただ、楽して生きたかっただけ……)
意識が途切れた。
次に目を開けたとき、視界がゆらゆらと歪んでいた。
水の中だった。
(……え? 水中? ていうか、息できる?)
身体を動かすと、うろこがきらりと光る。
尾びれがゆらりと揺れる。
(……魚? いや……まさか、これ……)
《転生完了。新たな種族:鯉》
《称号:鯉王》を授与》
(……また“王”かよッ!!)
空気を吐くように水泡を出しながら、
俺。
元スライム王・古賀 悠は、また新たな“王”として生まれ変わった。
今度の舞台は、水の世界だった。




