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姉の言いなりの私が幸せになるまで  作者: 池中織奈


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 私は自分のこれまで生きてきた日々を、普通だと思っていた。自分が蔑ろにされているなんてことを考えることなんてなかった。



 ……寧ろ私は恵まれているとも思っていた。私がお姉様より優先されないのは当たり前だから仕方がないって。それなのにこうして立場が異なると、私への対応が全然違う。……私が実家でどのような仕事をしていたかとか、今、パーティーに参加している人は知らない。



 お姉様のことも、きっと知らない人ばかりだ。

 お姉様が居なかったら、私が後回しにされることは少なかったのかもしれないなんて思ってしまった。今の、この状況を思うと。



 考えてみると誰かが特別だからって、そんな理由で他の人を下げたりとか蔑ろにするのって少し意味が分からないかも……? だって誰かを特別に思うのならば、その人を特別大切にすればいいだけで……他の人に嫌な思いをさせるつもりってきっとない。

 そう気づいたら、何だかよく分からないもやもやした気持ちになった。



 ならどうして私は、あんな風に軽く扱われてしまう必要があったのだろうか。

 ……そんなことを思っている私は、険しい表情をしていたのだろう。近くにいた貴婦人に心配された。



「大公夫人様、どうかなさいましたか?」


 そう問いかけられて、はっとする。



「いえ、なんでもないわ。心配してくれてありがとう」



 今はパーティーを楽しむことが優先だ。だって私の周りには、私を心配していて、私を気に掛けてくれる人で今は溢れている。



 それならば私は過去のことを気にする必要なんてないはず……。ただこの事実に気づいて混乱はしているから、パーティーが終わったらグラナート様とお話をしようと思う。グラナート様はきっと、私が何を思って、何を感じているか……それを聞いても嫌がったりはしないはず。

 それにしてもこんなに楽しいパーティーは初めてだ。これまでのパーティーでは、私は……楽しいとも楽しくないともあんまり感じていなかった。ただその場にいるだけだった。でも今参加しているパーティーは、私とグラナート様が中心なのだ。

 だからか、ただ楽しい。それに少し離れたところにいるグラナート様を見かけるだけで安心する。



 私は少しダンスを踊っただけで疲れたのもあって、ゆっくりしている。壁際によっても私に視線が向けられて、話しかけてくる人が沢山いる。



 グラナート様は体力があるからか、まだ踊っているのだ。

 グラナート様って、凄いなとそう思ってならない。体力もあって、動きがキレッキレで、それでいて大公として立派で、かっこいい方。……私にはもったいない人だなと思った。でも私の、夫なのだ。私だけがグラナート様の妻。

 グラナート様から視線を逸らせない。ずっと、見ていたいなと思うのはそれだけ私にとってグラナート様という存在が大きくなっているからなのだろうか。




「大公夫人様は大公様のことが本当に愛していらっしゃるのですね。そんなに見つめていらっしゃって、若いっていいものだわ」

「……愛している?」

「あらあら?」



 愛している、なんて口にされて驚く。私の反応に話しかけてきた貴婦人は、面白そうに笑っている。



 愛。夫婦ならば、そう、愛し合っているのは当然と言えばそう。でも私とグラナート様は政略結婚だ。平民同士とか、それに本の中だと恋愛して、愛し合って恋人になって夫婦になるというのはよく聞く話。夫婦によってはそういう本人たちの感情なんて何も関係なしに、結婚というものは決まるもの。




 私は……グラナート様と一緒に居るのは好き。その瞳に見つめられるのも好き。私を肯定してくれるのも好き。いつも私の行動を許してくれて、笑ってくれる。口調は荒かったりもするけれど、優しい。それが私にとっては嬉しくて、グラナート様の妻であることが嬉しい。

 それは愛しているってことなのかなぁ。どうなんだろう? 私は誰かに恋をしたりしたことはない。だから正直よく分からない。



「愛はよく分からないですけれど、私はグラナート様のことは大切ですわ。一緒に居ると楽しいので」



 私がそう言ったら隣の女性は相変わらず楽しそうな笑みを浮かべたままだった。



 グラナート様に「俺の妻」って言われることも、「可愛い」って言われることも好き。嬉しくて、言われるたびに私は胸がいっぱいになる。

 それは愛しているからなのかは、わからない。



 ……というか思ったけれどグラナート様が私に可愛いというのはどういう感情なんだろう? 私たちは夫婦で、夜の営みも当然している。私たちは互いにそれが嫌だとは思っていなくて、一緒に居るのが楽しいと思っている。

 夫婦だったら、それだけじゃない方がいいのだろうか。愛があるならその方がいい? 分からない。




 ――ただ、グラナート様の隣に居られた方が嬉しい。それは本当。

 ――グラナート様の傍に居られたら、きっと幸せだろう。それも本当。




 ……愛しているかどうかわからないなんて言葉を、グラナート様に言ったら困惑されるのだろうか。そしてグラナート様は何というのだろう?



 不思議だな。何だかそんな考えをしていても不安が特にない。相手がグラナート様だからだろうか。グラナート様ならば、私がこんな変なことをいっても許してくれそうな気がした。


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