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今回のパーティーでは、初めて出会う人ばかり……というより知っている人は一人も居ない。
だって嫁いできた大公家は、王都からかなり離れているから。
私の実家である伯爵家の治める領地は、王都に比較的近かった。だから王都や領地周辺のパーティーばかりに参加していた。
大公領周辺に住まう貴族達との交友関係は全くない。
それに実家に居た頃は……出会う人々は、家族の知り合いばかりだった。両親やお兄様とお姉様、そんな人たちが交友を持っている人達と出会っていった。
そう考えると私が一から、誰かと交流を持とうとすることって中々ないのだ。
だから余計に、緊張もある。
グラナート様は私の目から見て、とても素晴らしい人だ。見た目もかっこよくて、それでいて堂々としていて……そんなグラナート様と仲良くしたい人は幾らでも居るだろう。
私がその隣に立つこと。
それを認めてもらえるだろうか?
そんなことをひたすら考えてしまっていた。
「ねぇ、私は皆さんに認めてもらえるかしら」
「奥様なら大丈夫です。普段通りにしていただければそれで問題ないと思いますが」
「そうだと嬉しいけれど……、でも合わない方も居るかもしれないわ」
グラナート様や周りの人達は、私のことをそのままでいいと言ってくれている。それでもこれから出会う人たちは私のことを好ましく思わない人もいる……いや、多いのではないかなとかそんなことを思ってしまう。
お姉様のように特別な方ならば問題はないだろう。誰にでも好かれるから。
けれども私は家族達にも……どちらかというと疎まれていた方なのだ。だからどうなんだろうとは思う。
私はグラナート様のおかげで、きっと大丈夫だとそんな風に思っている。
――けれども、時折、本当に? とそんな気持ちにはなる。
どうしても実際にパーティーを経験しないとこの不安はなくならないかもしれない。実際にパーティーに参加してみて、もっと状況が悪くなってしまう可能性は当然ある。
そうなったら、どうしようか。
一度、失敗してしまったらその後に頑張ればいいか。でも大公夫人として生きて行くのならば大きな失敗をしたら駄目なのではないか。
そんな風にずっと、色んなことを考えてしまっている。もっと自信をもって、堂々と出来ればいいのに。
そう思うけれど、私には自信がなかった。
「合わないならそれはそれです。なるべく人間関係を悪くしない方がいいとは思いますけれど、全員と親しくするなんて出来ませんから」
「それもそうかもしれないわ。……私、誰もに好かれる存在だと憧れるわ。素晴らしい存在なのだろうなと思うもの」
「それはそうですけれど、それって理想論ですよ。あのグラナート様だって、嫌いな人は嫌いですから」
侍女からそう言われて、私は驚いた。
あ、でもそうか。グラナート様は恐ろしい人だと噂されていたのだもの。だからこそ、お姉様だって「殺される運命」なんて言っていたのだ。
お姉様の言葉は絶対だと思っていたけれど、そのことは実際に決行されなかったなと思う。尤も、これから私がグラナート様の不興を買って、殺されてしまう可能性だってなくはないけれど。
「グラナート様は噂だけ聞けば確かに恐れられるかもしれないけれど、実際に話してみたら嫌う人なんていないはずだわ」
だってグラナート様はとても素敵な方なのだもの。
私の言葉を聞いて、侍女は呆れたような視線を私に向けた。変なことを言ってしまったかしら。
「奥様、グラナート様と実際にお話しした後に嫌う人も居なくはないですよ。グラナート様が若くして大公という立場にあることを妬んでいる者も居ます。それにグラナート様には、敵も多いです」
「まぁ、そうなのね……」
グラナート様を嫌うだなんて信じられない。
あんなに優しくて、私なんかを大切にしてくださっている方なのに。
どれだけ素晴らしい方でも、嫌われるのかと不思議に思う。なんだろう、グラナート様って私のお姉様のように周りの人達をひきつけるようなそう言う部分があると思う。性格などは全く違うけれども、似た一面がある気がした。
それにしてもグラナート様のようなことを妬んだり、敵にしようとしたり……その気持ちは私には分からないけれど、そう言う人もいるのね。
そう考えると少しだけほっとした。パーティーで私を嫌う人が居たとしても――、それは仕方がないことなのだとそう思えたから。
だってグラナート様でもそうなのだから、私が嫌われても仕方ないのだ。私のせいというよりそれ以外の要因の方が大きいのかもしれない。
私がグラナート様の妻だからという理由で嫌がる人もいるかもしれない。私自身じゃなくて、私の立場とか、私ではどうしようもないことで嫌がる人もいるんだろうな。
「グラナート様の良さを広められるようにしておきたいわ」
「奥様、あまり広めすぎるとグラナート様を狙う女性も増えるかもしれませんよ」
「……それは困るわ」
もしグラナート様に惚れる人がそれだけ増えてしまったら……私はどうするだろうか。どんなことが出来るんだろう? 私は、グラナート様が誰かに取られてしまうのは嫌だなとそんなことを思った。




