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姉の言いなりの私が幸せになるまで  作者: 池中織奈


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嫁いできた妻のこと ③~グラナートside~

「グラナート様は奥様のことを気に入ったようですね」

「当たり前だ。俺はあんなに可愛い生き物を他に知らん」



 俺の言葉を聞いて、文官には呆れたような表情をされた。俺は真実を口にしているだけなのに。



 シアンナからもらったハンカチを手にすると、胸が暖かくなる。

 これまで誰かから何かをもらうことは沢山あった。けれどもここまで嬉しい贈り物をされるのは初めてだった。妻という存在の影響で自分の生活がこんなに変わるなんて思ってもいなかった。




 ゼラニウムの花が好きだと笑うシアンナ。その花言葉は『君が居て幸福』の意味を持つらしい。

 俺と傍に居ると、そんな気持ちになるのだと小さく微笑む姿は可愛かった。



 そんなことを言われて喜ばない男はきっと居ないだろう。シアンナは男慣れをあまりしていないようで、無防備だ。他の男にも同じような優しさを見せれば勘違いする愚か者が出てくるかもしれない。

 そう思うと、パーティーなどに出したくない気持ちになる。



 騎士達の目に留まらせるのも正直言ってあんまり良い気はしない。あいつらはすっかりシアンナのことを気に入っている。

 流石に俺の妻にちょっかいをかける者は居ないと思うが、それでもモヤモヤした気持ちにはなる。



「来月には奥様を連れて、パーティーに出るのですよね?」

「ああ。流石にそろそろお披露目はしておきたい。下手に見せないとなると、変な勘繰りをするバカも出てくるだろう。それにシアンナはパーティーに出たがっているから」



 着飾ったシアンナはきっと可愛らしいだろうなと想像するだけで楽しみになる。

 それに俺の妻を自慢したい気持ちもある。



「奥様のご実家での暮らしを調べましたが、奥様はパーティーを楽しまれることはなかったようですからね。グラナート様が奥様を楽しませた方がいいです」


 そんな風に言われる。



 そう、少し調べただけでもシアンナは実家である伯爵家で不遇な扱いを受けていた。……姉と比べる発言をずっとしていたのも、姉の方を優遇し続けていたようだ。寧ろシアンナの事をまるで出来損ない扱いのようなものをしているらしく……聞いた時にはあの伯爵家潰すか? といった気持ちになった。

 流石に正当な理由がない状態では潰すのも憚れる。それにシアンナ自身は伯爵家に対して悪感情などは全くないように見えた。




 おそらく自分の状況が如何に不遇だったかシアンナは分かっていない。というか少し調べただけでもこうなのだからおそらく実際はもっと……大変な状況であったのではないかとは想像が出来る。

 シアンナは実家に居た頃は、自分の意思を通すことが出来なかったというのは一緒に生活していれば分かる。だからか本当にちょっとしたこと、当たり前のことで嬉しそうに笑っている。

 シアンナは俺の瞳を、ゼラニウムの花の色だと、綺麗だというけれどシアンナの方が花みたいだと思う。




「そうだな。シアンナが不快な思いをしないようにはしたい」 



 寧ろシアンナには大公夫人として自信をつけてもらいたい。シアンナにある程度任せつつ、成功体験というのを経験してほしいと思う。シアンナは素直な性格をしているから、一度成功出来れば自信につながる気がしている。

 そのためにもパーティーを開くとしても面倒な相手はなるべく呼ばないようにはしておきたい。



 ただし完全に身内だけで固めてしまっても、そんなパーティーを成功させたところで……それはそれで周りからの評判は上がらないだろう。俺は別にシアンナの事をまるで鳥かごの中の鳥のように、箱入りの奥様にしたいわけじゃない。



 もちろん、傷ついてはほしくないけれど……。

 それでも本人の意思で頑張ろうとしているのならば、それは背中を押したい。そもそも自由にやりたいことをやろうとした方がきっとシアンナはもっと輝くんだろうなともそう思っているから。

 俺はもっと、自分の意思で生き生きと生きて行くシアンナのことを見たいなとも思っているのだ。

 そうなればきっとシアンナはもっと可愛い姿を見せるだろう。



「奥様にはもっと自信も持ってもらいたいですね。それに権力者の妻であることの自覚をもっともってもらえたらいいですね」

「そうだな。自分が誰の妻であるか、それをもっと知ってもらえるのが一番いい。シアンナはそのあたりがまだ実感出来ていないだろうから」



 シアンナは自分が何になったかというのを、どんな立場に居るかをまだまだ実感出来ていないように思える。

 だからこそ、実感させるようなパーティーを開きたい。



 シアンナがシアンナらしく輝けるように、自信を持てるようなもの。

 今までパーティーの準備をこんなに気合入れてやったことなんてない。いつも面倒なものだった。

 だけどこんなにも楽しみだなんて、やっぱりシアンナの影響力は凄い。



 そんなことを考えながら、俺はシアンナとのパーティーが楽しみで仕方なかった。


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